1. ミニ株売却の前提知識
ミニ株(単元未満株)の売却を考えるとき、まず知っておきたい基本があります。この章では、ミニ株とは何か、売却するときの特徴、そして「買取請求」という方法との違いを解説します。さらに、いつ注文が成立して、いつお金が受け取れるのか、その基本的な流れも見ていきましょう。これらの知識は、スムーズなミニ株売却方法を理解する第一歩です。
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1.1 ミニ株(単元未満株)とは?売却時の特徴
ミニ株の売却を始める前に、ミニ株そのものについてしっかり理解しておきましょう。
ここでは、ミニ株(単元未満株)の基本的な意味と、売るときの主な特徴を分かりやすく説明します。
ミニ株(単元未満株)の正体
株式投資を始めたいけれど、まとまったお金がないから難しいかな、と感じている人もいるかもしれません。
そんなとき、心強い味方になるのが「ミニ株」です。
ミニ株とは、正式には「単元未満株(たんげんみまんかぶ)」とよばれる株式のことを指します。
日本の株式市場では、通常、株は100株や1,000株といった「単元(たんげん)」という単位でまとめて取引されるのが基本です。
例えば、ある会社の株価が1株1,000円で、単元株数が100株だとすると、その株を買うためには最低でも1,000円×100株=10万円の資金が必要になります。
これだと、初心者の方には少しハードルが高いかもしれません。
しかし、ミニ株(単元未満株)は、この単元に満たない、例えば1株からでも売買できる株式のことを言います。
つまり、先ほどの例で言えば、1株1,000円からその会社の株主になることができるのです。
これにより、お小遣い程度の少ない資金からでも、気軽に株式投資を体験できるのが大きな魅力です。
この記事では、「ミニ株」と「単元未満株」は基本的に同じものとして扱います。
ところで、似たような言葉に「株式ミニ投資」というものがあります。
これは、1単元の10分の1の単位(例えば100株単元なら10株単位)で取引する制度のことを指します。
1株から取引できる単元未満株とは少し意味合いが異なりますので、覚えておくと良いでしょう。
今回お話しするのは、1株から売買できる「単元未満株」としてのミニ株についてです。
売却時の主な特徴
ミニ株を売却するときには、通常の単元株の取引とは異なるいくつかの特徴があります。
これらの特徴を事前に知っておくことで、戸惑うことなくスムーズに取引を進めることができます。
- 少額から売却できる点購入時と同じように、保有しているミニ株がたとえ数株であっても、1株単位で売却することができます。「少しだけ利益が出たから売ってみよう」とか、「他の株に乗り換えたいから、持っている分だけ現金化しよう」といった柔軟な対応が可能です。
- 取引のタイミングに制限がある場合が多い点多くの証券会社が提供しているミニ株サービスでは、残念ながらリアルタイムで「今だ!」と思った瞬間に売買できるわけではありません。証券会社ごとに注文できる時間帯や、実際に売買が成立する(これを「約定(やくじょう)」と言います)タイミングがあらかじめ決められていることが多いです。例えば、SBI証券の「S株」というミニ株サービスでは、リアルタイムでの取引は行っていません。
- 指値注文ができない場合が多い点「この値段で売りたい」と自分で価格を指定する注文方法を「指値(さしね)注文」と言います。しかし、多くのミニ株サービスでは、この指値注文が利用できません。基本的には「いくらでもいいから今の市場価格で売る」という「成行(なりゆき)注文」のみとなる場合がほとんどです。SBI証券の「S株」も、指値注文には対応していません。ただし、例外もあります。例えば、楽天証券の「かぶミニ」というサービスでは、リアルタイム取引や指値注文が可能です。このように、証券会社によってルールが異なる点を理解しておくことが大切です。
- 議決権がない点株主になると、その会社の経営方針などに対して意見を言う権利(議決権)が与えられるのが一般的です。しかし、単元未満株を保有している株主には、株主総会での議決権は通常ありません。売却時には直接関係ありませんが、ミニ株を保有している間の権利として知っておくと良いでしょう。
- 配当金は受け取れる点議決権はありませんが、会社が利益の一部を株主に還元する「配当金」は、保有している株数に応じて受け取ることができます。たとえ1株であっても、その会社の株主であることに変わりはないのです。
これらの特徴を理解した上で、ミニ株の売却を進めていきましょう。



1.2 売却可能銘柄と「買取請求」の違い
ミニ株を売却しようと思ったとき、すべてのミニ株が証券会社の通常の取引システムで簡単に売れるわけではありません。
ここでは、証券会社を通じて売却できる銘柄と、そうでない場合の「買取請求(かいとりせいきゅう)」という手続きの違いについて解説します。
この違いを知っておくことは、いざというときに慌てないために重要です。
証券会社で売却できるミニ株
SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券といった主要なネット証券では、それぞれ独自のサービス名でミニ株取引を提供しています。
例えば、SBI証券なら「S株」、楽天証券なら「かぶミニ」、auカブコム証券なら「プチ株」、マネックス証券なら「ワン株」といった具合です。
これらのサービスを利用すれば、証券会社が指定する銘柄(取扱銘柄)であれば、比較的簡単に売却注文を出すことができます。
売却手続きは、各証券会社のウェブサイトやスマートフォン用の取引アプリを通じて、画面の指示に従って進めるのが一般的です。
手数料や約定のルールは証券会社ごとに異なりますが、基本的にはその時々の市場の株価に基づいて取引が行われます。
つまり、多くの投資家が参加している市場の価格を基準に売買できるわけです。
「買取請求」とは?
では、証券会社のミニ株サービスで取り扱っていない銘柄のミニ株や、株式分割などで単元未満の株数になってしまったけれど市場では売れない、といった場合はどうすればよいのでしょうか。
そのような場合に利用するのが「買取請求」という手続きです。
「買取請求」とは、保有している単元未満株を、その株を発行している会社自身に「買い取ってください」とお願いして換金する方法です。
例えば、楽天証券のウェブサイトには、「かぶミニ(単元未満株取引)取扱銘柄のみ売却することができます。非取扱銘柄については、『買取請求』をすることで換金できます。」という説明があります。
これは、証券会社を仲介役として、発行会社に直接買い取ってもらうイメージです。
売却可能銘柄の売却と買取請求の主な違い
証券会社のミニ株サービスで売却する場合と、買取請求を利用する場合では、いくつかの大きな違いがあります。
以下の表で比較してみましょう。
特徴 | 証券会社のミニ株サービスでの売却 | 買取請求 |
売買の相手 | 他の投資家(市場を通じた取引が基本) | 株を発行している会社 |
手続きの方法 | 証券会社の取引システム(ウェブサイトやアプリ)で比較的簡単 | 証券会社を通じて発行会社へ依頼(多くの場合、専用の書類手続きが必要) |
価格が決まる方法 | その時々の市場の株価に基づく(証券会社ごとの約定タイミングによる) | 原則として、発行会社(または株主名簿管理人という専門機関)が決定する価格(通常、買取請求の受付日の翌営業日の終値などが多い) |
価格の指定 | サービスによる(指値注文ができない場合が多いが、楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引では可能) | できません |
手数料 | 証券会社によって異なる(無料の場合や、約定代金に応じた手数料がかかる場合など) | 証券会社への取次手数料に加えて、発行会社側でも手数料が発生する場合がある |
換金までの時間 | 約定してから数営業日後(受渡日)に現金化されるのが一般的 | 通常2週間程度かかるなど、時間がかかることが多い |
対象となる銘柄 | 各証券会社がミニ株サービスで取り扱っている銘柄 | 証券会社のミニ株サービスで取り扱っていない単元未満株など |
買取請求の注意点
買取請求は便利な制度ではありますが、利用する際にはいくつかの注意点があります。
- 手数料がかかることが多い点買取請求を利用する場合、証券会社への取次手数料が必要になることが一般的です。例えば、楽天証券では1件につき330円(税込)の取次手数料がかかります。マネックス証券では1銘柄につき550円(税込)です。少額のミニ株を換金する際に、手数料が利益を上回ってしまう可能性も考慮に入れる必要があります。
- 価格や売却日を指定できない点買取価格は発行会社が決めるため、「この値段で売りたい」といった自分の希望価格で売ることはできません。また、いつ売却が成立するかも自分では決められません。
- 換金に時間がかかる点書類の手続きなどが必要なため、証券会社の通常のミニ株取引と比べて、現金化までに日数がかかります。「すぐに現金が必要」という場合には不向きな方法と言えるでしょう。
- 手続きがやや煩雑な場合がある点多くの場合、専用の書類を取り寄せて記入し、返送するといった手続きが必要になります。インターネットだけで完結する取引に慣れていると、少し手間に感じるかもしれません。
このように、買取請求は最後の手段として考えておくと良いでしょう。
できる限り、利用している証券会社のミニ株サービスで取り扱っている銘柄を選んで投資するのが、スムーズな売却への近道です。



1.3 約定タイミングと受渡日・資金拘束の基本
ミニ株を売却する際、「いつ注文が成立するの?(約定タイミング)」、「売ったお金はいつ手元に入るの?(受渡日)」、そして「その間、お金はどうなっているの?(資金拘束)」という点は、初心者の方が特に気になるポイントでしょう。
これらの基本をしっかり理解しておくことで、安心して取引を進められますし、資金計画も立てやすくなります。
約定タイミングとは?
まず、「約定(やくじょう)」とは、株式の売買注文が正式に成立することを言います。
ミニ株を売る注文を出しても、その瞬間にすぐに売買が成立するわけではない場合が多いのです。
多くの証券会社のミニ株サービスでは、リアルタイムで約定するのではなく、あらかじめ決められた特定の時間に、その日の注文をまとめて約定処理するという方式を取っています。
例えば、いくつかの証券会社の例を見てみましょう。
- SBI証券の「S株」では、注文を出した時間帯によって、約定するタイミングが異なります。午前10時30分までに出した注文は、原則としてその日の前場(ぜんば:午前の取引時間)の最初に成立した価格(始値:はじめね)で約定します。午前10時30分から午後2時までに出した注文は、その日の後場(ごば:午後の取引時間)の最後に成立した価格(終値:おわりね)で約定します。
- マネックス証券の「ワン株」では、営業日の午前11時30分までに出した注文は、原則としてその日の後場の始値で約定します。
- auカブコム証券の「プチ株」も、注文時間に応じて、その日の後場始値、または翌営業日の前場始値や後場始値で約定するというルールになっています。
これに対して、楽天証券の「かぶミニ」は例外的にリアルタイム取引が可能です。
これは、通常の株式取引のように、証券取引所が開いている時間帯であれば、その時々の市場価格に基づいて取引が成立するというものです。
また、楽天証券の「かぶミニ」では、翌営業日の前場の寄付(取引開始時の価格)で約定する「寄付取引」も選択できます。
ちなみに、日本の主な株式市場である東京証券取引所の取引時間は、通常、前場が午前9時から午前11時30分まで、後場が午後12時30分から午後3時30分までとなっています。
ミニ株の約定タイミングも、これらの市場の動きと深く関連しているのです。
受渡日(うけわたしび)とは?
次に、「受渡日(うけわたしび)」についてです。
これは、売買が成立した株式とその代金の受け渡し(つまり決済)が実際に行われる日のことを指します。
株を売却して約定した場合、その約定した日にすぐ現金が手に入るわけではない、という点をしっかり覚えておきましょう。
日本の株式市場のルールでは、受渡日は約定日から起算して3営業日目となるのが一般的です。
「営業日」とは、土曜日、日曜日、祝日や年末年始といった証券取引所がお休みの日を除いた、実際に取引が行われている日を指します。
具体例を出すと、例えば月曜日に株の売却が約定したとします(間に祝日がない場合)。
火曜日が約定日から数えて1営業日目、水曜日が2営業日目となり、そして木曜日が3営業日目、つまり受渡日となります。
この木曜日に、売却した代金がご自身の証券口座に入金されるのです。
資金拘束(しきんこうそく)とは?
最後に、「資金拘束(しきんこうそく)」という考え方です。
株を売却する注文を出し、まだ約定していない間や、約定してから実際に受渡日を迎えるまでの間、その売却しようとしている株式や、売却によって得られる予定の代金は、すぐには自由に動かせない状態になることがあります。
これを資金拘束(または株式の場合は株式の拘束)と言います。
- 売却注文中の拘束:売却注文を出している間は、当然ながらその株を別の取引に使ったり、さらに売却注文を出したりすることはできません。
- 約定後から受渡日までの拘束:株を売却して無事に約定しても、その売却代金が実際に現金として証券口座に入金され、引き出したり次の投資に使えたりするようになるのは、前述の受渡日以降です。この期間を理解しておかないと、「お金がすぐ使えると思っていたのに、まだ使えない!」ということになりかねません。
次の投資計画を立てたり、売却代金を使う予定がある場合は、この受渡日までの期間を考慮に入れることが非常に大切です。



2. ミニ株売却の流れ【初心者向けステップ】
ミニ株を実際に売却する手順は、慣れてしまえば難しくありません。この章では、株式投資が初めての方でも安心してミニ株を売れるように、準備から注文、そして売却後のお金の管理までをステップごとに解説します。一つ一つのステップを丁寧に確認しながら、ミニ株の売却方法をマスターしましょう。
2.1 売却準備:保有残高と市場状況を確認
ミニ株を売却しようと決めたら、いきなり注文画面に進むのではなく、まずはしっかりと準備を整えることが大切です。
焦って売買してしまうと、思わぬ失敗につながることもあります。
ここでは、売却前に確認しておきたい基本的な準備事項について説明します。
(1) 口座内の保有株数をチェック
何よりもまず、ご自身が売却したいと考えているミニ株を、実際にどれくらい持っているのかを正確に把握する必要があります。
- 証券口座へのログインと確認:お使いの証券会社のウェブサイトや取引アプリにログインしましょう。ログイン後、「保有証券一覧」「お預り資産」「口座残高」といったメニューを探してみてください。そこで、売却したい銘柄名、現在保有している株数を確認できます。
- 平均取得単価もチェック:保有株数と合わせて、「平均取得単価(へいきんしゅとくたんか)」も確認しておくと良いでしょう。これは、あなたがその株を1株あたり平均いくらで買ったかを示す価格です。現在の株価とこの平均取得単価を比べることで、現時点で利益が出ているのか(含み益)、それとも損失が出ているのか(含み損)を把握することができます。この損益状況の確認は、売却タイミングを判断する上で非常に重要な情報となります。
- 売却株数の決定:ミニ株は1株単位で売買できるのが大きなメリットです。例えば、A社の株を10株持っている場合、そのうちの5株だけを売却し、残りの5株は持ち続ける、といったことも可能です。全て売却するのか、一部だけ売却するのか、ご自身の投資戦略や資金計画に合わせて決めましょう。
(2) 売却タイミングを決めるポイント
保有している株の状況を確認したら、次に考えるべきは「いつ売るか」という売却のタイミングです。
これは投資の成果を大きく左右する、非常に重要な判断ポイントと言えるでしょう。
感情に流されず、いくつかの情報を基に冷静に判断することが求められます。
- 株価の動きをチェックする:売却したい銘柄の現在の株価を見るのはもちろんですが、できればここ最近の株価チャート(株価の動きをグラフにしたもの)も確認しましょう。株価が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのか、あるいは一定の価格帯で上がったり下がったりを繰り返しているのか(このような状態を「レンジ相場」や「ボックス相場」と言います)など、値動きの傾向を掴むことが大切です。
- 企業の業績や関連ニュースを確認する:株価は、その企業の業績や、企業を取り巻く様々なニュースによっても変動します。例えば、企業の決算発表(儲かっているか、損しているかなどの成績発表)の内容が良ければ株価は上がりやすいですし、逆に悪ければ下がる恐れがあります。また、新製品の発表、新しい技術の開発、業界全体の景気動向、さらには国内外の経済情勢なども株価に影響を与える要因となります。売却を考えている企業の最新情報をチェックしてみましょう。
- 株式市場全体の状況を見る:個別の企業の株価は、その企業だけの要因で動くわけではありません。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった、株式市場全体の流れを示す指標も確認しましょう。市場全体が活気づいていて上昇ムードのときは、個別の株もつられて上がりやすい傾向があります。逆に、市場全体が冷え込んでいるようなときは、いくら良い材料がある企業でも株価が上がりにくかったり、むしろ下がってしまったりすることもあります。
- 自分の投資目標と照らし合わせる:株式投資を始める際に、「これくらいの利益が出たら売ろう」とか、「いつまでには現金化したい」といった、自分なりの目標やルールを決めておくことが非常に重要です。感情に流されて、「もっと上がるかも」と欲張ったり、「下がり始めたから怖い」とパニックになったりするのではなく、あらかじめ決めたルールに従って冷静に売却タイミングを判断しましょう。例えば、「買った値段から20%株価が上がったら売る」と決めていたなら、その価格に到達した時点で売却を検討するのが良いでしょう。
- ミニ株特有の約定タイミングを考慮する:前の章でも触れましたが、ミニ株の多くは、注文を出してもすぐに約定するわけではありません。証券会社や注文した時間帯によって、翌日の取引開始時の価格で約定するといったケースもあります。「今日の市場が閉まる直前の、この高い株価で売りたい!」と思っても、ミニ株の仕組み上、それが難しい場合があるのです。そのため、利用している証券会社のミニ株の約定ルールをしっかりと理解した上で、売却のタイミングを計る必要があります。
これらのポイントを総合的に考慮して、最適な売却タイミングを見極めましょう。



2.2 注文入力:成行・指値の選択とコツ
売却の準備が整い、いつ売るかの大まかな方針が決まったら、いよいよ証券会社の取引システムを使って売り注文を入力します。
ミニ株の売却では、主に「成行(なりゆき)注文」という方法が使われますが、一部の証券会社のサービスでは「指値(さしね)注文」が可能な場合もあります。
それぞれの注文方法の特徴と、どのような場合にどちらの注文方法が適しているのか、そのコツを見ていきましょう。
(1) 成行売却が向くケース
まず、多くのミニ株取引で基本となる「成行注文」について説明します。
- 成行注文とは?成行注文とは、「いくらでも良いので、とにかく今の市場価格で売りたい(または買いたい)」という注文方法です。あなたが成行の売り注文を出すと、その時点で最も高い価格で買いたいという他の投資家の買い注文とマッチングされて、売買が成立(約定)します。価格を自分で指定しない代わりに、売買を確実に成立させたいときに向いている注文方法と言えます。
- ミニ株取引の多くは成行注文のみSBI証券の「S株」、auカブコム証券の「プチ株」、マネックス証券の「ワン株」など、主要なネット証券が提供するミニ株サービスの多くでは、売却時の注文方法は基本的に成行注文のみとなっています。これは、ミニ株の取引が、投資家が直接売買の気配(板情報)を見ながら行う通常の市場取引とは異なり、証券会社が顧客の注文をまとめて、取引所の特定の時間帯の価格(例えば、前場の始値や後場の終値など)を基準に約定処理を行う仕組みになっているためです。
- 成行売却が向くのはこんなときでは、どのような場合に成行注文での売却が適しているのでしょうか。
- とにかく早く現金化したい場合: 株価の細かい上下は気にせず、まずは確実に売ってしまって現金に換えたい、という場合に適しています。
- 株価が急落している局面で損切りしたい場合: 保有している株の価格が下がり始め、これ以上損失が拡大するのを避けたい(これを「損切り(そんぎり)」と言います)と判断したとき、現在の市場価格で速やかに手放すために成行注文が選ばれることがあります。 ただし、ミニ株の場合は約定タイミングが限られているため、注文を出した瞬間の価格ではなく、その後の約定タイミングでの価格で売れることになる点に注意が必要です。そのため、思った以上の安値で売れてしまうリスクも考慮しなければなりません。
- 取引にあまり時間をかけたくない初心者の方: 指値注文のように細かい価格の駆け引きをする必要がなく、シンプルに売却手続きを済ませたいという方にも、成行注文は分かりやすい方法です。
- 成行注文の注意点成行注文は確実に売買を成立させやすい反面、注意しておきたい点もあります。
- 予想外の価格で約定するリスク: 特に、市場全体の株価が大きく変動しているときや、普段あまり取引されていない銘柄(これを「流動性が低い銘柄」と言います)の場合、自分が想定していた価格よりも大幅に安い価格で売れてしまう可能性があります。 「このくらいの値段で売れるだろう」と思っていたのに、実際に約定した価格を見て驚く、ということもあり得るのです。
- ミニ株特有のタイムラグによる価格変動リスク: ミニ株の場合、約定する価格は、注文を出した瞬間の株価ではなく、証券会社が定めた特定の約定タイミング(例えば、当日の取引終了時の価格である終値など)の価格になります。 そのため、注文を出したときと実際に約定するときとでは、株価が変動している可能性があることを理解しておく必要があります。
(2) 指値で希望価格を狙う方法
次に、「指値注文」について見ていきましょう。
- 指値注文とは?指値注文とは、「1株〇〇円で売りたい(または買いたい)」というように、自分で価格を指定して出す注文方法です。あなたが指値の売り注文を出した場合、指定した価格か、それよりも高い価格で買ってくれる買い注文が現れたときに初めて売買が成立します。指定した価格よりも不利な価格(売り注文の場合は指定価格より安い価格)で約定することはありません。
- ミニ株で指値注文ができるのは限定的残念ながら、ほとんどの証券会社のミニ株サービスでは、この指値注文を利用することができません。しかし、楽天証券の「かぶミニ」というサービスでは、リアルタイム取引において指値注文が可能です。これは、ミニ株サービスの中では珍しい大きな特徴と言えるでしょう。
- 指値売却が向くのはこんなとき (楽天証券「かぶミニ」など指値可能な場合)もし利用しているミニ株サービスで指値注文ができるのであれば、以下のような場合に活用できるでしょう。
- 希望する価格で売りたい場合: 「この株は、最低でも1株〇〇円以上でなければ売りたくない」というように、自分の中で明確な売却目標価格がある場合に適しています。
- 株価が目標価格に達するのをじっくり待ちたい場合: すぐに現金化する必要はなく、株価が上昇して自分の希望する価格になるまで待ちたい、という戦略を取るときにも有効です。
- 指値注文の注意点 (楽天証券「かぶミニ」など指値可能な場合)指値注文は希望価格で売れる可能性がある一方で、注意点もあります。
- 約定しない可能性があること: 指定した価格まで株価が到達しなければ、いつまで経っても売買は成立しません。 その結果、売却のチャンスを逃してしまったり、株価が逆に下落してしまったりする可能性もあります。
- 楽天証券「かぶミニ」の指値のルール: 楽天証券の「かぶミニ」で指値注文をする場合、いくつかのルールがあります。 例えば、売り注文の場合、指定できる指値の範囲は「かぶミニ参考価格(市場価格を基にした楽天証券の提示価格)からマイナス1%した価格」から「東京証券取引所が定めるその日の値幅制限の上限」まで、といった決まりがあります。 また、指値からスプレッド(買値と売値の差額で、実質的なコストの一部)を考慮した価格が、東京証券取引所の値幅制限を超えてしまうような場合には、注文が成立せずに失効(キャンセル)となることもあります。 利用する際には、これらの詳細なルールを事前に確認しておくことが大切です。
- 逆指値注文について株式取引には、「株価が〇〇円以下になったら自動的に売る」といった「逆指値(ぎゃくさしね)注文」という方法もあります。これは、主に損失が拡大するのを防ぐ(損切り)ために使われる便利な注文方法です。しかし、現在のところ、どの証券会社のミニ株(単元未満株)サービスにおいても、この逆指値注文を利用することはできません。逆指値注文は、通常の単元株の取引でのみ利用可能な機能となっています。ミニ株の売却では使えないことを覚えておきましょう。



2.3 注文確定から約定までの流れ
売り注文の内容(どの銘柄を、何株、成行で売るかなど)をすべて入力し、最後に「注文確定」や「発注」といったボタンを押したら、あとは売買が成立する(約定する)のを待つだけです。
しかし、注文が確定してから実際に約定するまでには、いくつかのステップがあり、少し時間がかかります。
ここでは、その一般的な流れを説明します。
一般的な流れ
- 注文受付:あなたが証券会社のウェブサイトやアプリで売り注文を出し、最終確認画面で「確定」ボタンを押すと、まずはその注文が証券会社のシステムに「注文受付」として記録されます。この時点では、まだあなたの株が売れたわけでも、売却価格が決まったわけでもありません。多くのネット証券では、証券取引所が閉まっている夜間や土日祝日でも、この注文受付だけは24時間行ってくれるところが多いです。例えば、金曜日の夜に出した売り注文は、翌週の月曜日(営業日)の取引開始に向けて処理されることになります。
- 証券会社から取引所への注文取次 (必要な場合):ミニ株の取引方法には、いくつかのパターンがあります。一つは、証券会社が顧客からの売り注文と買い注文を社内でマッチングさせたり、証券会社自身が相手方となって取引を成立させたりする「相対取引(あいたいとりひき)」に近い形です。この場合、取引所の価格(例えば、始値や終値など)を基準にして約定価格が決定されます。もう一つは、楽天証券の「かぶミニ」のリアルタイム取引のように、東京証券取引所(東証)で実際に提示されている気配値(買いたい値段と売りたい値段)を参照しながら、限りなく市場取引に近い形で売買が行われるサービスもあります。どちらの方法を取るかは、証券会社やミニ株のサービス内容によって異なります。
- 約定処理:各証券会社があらかじめ定めている約定タイミングになると、受け付けた注文の約定処理が一斉に行われます。この約定処理によって、あなたの売り注文が正式に成立し、売却価格が確定します。主な証券会社の約定タイミングの例を再確認しましょう。
- SBI証券「S株」の例:
- 平日の0:00から10:30までの注文は、原則としてその日の前場の始値で約定します。
- 平日の10:30から14:00までの注文は、原則としてその日の後場の終値で約定します。
- 平日の14:00から24:00までの注文や、土日祝日の注文は、原則として翌営業日の前場の始値で約定します。
- マネックス証券「ワン株」の例:
- 営業日の0:00から11:30までの注文は、原則としてその日の後場の始値で約定します。
- auカブコム証券「プチ株」の例:
- 営業日の00:01から10:00までの注文は、当日の後場始値で約定します。
- 営業日の10:01から23:00までの注文は、翌営業日の前場始値で約定します。
- 営業日の23:01から24:00までの注文は、翌営業日の後場始値で約定します。
- 楽天証券「かぶミニ」の例:
- リアルタイム取引を選択した場合、東証の取引時間中(平日の9:00~11:30、12:30~15:25)であれば、注文を出すと随時約定します。
- 寄付取引を選択した場合、平日の17:00から翌朝8:45までの注文は、翌営業日の前場の寄付(始値)で約定します。
- SBI証券「S株」の例:
- 約定結果の通知:約定処理が無事に完了すると、証券会社から「あなたの売り注文が成立しましたよ」という約定結果の通知が届きます。通知方法は、メールであったり、証券口座内のメッセージであったりします。また、通常は証券口座にログインし、「取引履歴」や「注文照会」といった画面で、どの銘柄が、何株、いくらで売れたのか、手数料はいくらかかったのか、といった詳細を確認することができます。例えば、マネックス証券では、約定結果は注文が執行された日の16時10分頃以降に口座画面に反映されると案内されています。
注文の有効期間と失効
ミニ株の売り注文は、多くの場合、その注文を出した「当日限り有効」というルールになっています。
つまり、その日の決められた約定タイミングで売買が成立しなかった場合、その売り注文は自動的に失効(しっこう)、つまりキャンセル扱いとなってしまいます。
例えば、マネックス証券の「ワン株」では、後場の始値で約定するルールですが、もしその日に後場の始値がつかなかった場合(例えば、売買が全く成立しなかった場合など)や、取引量が極端に少ないといった理由で、約定せずに注文が失効することがあると説明されています。
楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引の場合、前場(午前中)に出した注文は前場のみ有効で、もし前場で約定しなければ失効します。後場(午後)に出した注文も同様に後場のみ有効です。
もし、注文が失効してしまっても、まだその株を売りたい場合は、お手数ですが再度同じように売り注文を出し直す必要があります。



2.4 受渡日までの資金管理と再投資プラン
ミニ株が無事に約定し、売却価格が確定したとしても、その瞬間に売ったお金を自由に使えるわけではありません。
「受渡日(うけわたしび)」という大切な日があって、その日になって初めて、売却代金があなたの証券口座に正式に入金され、引き出したり次の投資に使ったりできるようになります。
ここでは、約定してから受渡日までの間の資金の管理方法と、売却で得た資金を次にどう活かすかという再投資プランについて考えてみましょう。
受渡日を再確認しましょう
前の章でも触れましたが、とても大切なことなのでもう一度確認します。
日本の株式取引における受渡日は、原則として約定日から起算して3営業日目です。
「営業日」とは、土日祝日や年末年始など、証券取引所がお休みの日を除いた日です。
例えば、月曜日にミニ株の売却が約定したとしましょう(この週に祝日はないと仮定します)。
- 月曜日:約定日(売買成立!)
- 火曜日:約定日から数えて1営業日目
- 水曜日:約定日から数えて2営業日目
- 木曜日:約定日から数えて3営業日目 → この日が受渡日です。
この木曜日に、あなたの証券口座に売却代金がチャリンと入金されるイメージです。
この「約定日から3営業日目」というスケジュールを、しっかりと頭に入れておきましょう。
受渡日までの資金の状態はどうなっているの?
約定した日から、実際に受渡日を迎える前日までの間、売却代金はまだあなたの証券口座に「現金」としてはっきりと反映されていない状態です。
証券口座の残高表示を見ると、「預り金(あずかりきん)」や「買付余力(かいつけよりょく)」といった項目が、受渡日に増える予定の金額として表示されることがあります。
しかし、この期間は、その売却代金を使って銀行口座から引き出したり、そのお金を元手にしてすぐに別の株を買ったりすることは、原則としてできません。
お金が宙に浮いているようなイメージかもしれませんが、実際には証券会社と取引所の間で決済処理が進められている期間なのです。
資金管理のポイント
この受渡日までの期間を理解しておくことは、資金管理において非常に重要です。
- 急な出費に注意しましょう:もし、ミニ株を売却したお金を、近いうちに生活費や他の支払いに充てる予定があるのなら、受渡日をきちんと計算に入れておく必要があります。「明日お金が必要だから今日売ろう」と思っても、実際にお金が使えるのは3営業日後なので間に合いません。お金が必要な日から逆算して、余裕をもって売却手続きを行うように心がけましょう。
- 次の投資への影響を考えましょう:売却して得た資金で、すぐに別の有望な株を買いたい(これを「再投資(さいとうし)」と言います)と考えている場合も同様です。新しい株の買い注文を出すことができるのは、原則として、売却した代金が受渡日を迎えて、証券口座の「買付余力」(株を買うために使えるお金)に反映されてからです。ただし、証券会社によっては、顧客の利便性を考えて、約定日の夕方以降など、正式な受渡日を待たずに買付余力に反映してくれるサービス(「先日付取引」や「受渡日未到来金買付」などと呼ばれることもあります)を提供している場合があります。ご自身が利用している証券会社のルールを一度確認してみると良いでしょう。
再投資プランの立て方
ミニ株を売却して得た資金を、次にどのように活かすか、あらかじめ計画を立てておくのも良いでしょう。
ただ現金として持っておくだけでなく、さらに賢く運用する方法を考えてみましょう。
- もし利益が出ていた場合:
- その利益分を元手にして、さらに別の成長が期待できそうなミニ株を探して投資してみる。
- 少しずつ投資額を増やしていき、将来的には100株単位の単元株投資を目指してみる。
- 得られた利益の一部は、念のため貯蓄に回し、残りの資金で再投資するという堅実な方法も考えられます。
- もし損失が出ていた場合(損切りした場合):
- なぜ今回は損失が出てしまったのか、取引を冷静に振り返ってみることが大切です。銘柄選びが悪かったのか、売買のタイミング判断が甘かったのか、など原因を探ってみましょう。
- すぐに次の投資に移ろうと焦るのではなく、少し市場の様子を見たり、もう一度投資の勉強をしたりする時間を取るのも良いかもしれません。
- 損失額が自分にとって許容範囲内の小さなものであれば、それを「勉強代」と割り切って、次の投資でその経験を活かすという前向きな考え方も大切です。
- CFD取引へのステップアップも検討してみましょう:ミニ株で株式投資の基本的な流れや感覚を掴んだら、もう少し積極的な投資方法に興味を持つ方もいるかもしれません。その選択肢の一つとして、「CFD(差金決済取引)」というものがあります。CFDは、実際に株券などを保有するのではなく、売買したときの価格差だけをやり取りする取引方法です。少ない資金で大きな金額の取引ができたり(これを「レバレッジ効果」と言います)、株価が下がる局面でも売りから取引を始めることで利益を狙えたりするといった特徴があります。ミニ株よりも多様な戦略を取ることが可能ですが、レバレッジ効果は利益だけでなく損失も増幅させる可能性があるため、ミニ株以上に慎重な学習とリスク管理の理解が必要です。もし興味があれば、まずはCFDがどのようなものか、しっかりと情報収集から始めてみてください。



3. 証券会社別ミニ株売却手順と受付時間
ミニ株(単元未満株)を売却する方法やルールは、利用する証券会社によって少しずつ異なります。ここでは、主要なネット証券であるSBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券のミニ株サービスについて、それぞれの売却手順の概要、手数料、注文できる時間、そしていつ取引が成立するのか(約定ルール)を具体的に見ていきます。最後に一覧で比較もするので、自分に合った証券会社を見つける参考にしてください。
3.1 SBI証券「S株」の売却方法
SBI証券が提供するミニ株サービス「S株(エスかぶ)」で株を売却する際の具体的な手順や注意点を解説します。
S株の大きな魅力は、一定の条件を満たせば売買手数料が無料になる点です。
しかし、取引時間や注文方法にはS株ならではのルールがあるため、事前にしっかりと理解しておくことが大切です。
S株の売却手順概要
- SBI証券のウェブサイトまたはスマートフォンアプリにログインします。まずは、ご自身のIDとパスワードを使って、SBI証券の取引システムにアクセスしましょう。
- メニューから「単元未満株」または「S株」の取引画面へ進みます。株式取引のセクション内にある「単元未満株」や「S株」といった項目を選択し、専用の注文画面を開きます。個別銘柄の画面から「単元未満株注文」に切り替える方法もあります。
- 売却したい銘柄を選択します。ご自身が保有しているS株の一覧が表示されるので、その中から今回売却したい銘柄を選びます。
- 注文内容を正確に入力します。
- 売却株数: 売りたい株の数を入力します。S株は1株から、保有している株数の範囲内で指定できます。
- 注文方法: S株の売却注文は、基本的に「成行注文」のみとなります。つまり、「いくらでもいいので売りたい」という注文方法です。残念ながら、S株では「この値段で売りたい」という「指値注文」はできません。
- 預り区分: 売却する株が「特定口座」「一般口座」「NISA口座」のどれで管理されているかを選択します。
- S株の取引ルール等への同意にチェックを入れます。S株を取引する上での重要なルール(基準となる市場や取引時間、約定の仕組みなど)が記載された内容を確認し、理解した上で同意のチェックボックスにチェックを入れます。
- 注文内容を最終確認し、注文を確定します。入力した銘柄、株数、預り区分などに間違いがないか再度確認し、問題がなければ「注文確定」ボタンを押して発注完了です。
手数料
SBI証券のS株は、売買手数料が無料である点が非常に魅力的です。
SBI証券が実施している「ゼロ革命」というプログラムにより、インターネットコースを利用し、取引報告書などを電子交付で受け取る設定にしているなどの諸条件を満たせば、国内株式の現物取引、信用取引、そしてS株(単元未満株)の売買手数料が0円になります。
コストを抑えて取引したい方にとっては、大きなメリットと言えるでしょう。
注文受付時間と約定タイミング
S株の取引は、リアルタイムで行うことはできません。
注文を受け付けた時間帯によって、約定するタイミング(実際に売買が成立し、価格が決まるタイミング)が以下のように決まっています。
- 東京証券取引所(プライム・スタンダード・グロース市場)に上場している銘柄の場合:
- 平日の0:00 ~ 7:00 に出した注文: 原則として、その日の前場(午前の取引時間)の始値(はじめね)で約定します。
- 平日の7:00 ~ 10:30 に出した注文: 原則として、その日の前場(午前の取引時間)の始値で約定します。
- 平日の10:30 ~ 14:00 に出した注文: 原則として、その日の後場(午後の取引時間)の終値(おわりね)で約定します。
- 平日の14:00 ~ 24:00 に出した注文、および土日祝日に出した注文: 原則として、翌営業日の前場の始値で約定します。
- 名古屋証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所に上場している銘柄の場合は、上記の約定タイミングと一部異なる場合がありますので、詳細はSBI証券の公式サイトで確認するようにしてください。
S株取引の注意点
- 注文を出す時間帯によっては、実際の約定が翌営業日になることがあります。
- 市場の状況により、ストップ高やストップ安などで株価がつかない(売買が成立しない)場合は、S株の注文も約定しません。
- S株では、指値注文や逆指値注文(「株価が〇〇円以下になったら売る」といった注文)はできません。 成行注文のみとなります。
これらのルールを理解し、計画的にS株の売却を行いましょう。



3.2 楽天証券「かぶミニ」の売却方法
楽天証券が提供するミニ株サービス「かぶミニ®(単元未満株取引)」は、他の証券会社のミニ株サービスと比較して、リアルタイム取引や指値注文が可能というユニークな特徴を持っています。
これにより、投資家はより柔軟な取引戦略を取ることができます。
ここでは、かぶミニ®での売却方法のポイントを詳しく見ていきましょう。
かぶミニの売却手順概要
- 楽天証券のウェブサイトまたはスマートフォンアプリ「iSPEED(アイスピード)」にログインします。ご自身の楽天証券口座にアクセスしてください。
- メニューから「現物取引」画面へ進みます。株式取引のセクションを選び、「現物取引」の画面を開いてください。かぶミニ®の取引もこの画面から行います。
- 売却したい銘柄を選択し、「単元未満株」の取引であることを確認します。保有している銘柄の中から売却したいものを選び、取引画面で「単元未満株」や「かぶミニ」といった指定があることを確認しましょう。
- 注文内容を詳細に入力します。
- 取引方法の選択: かぶミニ®では、以下の2つの取引方法から選べます。
- リアルタイム取引: 東京証券取引所(東証)の取引時間中(平日の9:00~11:30、12:30~15:25)に、現在の市場価格に近い価格(ただし、スプレッドが加味されます)で取引します。
- 寄付(よりつき)取引: 東証の前場寄付(その日の取引開始時の価格)で取引します。こちらにはスプレッドはかかりません。
- 売却株数: 売りたい株の数を入力します。
- 注文方法の選択:
- リアルタイム取引の場合: 「成行注文」または「指値注文」のいずれかを選択できます。
- 寄付取引の場合: 「成行注文」のみとなります。
- 指値価格 (指値注文を選択した場合): 売りたい価格を自分で指定します。ただし、指定できる価格の範囲には制限があり、例えば「かぶミニ参考価格(楽天証券が提示する基準価格)からマイナス1%した価格」から「東証が定めるその日の値幅制限の上限」まで、といったルールがあります。
- 預り区分: 特定口座、一般口座、NISA口座など、どの口座で保有している株を売るかを選択します。
- 取引方法の選択: かぶミニ®では、以下の2つの取引方法から選べます。
- 注文内容を最終確認し、注文を確定します。入力したすべての情報に誤りがないか慎重に確認し、問題がなければ「注文確定」ボタンを押して発注します。
手数料とスプレッド
- かぶミニ®の売買手数料は無料です。
- ただし、リアルタイム取引を選択した場合には、スプレッド(売買価格の差)として0.22%が実質的なコストとしてかかります。 スプレッドとは、買いたい人が提示する最も高い価格(買気配)と、売りたい人が提示する最も安い価格(売気配)の差のことです。 かぶミニ®のリアルタイム売却では、東証の気配値から0.22%安い価格が「かぶミニ参考価格」となり、これが売却の基準となるため、このスプレッド分がコストに相当します。
- 一方、寄付取引にはスプレッドはかかりません。 手数料も無料なので、コストを抑えたい場合は寄付取引が有利です。
注文受付時間と約定タイミング
- リアルタイム取引:
- 注文および約定が可能な時間帯: 平日の9:00~11:30(前場)、12:30~15:25(後場)
- 東証でその銘柄の最初の価格(寄付値)がついた後から発注可能になります。
- 注文の有効期限は、前場中に出した注文はその前場限り、後場中に出した注文はその後場限りとなります。約定しなかった場合は失効します。
- 寄付取引:
- 注文受付時間: 平日の17:00~翌営業日の朝8:45まで
- 約定タイミング: 翌営業日の前場の寄付(取引開始時の価格)で約定します。
- 注文の有効期限は当日限りです。
その他
- 楽天証券の「かぶミニ®」は、業界で初めてリアルタイム取引と寄付取引の両方で単元未満株の取引を可能にしたサービスとして知られています(ビジネスモデル特許取得済み)。
- リアルタイム取引では、その日のうちに買って売る「日計り取引(デイトレード)」も可能です。
- かぶミニ®では、逆指値注文はできません。
楽天証券の「かぶミニ®」は、取引の自由度が高い分、選択肢も多いサービスです。ご自身の投資スタイルに合わせて、リアルタイム取引と寄付取引、成行注文と指値注文を上手に使い分けましょう。



3.3 auカブコム証券「プチ株」の売却方法
auカブコム証券(三菱UFJモルガン・スタンレー証券が提供)のミニ株サービス「プチ株®」について、その売却方法のポイントを解説します。
プチ株®は24時間注文が可能という利便性がありますが、約定するタイミングには特有のルールがありますので、しっかり確認しておきましょう。
プチ株の売却手順概要
- auカブコム証券のウェブサイトまたはスマートフォンアプリにログインします。ご自身の口座IDとパスワードでログインしてください。
- 取引メニューから「お取引」を選び、その中の「プチ株®売注文」を選択します。プチ株®専用の売却注文画面に進みます。
- 売却したい銘柄と株数を入力します。保有しているプチ株®の中から、売却したい銘柄を選び、売りたい株数を指定します。1株単位で売却可能です。
- 注文内容の確認と実行をします。
- プチ株®の売却注文は、基本的に「成行注文」のみとなります。価格を指定する「指値注文」はできません。
- 売却する株がどの預り区分(特定口座、一般口座、NISA口座など)で管理されているかを確認します。
- 入力内容に間違いがないか最終確認し、注文を実行(発注)します。
手数料
プチ株®の売却手数料は、利用している口座の種類によって異なります。
- 特定口座・一般口座で売却する場合:
- 約定代金に対して0.55%(税込)の手数料がかかります。
- ただし、計算した手数料額が52円(税込)に満たない場合は、最低手数料として52円(税込)が適用されます。
- 例外として、売却した約定代金が110円以下の場合は、手数料は無料となります。
- NISA口座(成長投資枠)で売却する場合:
- 売買手数料は無料です。NISA口座を活用すると、コストを抑えて取引できます。
- 電話(オペレーター経由)で注文する場合は、上記の手数料に加えて別途手数料がかかる点に注意が必要です。
注文受付時間と約定タイミング
プチ株®の注文は、原則として24時間いつでも可能です(システムメンテナンス時などを除く)。
ただし、実際に売買が成立する(約定する)タイミングは、注文を受け付けた時間帯によって、以下のように細かく決められています。プチ株®の取引は、証券取引所外での相対取引となります。
- 営業日の午前0時1分から午前10時00分までに出した注文:原則として、その日の後場(午後の取引時間)の始値(はじめね)で約定します。
- 営業日の午前10時1分から午後11時00分までに出した注文:原則として、翌営業日の前場(午前の取引時間)の始値で約定します。
- 営業日の午後11時1分から翌日の午前0時00分までに出した注文:原則として、翌営業日の後場(午後の取引時間)の始値で約定します。
- 休日(土曜日、日曜日、祝日など)に出した注文:原則として、翌営業日の後場(午後の取引時間)の始値で約定します。
プチ株取引の注意点
- 注文の有効期間は、原則として当日限りです。その日の約定タイミングで売買が成立しなかった場合、注文は失効(キャンセル)となります。
- 市場の状況により、ストップ高やストップ安比例配分となり、値段がつかなかった場合は約定しません。
- プチ株®の注文は、一度出すと内容の訂正ができません。もし注文内容を変更したい場合は、一度その注文をキャンセルしてから、改めて新しい注文を出し直す必要があります。
- 指値注文や逆指値注文はできません。 成行注文のみとなります。
- 1つの銘柄に対して、前場または後場のどちらか一方の約定タイミングにしか注文を出すことができません(つまり、同じ銘柄の売り注文を、同じ日の前場と後場の両方で成立させようとすることはできません)。
- 福岡証券取引所や札幌証券取引所に上場している銘柄のプチ株®は、売却のみ可能で、買付はできない場合があります。
これらのルールをよく理解した上で、auカブコム証券のプチ株®を利用しましょう。



3.4 マネックス証券「ワン株」の売却方法
マネックス証券が提供するミニ株サービス「ワン株」での売却方法について、主なポイントを解説します。
ワン株は、注文を出す時間帯によって約定タイミングが明確に決まっており、NISA口座を利用すると手数料が実質無料になるという特徴があります。
ワン株の売却手順概要
- マネックス証券のウェブサイトまたはスマートフォンアプリ「ferci(フェルシー)」にログインします。ご自身の口座情報を入力して、取引システムにアクセスしてください。
- 売却したい銘柄の個別銘柄ページを開き、「ワン株注文」を選択します。保有している銘柄一覧などから売却したい銘柄を探し、その詳細ページ内で「ワン株注文」のボタンやリンクを見つけてクリックします。
- 注文内容を正確に入力します。
- 売買区分: 「売却」が選択されていることを確認します。
- 株数: 売りたい株の数を入力します。ワン株は1株から、その銘柄の単元株数未満の範囲で指定できます。
- 注文方法: ワン株の売却注文は、基本的に「成行注文」のみとなります。価格を指定する「指値注文」はできません。
- 預り区分: 売却する株が「特定口座」「一般口座」「NISA口座」のどれで管理されているかを選択します。
- 注文内容を最終確認し、注文を確定します。入力した情報に間違いがないか、手数料などを確認した上で、注文を確定(発注)します。
手数料
ワン株の売却手数料は、利用している口座の種類によって扱いが異なります。
- 特定口座・一般口座で売却する場合:
- 約定代金に対して0.5%(税込0.55%)の手数料がかかります。
- ただし、計算した手数料額が48円(税込52円)に満たない場合は、最低手数料として48円(税込52円)が適用されます。
- NISA口座で売却する場合:
- 売買手数料は実質無料です。 これは、一度手数料が引かれますが、後日その手数料相当額が全額キャッシュバックされるという方式です。 具体的には、その月に取引で発生した売却手数料の合計額が、翌月の最終営業日までに証券総合取引口座に入金される形で還元されます。
注文受付時間と約定タイミング
ワン株の約定タイミングは、注文を出した時間帯によって以下のように決まっています。
- 当日扱いとなる注文の締切時間: 営業日の午前11時30分までです。
- 営業日の午前0時から午前11時30分までに出した注文は、原則としてその日の後場(午後の取引時間)の始値(はじめね)で約定します。
- 上記締切時間以降および非営業日に出した注文:
- 営業日の午前11時30分を過ぎてから出した注文や、土曜日、日曜日、祝日などの非営業日に出した注文は、すべて翌営業日の後場の始値で約定します。
- 約定結果の反映について:
- ワン株の注文が約定した場合、その結果(売却価格や株数など)は、注文が執行された日の16時10分頃以降に、マネックス証券の口座画面に反映されます。
ワン株取引の注意点
- ワン株の注文の有効期間は「当日中」のみです。その日の約定タイミングで売買が成立しなかった場合、注文は失効(キャンセル)となります。
- 市場の状況により、後場の始値がつかなかった場合(例えば、売買が全く成立しなかった場合など)や、大引け(その日の最後の取引)でストップ高やストップ安となり比例配分のみとなった場合は、約定しません(注文は失効します)。
- ワン株では、指値注文や逆指値注文はできません。 成行注文のみとなります。
- もしワン株を買い増していき、保有株数が単元株数(例えば100株)に達した場合、その日の夜間に自動的に単元株として振り替えられます。その後は、通常の単元株として売却が可能になります。単元株になったものを、再度ワン株として売却することはできません。
これらの点を理解して、マネックス証券のワン株を利用しましょう。



3.5 注文受付時間・約定価格ルールの比較
これまで見てきた主要なネット証券4社(SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券)が提供するミニ株(単元未満株)サービスについて、売却する際の気になるポイントを一覧表にまとめてみました。
具体的には、売却手数料、リアルタイム取引の可否、指値注文の可否、主な約定タイミング、そして当日約定を狙う場合の注文受付時間の目安などを比較しています。
ご自身の投資スタイルや、「手数料の安さを最優先したい」「取引の自由度が高い方がいい」「約定するタイミングを重視したい」といった希望に合わせて、最適な証券会社を選ぶための参考にしてください。
主要ネット証券ミニ株(単元未満株)サービス比較(売却時)
特徴 | SBI証券「S株」 | 楽天証券「かぶミニ®」 | auカブコム証券「プチ株®」 | マネックス証券「ワン株」 |
売却手数料(税込) | 無料 (ゼロ革命条件達成時) | 無料 (リアルタイム取引は別途スプレッド0.22%あり) | 約定代金の0.55% (最低手数料52円) ※NISA口座は無料 ※売却約定代金110円以下は無料 | 約定代金の0.55% (最低手数料52円) ※NISA口座は実質無料(キャッシュバック) |
リアルタイム取引 | 不可 | 可能 (スプレッド0.22%あり) | 不可 | 不可 |
指値注文 | 不可 | リアルタイム取引で可能 | 不可 | 不可 |
主な約定タイミング | 前場始値/後場終値 (注文時間による) | リアルタイム取引: 随時 寄付取引: 翌営業日前場寄付 | 後場始値/翌営業日前場始値/翌営業日後場始値 (注文時間による) | 後場始値 (注文時間による) |
主な注文受付時間 (当日約定を狙う場合の目安) | 前場始値狙い: ~当日10:30 後場終値狙い: 当日10:30~14:00 | リアルタイム取引: 平日9:00~11:30, 12:30~15:25 寄付取引(翌日約定): 平日17:00~翌営業日8:45 | 当日後場始値狙い: ~当日10:00 | 当日後場始値狙い: ~当日11:30 |
逆指値注文 | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 |
補足事項と注意点
- 上記の表は、主にミニ株を売却する際の情報を中心にまとめています。株を購入する際のルールは、売却時と異なる場合があることに注意してください。
- NISA口座で取引する場合の条件は、通常の特定口座や一般口座での取引と比べて、特に手数料の面で有利になっていることが多いです。NISA口座の活用も検討してみましょう。
- 注文の受付時間自体は、auカブコム証券やマネックス証券のように24時間対応している証券会社も多いですが、実際に約定するタイミングは上記の表に示した通り、特定の時間に限定されることがほとんどです。
- この表の情報は、各証券会社のウェブサイトなどを基に作成していますが、金融商品の仕様や手数料は変更される可能性があります。お取引の前には、必ず各証券会社の公式サイトで最新の情報を確認するようにしてください。
この比較表が、あなたのミニ株投資における証券会社選びの一助となれば幸いです。



4. 売却価格を有利にするテクニック
ミニ株を売却するとき、誰しも「できることなら少しでも有利な価格で売りたい」と思うものです。ここでは、約定するタイミングによる株価の一般的な傾向や、ミニ株特有のリスクを避けるためのコツ、そして場合によっては単元株にまとめてから売る方が良いのかどうか、といった判断方法について解説します。これらのテクニックを知っておくことで、より賢いミニ株売却方法を実践できるかもしれません。
4.1 約定タイミング別の株価傾向(前場終値/後場終値)
多くのミニ株サービスでは、売買注文が成立する(約定する)タイミングが、証券取引所の前場(ぜんば:午前の取引時間)や後場(ごば:午後の取引時間)の始値(はじめね:最初に成立した価格)や終値(おわりね:最後に成立した価格)に設定されています。
これらの特定の時間帯には、株価に一定の動きの傾向が見られることがあると言われています。
ただし、これらはあくまで過去のデータから見られる一般的な傾向であり、常にそうなるとは限りませんし、将来を保証するものでもありません。
その点を理解した上で、参考にしてみてください。
市場の開始時(寄付:よりつき)と終了時(引け:ひけ)の株価変動の特徴
株式市場の一日の取引の中で、特に株価が動きやすいとされるのが、取引が始まる「寄付(よりつき)」と、取引が終わる「引け(ひけ)」の時間帯です。
- 寄付(始値)の傾向:取引が始まる寄付の値段(始値)は、前日の取引終了後からその日の取引開始までの間に入ってきた様々な情報の影響を大きく受けます。例えば、海外の株式市場の動向(特にニューヨーク市場など)、企業が発表する重要なニュース(決算発表、新製品情報、業務提携など)、経済指標の発表などがこれにあたります。これらの情報が良いものであれば買い注文が集まりやすく、悪いものであれば売り注文が増えやすくなるため、株価が前日の終値から大きく変動して始まることがあります。特に、週末を挟んだ月曜日の寄付や、注目度の高い経済指標の発表直後などは、変動が大きくなる傾向が見られます。時には、買い注文や売り注文が一方に殺到し、思わぬ高値や安値がつくこともあります。
- 引け(終値)の傾向:取引が終わる引けの値段(終値)は、その日の取引の総仕上げとも言える価格です。この時間帯には、その日のうちに利益を確定させたい投資家の売り注文や、損失を限定したい投資家の損切り売り、また、翌日の相場展開を読んでポジションを調整するための売買が出やすいと言われています。特に、1日の取引の最後の値段である「大引け(おおびけ)」にかけては、再び売買が活発になり、株価が動くことがあります。また、年金基金や投資信託といった大口の機関投資家が、自分たちの運用方針に基づいてポートフォリオのリバランス(保有資産の配分調整)のために、まとまった量の買い注文や売り注文を出すこともあり、それが特定の銘柄や市場全体の株価に影響を与えることもあります。
前場終値と後場終値の傾向は?
- 前場終値(ぜんばおわりね):これは午前中の取引の最後の値段です。お昼休みを挟んで後場の取引が始まるため、一旦ポジションを手仕舞っておこうという動きや、後場の相場展開を予測した短期的な売買が出ることがあります。
- 後場終値(ごばおわりね) / 大引け(おおびけ):これが1日の取引の最終的な値段となります。多くのミニ株サービスで約定価格の基準とされる後場終値(大引けの価格)は、その日の市場全体のセンチメント(投資家心理や市場の雰囲気)や、個別銘柄ごとの需給バランス(買いたい人と売りたい人の力関係)が色濃く反映された価格になりやすいと言えます。
ミニ株売却でこれらの傾向をどう活かすか?
SBI証券の「S株」のように、前場の始値や後場の終値で約定するミニ株サービスを利用している場合、これらの特定の時間帯に見られる一般的な値動きのクセを知っておくことは、売却タイミングを考える上での一つの参考情報になるかもしれません。
しかし、重要な注意点があります。
ミニ株の取引は、注文を出してから実際に約定するまでにタイムラグがある場合が多く、ピンポイントで特定の価格を狙って売買するのは非常に難しいのが実情です。
また、ここで述べた株価の傾向は、あくまで「そういうことが多い」という程度のものであり、常に当てはまるわけではありません。
市場の状況や、その時々の個別銘柄に関する特別な材料(ニュースなど)によって、全く異なる値動きをすることもあります。
したがって、これらの情報は知識の一つとして持っておく程度に留め、過度に依存しないようにしましょう。
最も大切なのは、ご自身であらかじめ決めた売却のルール(例えば、「買値から〇%上がったら売る」など)に基づいて、冷静に判断することです。



4.2 流動性・スプレッドリスクを避けるコツ
ミニ株を売却する際には、「流動性(りゅうどうせい)リスク」と「スプレッドリスク」という二つの言葉を耳にすることがあるかもしれません。
これらは特に、あまり取引されていない銘柄(マイナーな銘柄)や、市場全体が不安定になっているときに注意したいポイントです。
これらのリスクを理解し、できるだけ避けるためのコツを知っておきましょう。
流動性リスクとは?
「流動性」とは、簡単に言うと、その株の「取引のしやすさ」や「換金のしやすさ」を表す言葉です。
毎日たくさんの株数が売買されていて、買いたい人と売りたい人が常に大勢いるような人気の銘柄は、「流動性が高い」と言えます。
このような流動性が高い銘柄は、あなたが「売りたい」と思ったときに比較的スムーズに買い手が見つかりやすく、希望に近い価格で売れる可能性が高いです。
逆に、あまり人気がなく、普段から取引量が少ない銘柄は、「流動性が低い」と言えます。
このような流動性が低い銘柄の場合、いざ「売りたい」と思ってもなかなか買い手が見つからなかったり、売るのに時間がかかったり、あるいは大幅に値段を下げないと売れなかったりするリスクがあります。
これが「流動性リスク」と呼ばれるものです。
ミニ株の場合、多くは証券会社が顧客の注文に応じて相対取引(証券会社が売買の相手方となる取引)の形で対応するため、通常の単元株取引ほどこの流動性リスクが直接的に問題になることは少ないかもしれません。
しかし、それでも元となる株式市場でのその銘柄の流動性が極端に低い場合は、ミニ株の約定価格にも間接的に影響が出ることが考えられます。
例えば、証券会社がミニ株の約定価格を決定する際に参考にする市場価格が、流動性の低さゆえに不安定だったり、適正な価格から乖離していたりする可能性があるからです。
スプレッドリスクとは?
「スプレッド」とは、株式を買うときの値段(買値:かいね、またはBid:ビッドといいます)と、売るときの値段(売値:うりね、またはAsk:アスクといいます)の差額のことを指します。
通常、買値よりも売値の方が少し安く設定されており、この差が証券会社にとっては収益の一部となり、投資家にとっては実質的な取引コストの一部となります。
特に、楽天証券の「かぶミニ」のリアルタイム取引のように、スプレッドが「0.22%」という形で明示的に手数料体系に組み込まれている場合は、このスプレッド分だけ、市場の中心的な価格よりも少し不利な価格で売却されることになります。
「スプレッドリスク」とは、この買値と売値の差(スプレッド)が、通常時よりも大きく開いてしまうリスクのことです。
特に、流動性が低い銘柄や、市場が急激に変動しているとき(例えば、大きな経済ニュースが発表された直後など)には、スプレッドが拡大しやすい傾向があります。
スプレッドが大きく開くと、自分が想定していたよりもずっと安い値段でしか売れない、という状況に陥る可能性があります。
これらのリスクを避けるためのコツ
では、これらの流動性リスクやスプレッドリスクをできるだけ避けるためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
- できるだけ流動性の高い銘柄を選ぶ(購入時から意識する):株式投資を始める際、銘柄を選ぶ段階から、できるだけ流動性の高い銘柄を選ぶことを心がけましょう。普段から出来高(その日に売買された株の総数)が多く、多くの投資家が注目しているような人気企業や大型株は、一般的に流動性が高い傾向にあります。ミニ株で取引する場合であっても、その元となる銘柄の市場での流動性は意識しておくと、いざ売却するときに安心です。
- 市場が不安定なときの取引は慎重に:重要な経済指標の発表前後や、国内外で大きな事件やニュースが出た直後など、市場全体が大きく揺れ動いているときは、株価が乱高下しやすく、スプレッドも通常より広がりやすい傾向があります。このようなときは、無理に売買しようとせず、少し市場が落ち着くのを待つのも一つの賢明な判断です。
- 楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引を利用する場合の注意点:楽天証券の「かぶミニ」でリアルタイム取引を行う際は、0.22%のスプレッドがかかることを常に念頭に置いた上で、売却価格を判断しましょう。もし、スプレッドを避けたいのであれば、手数料もスプレッドもかからない「寄付取引」(翌営業日の始値で約定)を選択するという方法もあります。
- 注文方法の特性を理解しておく:多くのミニ株サービスでは、売却注文は成行注文のみとなります。成行注文は、価格を指定しないため、特に流動性が低い銘柄を売る場合には、自分が予想していた価格と実際の約定価格が大きくかけ離れてしまうリスクがあることを、あらかじめ理解しておきましょう。
これらのコツを参考に、少しでもリスクを抑えたミニ株取引を目指しましょう。



4.3 単元株化して板で売るべきか判断する方法
ミニ株を少しずつ買い続けていくと、いずれ100株や1,000株といった、その銘柄の「単元株数」に達することがあります。
単元株になれば、ミニ株の取引とは異なり、通常の株式取引と同じように、証券取引所の「板(いた)」と呼ばれる売買気配情報を見ながら、リアルタイムで指値注文などで売却できるようになります。
では、ミニ株のまま売るのと、手間や資金をかけて単元株にしてから売るのとでは、どちらが良いのでしょうか。
その判断方法について考えてみましょう。
単元株化とは?
まず、「単元株化(たんげんかぶか)」とは、文字通り、保有している単元未満株(ミニ株)を買い増すなどして、1単元(多くの場合は100株)のまとまりにすることです。
例えば、ある会社の株のミニ株を60株持っていて、その会社の株の1単元が100株だとします。
この場合、あと40株を買い増して合計100株にすれば、それは1単元の株として扱われるようになります。
多くの証券会社では、ミニ株の保有数が単元株数に達すると、自動的に単元株の口座に振り替えられる仕組みになっています。
例えば、マネックス証券の「ワン株」では、単元株に達した日の夜間に単元株に振り替えられると説明されています。
単元株として売るメリット
ミニ株を単元株にしてから売ることには、いくつかのメリットが考えられます。
- リアルタイムで指値注文や成行注文が可能になる:最大のメリットは、取引の自由度が格段に上がることです。単元株になれば、証券取引所が開いている時間中(例えば、東京証券取引所なら平日の午前9時~11時30分と午後12時30分~3時30分)、リアルタイムで変動する株価の動きを見ながら、自分の好きなタイミングで「成行注文」や「指値注文」を出すことができます。「この値段で売りたい」という希望価格で売れるチャンスが広がり、より戦略的な売買が可能になります。
- より有利な価格で売れる可能性がある:取引所の「板情報」(買いたい人の注文価格と数量、売りたい人の注文価格と数量が一覧で表示されているもの)を直接見ながら、自分で売買のタイミングや価格を判断できるため、ミニ株のようにあらかじめ決められた約定タイミング(例えば前場の始値や後場の終値など)で画一的に売買されるよりも、瞬間的に有利な価格で売れる可能性があります。
- 逆指値注文など多様な注文方法が使えるようになる:単元株の取引では、ミニ株では利用できない多様な注文方法が使えます。例えば、「株価が〇〇円以下になったら自動的に売る」という「逆指値注文」は、損失の拡大を一定範囲に抑えるための有効な手段ですが、これは単元株取引ならではの機能です。
単元株として売るデメリット・注意点
一方で、単元株にしてから売ることには、デメリットや注意しておきたい点もあります。
- 単元株にするための追加の買い増し資金が必要になる:当然ですが、単元株にするためには、不足している分の株を買い増すための資金が新たに必要になります。その資金を準備できるかどうかが最初の関門です。
- 取引手数料の体系が異なる場合がある:ミニ株を売買するときの取引手数料と、単元株を売買するときの取引手数料の体系が、証券会社によって異なる場合があります。SBI証券のように、一定の条件を満たせば単元株もミニ株も手数料が無料になる場合もありますが、利用している手数料コースによっては、単元株の取引の方が手数料が高くなることもあり得ます。事前に確認が必要です。
- 売買判断の難易度が上がる可能性がある:リアルタイムで価格が目まぐるしく変動し、板情報やチャートなど、多くの情報を読み解きながら瞬時の判断を求められるため、株式投資の初心者にとっては、ミニ株の取引よりも売買判断が難しく感じるかもしれません。
ミニ株のまま売るか、単元株化して売るか、どちらが良いか判断するポイント
最終的にどちらの方法が良いかは、ご自身の状況や投資スタイルによって異なります。以下の点を考慮して判断しましょう。
- 保有している株数と、単元株数までの残り株数:あと数株で単元に達するという状況であれば、買い増しを検討する価値は高まります。逆に、まだ単元まで程遠い場合は、無理に単元化を目指す必要はないかもしれません。
- 追加投資できる資金的な余裕があるか:単元化のための買い増し資金が、生活に影響を与えない範囲で準備できるか考えましょう。
- その銘柄の市場での流動性(取引の活発さ):せっかく単元株にしても、元々あまり取引されていない流動性の低い銘柄だと、結局は希望する価格やタイミングで売りにくい場合があります。
- ご自身の投資スキルと取引に割ける時間:リアルタイムで市場の動きを追い、板情報などを見て適切な売買判断ができるか、また、そのための時間を確保できるか、といった点も重要です。
- 手数料の比較:ミニ株のまま売却する場合の手数料と、単元株に買い増してから売却する場合のトータルの手数料(買い増し時の手数料+売却時の手数料)を比較してみましょう。例えば、楽天証券の「かぶミニ」は売買手数料が無料(リアルタイム取引の場合は別途スプレッドあり)ですが、単元株の取引手数料は選択している手数料コースによって異なります。
- すぐに現金化したいかどうか:単元株にするために不足分を買い増し、その後で売却するとなると、ミニ株のまま売るよりも手続きや時間がかかる可能性があります。急いで現金化したい場合は、ミニ株のまま売る方が早いかもしれません。
結論として
大まかな目安としては、以下のようになるでしょう。
- 保有している株数が少なく、少額をすぐに、あまり手間をかけずに現金化したい場合 → ミニ株のまま売却するのが手軽で良いでしょう。
- ある程度まとまった株数を保有しており(単元に近いなど)、少しでも有利な価格を狙いたい、あるいはリアルタイムで自分の判断で取引したい場合 → 単元株化を検討する価値があります。
ただし、単元株化には追加の資金が必要になったり、手数料の条件が変わったり、売買判断が難しくなったりといった側面も伴います。
ご自身の資金状況、投資経験、その銘柄に対する考え方などを総合的に考慮して、慎重に判断するようにしてください。



5. 売却後の税金と事務手続き
ミニ株を売却して利益が出た場合、気になるのが税金のことです。どのような口座で取引していたかによって、税金の扱い方や確定申告の必要性が変わってきます。この章では、特定口座、一般口座、NISA口座それぞれの税金の違いや、損失が出た場合の損益通算、繰越控除といった節税に役立つ制度、そして住民税の申告で注意しておきたいポイントについて、分かりやすく解説します。正しい知識を身につけて、売却後の手続きもスムーズに進めましょう。
5.1 特定口座・一般口座・NISAの税金比較
ミニ株を売却して利益(譲渡益)が出た場合、その利益に対して税金がかかります。
しかし、どの種類の証券口座で取引していたかによって、税金の計算方法や納税の手続きが大きく異なります。
ここでは、主な3つの口座タイプ、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」、そして非課税制度である「NISA口座」について、税金の扱いの違いを比較しながら見ていきましょう。
株式売却益にかかる税金の種類と税率
まず基本として、ミニ株を含む株式を売却して得た利益(譲渡所得)には、所得税と住民税がかかります。
現在の税率は以下の通りです(2024年時点)。
- 所得税(復興特別所得税を含む):15.315%
- 住民税:5%
- 合計:20.315%
この税率が、売却益に対して課されることになります。
口座タイプ別の税金の扱い
それでは、口座の種類ごとに税金の扱いや手続きがどう違うのかを見ていきましょう。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特徴: 証券会社が、あなたの代わりに年間の売買損益を計算し、利益が出ていればそこから税金を自動的に差し引いて(源泉徴収して)国に納めてくれます。
- メリット: 原則として確定申告が不要です。 税金の計算や納税の手間が省けるため、株式投資の初心者の方や、忙しくて確定申告に時間を割けない方にとっては非常に便利な口座です。 多くの人がこの「特定口座(源泉徴収あり)」を利用しています。
- デメリット・注意点: 他の口座での損失と相殺したい場合(損益通算)や、損失を翌年以降に繰り越したい場合(繰越控除)は、確定申告が必要になります。 また、配当金を受け取る際に、NISA口座以外では源泉徴収されます 1。
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 特徴: 証券会社が年間の売買損益を計算して「年間取引報告書」を作成してくれるところまでは「源泉徴収あり」と同じです。 しかし、税金の源泉徴収は行われません。
- メリット: 証券会社が作成した年間取引報告書を使って、比較的簡単に自分で確定申告を行うことができます。 複数の証券会社で取引している場合や、他の所得との兼ね合いで自分で税額を調整したい場合に選ばれることがあります。
- デメリット・注意点: 利益が出た場合は、自分で確定申告をして納税する必要があります。 確定申告を忘れると、追徴課税や延滞税が発生する恐れがあるので注意が必要です。
- 一般口座
- 特徴: 証券会社は、取引の記録は提供してくれますが、年間の損益計算は行いません。 自分で1年間のすべての取引について、取得価額や売却価額、手数料などを計算し、損益を算出して確定申告をする必要があります。
- メリット: 特にありません。手間がかかるため、現在では積極的に選ぶ理由は少ないでしょう。
- デメリット・注意点: 損益計算から確定申告まですべて自分で行う必要があります。 計算ミスや申告漏れのリスクが高く、手間も時間もかかります。 特別な理由がない限り、初心者の方は避けた方が無難な口座と言えます。
- NISA口座(新NISAの成長投資枠など)
- 特徴: NISA(少額投資非課税制度)は、毎年一定の金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益(譲渡益や配当金など)が非課税になる制度です。 ミニ株もNISA口座の対象となる場合があります(例えば、新NISAの「成長投資枠」では年間240万円までの投資から得た利益が非課税になります 2)。
- メリット: NISA口座内で得た売却益や配当金には税金がかかりません。 これは非常に大きなメリットで、効率的に資産を増やすことが期待できます。 確定申告も原則不要です。
- デメリット・注意点: NISA口座での取引で損失が出た場合、その損失は他の口座(特定口座や一般口座)の利益と損益通算することができません。 また、損失を翌年以降に繰り越すこともできません。 非課税投資枠には年間の上限があります 2。 NISA口座は基本的に長期保有を前提とした利用が推奨されます 2。
どの口座を選ぶべき?
- 初心者の方や手間を省きたい方: 「特定口座(源泉徴収あり)」が最もおすすめです。税金のことをあまり気にせずに取引に集中できます。
- NISAの非課税枠を活用したい方: 「NISA口座」を積極的に利用しましょう。ただし、損益通算や繰越控除ができない点には注意が必要です。
- 自分で確定申告をしたい、またはする必要がある方: 「特定口座(源泉徴収なし)」が、年間取引報告書が発行されるため比較的スムーズに申告できます。
- 一般口座は、特別な理由がない限り、選択するメリットは少ないでしょう。
ご自身の投資スタイルや確定申告への考え方などを考慮して、最適な口座を選びましょう。



5.2 損益通算・繰越控除のポイント
ミニ株の取引で、残念ながら損失が出てしまうこともあります。
しかし、そのような場合でも、税金の負担を軽くできる制度があることをご存知でしょうか。
それが「損益通算(そんえきつうさん)」と「繰越控除(くりこしこうじょ)」です。
これらの制度を上手に活用することで、年間のトータルの税負担を減らしたり、将来の利益にかかる税金を抑えたりすることが可能です。
ここでは、それぞれの制度のポイントを分かりやすく解説します。
損益通算とは?
「損益通算」とは、同じ年の中で、ある株式取引で出た利益と、別の株式取引で出た損失を相殺(そうさい)することを言います。
例えば、A社のミニ株を売却して10万円の利益が出たとします。
しかし、同じ年にB社のミニ株を売却して3万円の損失が出てしまったとしましょう。
この場合、損益通算を行うことで、その年の株式取引の利益は10万円 – 3万円 = 7万円として計算されます。
つまり、税金がかかる対象となる利益が7万円に減るわけです。
もし、年間のトータルの損益がマイナスになった場合(つまり損失の方が大きかった場合)、その年の株式取引に関する税金はかかりません。
損益通算のポイント
- 対象となる所得:上場株式等の譲渡所得(ミニ株の売却益など)の損失は、同じ年の他の上場株式等の譲渡所得や、上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択した場合)などと損益通算することができます。ただし、給与所得や事業所得といった他の種類の所得とは、原則として損益通算できません。
- 手続き:損益通算を行うためには、確定申告が必要です。「特定口座(源泉徴収あり)」を利用していて、その口座内だけで損益が完結している場合は自動的に損益通算が行われるため確定申告は不要ですが、複数の証券会社で取引している場合や、一般口座での取引がある場合、あるいは「特定口座(源泉徴収なし)」を利用している場合は、自分で確定申告をして損益通算の手続きを行う必要があります。
繰越控除とは?
「繰越控除」とは、その年の損益通算を行ってもなお引ききれなかった損失(純損失)を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、翌年以降の株式取引の利益や配当所得(申告分離課税を選択したもの)から差し引くことができる制度です 3。
例えば、2023年に株式取引で50万円の損失が出て、損益通算してもまだ20万円の損失が残ったとします。
この20万円の損失を、2024年、2025年、2026年の3年間に繰り越すことができます。
もし、2024年に株式取引で30万円の利益が出たとすると、繰り越してきた20万円の損失と相殺して、2024年の課税対象となる利益を30万円 – 20万円 = 10万円に減らすことができるのです。
繰越控除のポイント
- 繰越期間:損失を繰り越せる期間は、最大で3年間です。
- 手続き:繰越控除の適用を受けるためには、損失が出た年だけでなく、その後も損失を繰り越している期間中は、毎年連続して確定申告を行う必要があります 3。たとえその年に株式取引が全くなかったとしても、繰越控除を継続するためには確定申告を続けなければなりません。これを忘れると、繰越控除の権利が途切れてしまうので注意が必要です。
- NISA口座の扱いに注意:前述の通り、NISA口座での取引で生じた損失は、損益通算の対象にもなりませんし、繰越控除の対象にもなりません。この点は非常に重要なポイントなので、しっかりと覚えておきましょう。
確定申告の準備
損益通算や繰越控除のために確定申告を行う際には、証券会社から送られてくる「特定口座年間取引報告書」(特定口座の場合)や、自分で作成した「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」(一般口座の場合など)といった書類が必要になります。
国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に従って入力していくだけで、比較的簡単に申告書を作成することができます 3。
これらの制度を正しく理解し活用することで、賢く税金と付き合っていくことができます。
もし分からないことがあれば、税務署や税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。



5.3 住民税申告で注意すべきこと
ミニ株を売却して利益が出た場合、所得税だけでなく住民税も課税の対象となります。
多くの場合、所得税の確定申告を行えば、その情報が自動的に市区町村に連携されるため、別途住民税の申告手続きをする必要はありません。
しかし、いくつかのケースでは注意が必要な点や、知っておくと有利になるかもしれないポイントがあります。
所得税の確定申告と住民税の関係
通常、株式の譲渡益(売却益)などについて所得税の確定申告書を税務署に提出すると、その申告内容があなたの住んでいる市区町村の役所(役場)にも共有されます。
そして、その情報を基にして住民税額が計算され、後日、納税通知書が送られてくるという流れになります。
つまり、所得税の確定申告をすれば、原則として住民税の申告も済んだことになるのです 5。
住民税の申告で特に注意したいケース
以下のような場合は、住民税の扱いや申告について少し注意が必要です。
- 所得税では確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合(過去の制度)以前は、例えば「特定口座(源泉徴収あり)」で取引していて、所得税については確定申告をしなくても良い場合でも、住民税の計算上、他の所得と合算した結果、住民税の申告が必要になるケースがありました。また、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できる制度がありましたが、税制改正により、令和6年度(令和5年分)の住民税からは、所得税と住民税の課税方式を一致させることになりました 6。これにより、所得税で申告した内容は、原則としてそのまま住民税にも反映されることになります。
- 「特定口座(源泉徴収あり)」で申告不要を選択した場合の住民税の扱い「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合、株式の売却益にかかる所得税と住民税は、証券会社によって源泉徴収(天引き)され、納税まで代行してくれます。そのため、原則として確定申告は不要です。この場合、住民税についても特に手続きをする必要はありません。
- 住民税の申告によって各種行政サービスに影響が出る可能性もし、所得税の確定申告で株式の譲渡益などを申告した場合、その所得金額は住民税の計算上の「合計所得金額」や「総所得金額等」にも算入されます。この合計所得金額などが増えることによって、以下のような影響が出る可能性があります 6。
- 扶養控除や配偶者控除などの所得控除が受けられなくなる、または控除額が減る。
- 国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料などの算定に影響し、保険料が上がる。
- 児童手当などの各種行政サービスの所得制限に影響する。
- 住民税の非課税判定に影響する。
住民税の申告が必要になる場合の手続き
もし、何らかの理由で住民税の申告が別途必要になった場合は、お住まいの市区町村の役所(役場)の税務課(住民税担当課など)に問い合わせて、必要な書類や手続き方法を確認しましょう。
多くの場合、「市民税・県民税申告書」といった書類に必要事項を記入し、関連書類(例えば、特定口座年間取引報告書のコピーなど)を添付して提出することになります 7。
まとめ
ミニ株の売却益に関する住民税については、基本的には所得税の確定申告をすれば特別な手続きは不要です。
しかし、税制は変更されることもありますし、個々の状況によって対応が異なる場合もあり得ます。
不安な点や疑問点がある場合は、税務署や市区町村の税務担当窓口、あるいは税理士などの専門家に相談することをおすすめします。



6. よくある疑問・トラブルシューティング
ミニ株の売却を進めていると、「あれ?どうすればいいんだろう?」と疑問に思うことや、思わぬトラブルに直面することもあるかもしれません。この章では、ミニ株売却時によくある疑問や困った状況について、具体的な対処法や考え方をQ&A形式で解説します。指値注文がなかなか約定しないとき、間違って注文してしまったとき、あるいは証券会社で取り扱っていない銘柄をどうしても換金したいときなど、いざという時に慌てないためのヒントが満載です。
6.1 指値が刺さらない場合の対処法
ミニ株の売却で「指値注文」ができるのは、現在のところ主に楽天証券の「かぶミニ®」のリアルタイム取引など、一部のサービスに限られています 8。
もし、これらのサービスで指値の売り注文を出したものの、なかなか約定しない(希望した価格で売れない、これを「指値が刺さらない」と言います)という状況になった場合、どうすれば良いのでしょうか。
いくつかの対処法と考え方を見ていきましょう。
なぜ指値注文が約定しないのか?
まず、指値の売り注文が約定しない主な理由を理解しておきましょう。
- 指定した価格が高すぎる:あなたが「この値段で売りたい」と指定した価格が、現在の市場で「その値段で買いたい」と思っている投資家が提示している最高の買い気配(買いたい値段)よりも高い場合、当然ながら売買は成立しません。株価があなたの指定した価格まで上昇してこない限り、注文はずっと未約定のまま残ってしまいます。
- 市場の取引量が少ない(流動性が低い):その銘柄の取引自体があまり活発でない(出来高が少ない)場合、たとえあなたの指定した価格が妥当な範囲内であったとしても、買い注文そのものが出てこないために約定しないことがあります。
- 市場全体の地合いが悪い:株式市場全体が下落傾向にあるなど、投資家心理が冷え込んでいる状況(これを「地合いが悪い」と言います)では、買い控えが起こりやすく、指値の売り注文は通りにくくなる傾向があります。
- 注文の有効期限が切れてしまった:楽天証券「かぶミニ®」のリアルタイム取引の場合、前場(午前中)に出した注文はその前場限り、後場(午後)に出した注文はその後場限りで有効期限が切れてしまいます 8。有効期限内に約定しなければ、注文は自動的に失効(キャンセル)となります。
指値が刺さらない場合の対処法
- 指値価格を見直す(価格を少し下げる):最も直接的な対処法は、売りたい価格(指値)を少し引き下げてみることです。現在の市場の買い気配値や、直近の株価の動きなどを参考にして、もう少し現実的な価格に修正して再注文してみましょう。楽天証券「かぶミニ®」のリアルタイム取引では、注文の訂正(価格訂正のみ可能)もできます 9。
- 成行注文に切り替える:「どうしても今日中に売りたい」「価格には多少目をつぶっても確実に売却したい」という場合は、指値注文を取り消して、「成行注文」で出し直すという方法があります。成行注文は、その時点の市場価格で売買を成立させることを優先する注文方法なので、約定しやすくなります。ただし、楽天証券「かぶミニ®」のリアルタイム取引では、指値から成行への注文訂正はできません。一度指値注文を取り消してから、新たに成行注文を出す必要があります 9。
- 市場の状況や時間帯を変えてみる:もし時間に余裕があるなら、少し市場の様子を見て、株価が上昇基調に転じたり、取引が活発になったりするタイミングを待ってから再度注文を試みるのも一つの手です。ただし、株価が自分の思う通りに動くとは限りませんので、待ちすぎも禁物です。
- 注文の有効期限を確認し、必要なら再注文する:楽天証券「かぶミニ®」のリアルタイム取引のように注文に有効期限がある場合は、失効していないか確認しましょう。もし失効していたら、再度同じ条件で注文を出し直すか、上記の対処法を試みてください。
- 諦めて別の機会を待つ(長期的な視点を持つ):必ずしも無理に売却する必要がないのであれば、一旦注文を取り消し、株価が自分の希望する水準に戻ってくるまで長期的な視点で待つという選択肢もあります。その間に企業の業績が向上したり、良いニュースが出たりすれば、株価が上昇する可能性もあります。
注意点
- 市場が急激に変動しているとき(例えば、重要な経済指標の発表直後や、特定の銘柄に大きなニュースが出たときなど)は、指値注文が約定しにくくなったり、意図しない価格で約定したりするリスクが高まります。このような状況での取引は特に慎重に行いましょう 10。
- 楽天証券「かぶミニ®」のリアルタイム取引の成行注文は、一度出すと取り消しができません 9。注文を出す前によく確認することが大切です。
指値注文は希望価格で売れる可能性がある一方で、必ず約定するとは限らないという特性を理解し、状況に応じて柔軟に対応することが重要です。



6.2 注文取消し期限を過ぎたミス注文への対応
ミニ株の売り注文を出した後に、「あっ、株数を間違えた!」「売るつもりのない銘柄を注文してしまった!」といったミスに気づくことがあるかもしれません。
注文がまだ約定していなければ、多くの場合は証券会社の取引システムから注文の取消しが可能です。
しかし、注文の取消しができる期限を過ぎてしまったり、すでに約定してしまったりした場合はどうすれば良いのでしょうか。
注文取消しの基本ルール
まず、ミニ株の注文取消しに関する一般的なルールを確認しておきましょう。
- 約定前であれば取消可能な場合が多い:多くの証券会社のミニ株サービスでは、注文がまだ約定していない状態であれば、取引システムを通じて注文の取消しが可能です。例えば、楽天証券「かぶミニ®」の寄付取引では、注文受付時間内(17:00~翌8:45)であれば取消しができます 9。auカブコム証券の「プチ株®」も、受注時間内であれば取消しが可能です 11。
- 約定後の取消は原則不可:一度約定してしまった注文は、原則として取り消すことはできません。株式取引は、買いたい人と売りたい人の間で合意が成立して初めて約定となるため、一方的な都合で取り消すことは市場の信頼性を損なうことにつながるからです。
- リアルタイム取引の成行注文は取消不可の場合も:楽天証券「かぶミニ®」のリアルタイム取引における「成行注文」は、注文を出すとすぐに約定処理が進むため、一度発注すると取り消すことができません 9。注文を出す前の最終確認が非常に重要になります。
注文取消し期限を過ぎてしまった、または約定してしまった場合の対応
もし、注文の取消し期限を過ぎてしまったり、すでに約定してしまったりした後にミスに気づいた場合、残念ながらその注文自体を「なかったこと」にするのは非常に困難です。
しかし、状況によっては以下のような対応が考えられます。
- すぐに証券会社に相談する:まずは、利用している証券会社のカスタマーサポートなどに速やかに連絡し、状況を正確に伝えて指示を仰ぎましょう。ただし、前述の通り、約定後の注文取消しは原則として認められないため、過度な期待は禁物です。ごく稀なケースとして、証券取引所がシステムエラーなどによる誤発注と判断し、特例的に約定の取消しを認めるような事態も過去にはありましたが、これは個人の単純な操作ミスには通常適用されません 12。
- 反対売買を行う(買い戻す、または売り直す):もし、間違って売ってしまった株をやはり保有し続けたいのであれば、改めてその株を買い戻す(反対売買する)という方法があります。逆に、間違って買ってしまった株であれば、それを改めて売り直すことになります。ただし、この場合、以下の点に注意が必要です。
- 価格変動リスク: 買い戻したり売り直したりする際の株価は、最初に間違って取引したときの価格と同じとは限りません。株価が不利な方向に動いていれば、損失が発生する可能性があります。
- 手数料: 再度の売買には、証券会社所定の取引手数料が別途かかる場合があります(ミニ株の手数料が無料の証券会社でも、単元株の取引には手数料がかかる場合があります)。
- 状況を受け入れ、次の投資に活かす:損失が軽微であったり、反対売買によるさらなるリスクやコストを避けたい場合は、今回のミスは勉強代と割り切り、その経験を次の投資に活かすという考え方もあります。なぜミスが起きたのか(注文時の確認不足、操作の不慣れなど)を分析し、再発防止策を考えることが重要です。
ミスを防ぐための心構え
このようなミス注文を防ぐためには、以下の点を日頃から心がけましょう。
- 注文内容は必ず複数回確認する: 銘柄名、株数、売買の別(売りか買いか)、注文方法(成行か指値かなど)を、注文確定ボタンを押す前に必ず指差し確認するくらいの慎重さが必要です。
- 取引システムの操作に慣れておく: 特に初めて使う取引システムや、久しぶりに操作する場合は、少額の取引で試してみるなどして、操作方法に十分に慣れてから本格的な取引を行うようにしましょう。
- 落ち着いて取引する: 市場が急変動しているときや、時間に追われているときなどは、焦ってミスを犯しやすくなります。常に冷静に、余裕をもって取引に臨むことが大切です。
万が一ミスをしてしまっても、パニックにならず、まずは証券会社に相談し、状況に応じた最善の対応を検討しましょう。



6.3 間違えて単元株を売却した場合のリカバリー
ミニ株(単元未満株)のつもりで売却注文を出したのに、操作ミスなどで間違って保有している単元株(例えば100株単位のまとまった株)を売却してしまった、というケースも考えられます。
ミニ株と単元株では、取引のルールやシステムが異なるため、このような間違いが起こると少し慌ててしまうかもしれません。
もし、間違えて単元株を売却してしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
単元株の取引の特徴再確認
まず、単元株の取引は、ミニ株の取引と比べて以下のような特徴があることを思い出しましょう。
- リアルタイムでの取引が基本: 証券取引所が開いている時間帯であれば、その時々の市場価格でリアルタイムに売買が成立します。
- 指値注文や成行注文など多様な注文方法が選択可能: ミニ株では制限のある指値注文も、単元株なら自由に行えます。
- 約定後の取消は原則不可: ミニ株と同様に、一度約定した単元株の取引も、原則として取り消すことはできません。
間違えて単元株を売却してしまった場合の対応
対応策としては、基本的に「6.2 注文取消し期限を過ぎたミス注文への対応」で述べた内容と共通する部分が多いです。
- すぐに証券会社に連絡する:まずは、利用している証券会社のサポートデスクなどに連絡し、状況を説明して指示を仰ぎましょう。ただし、繰り返しになりますが、約定してしまった取引の取消しは極めて困難であることを理解しておく必要があります。
- 買い戻しを検討する:もし、売却してしまった単元株をやはり手元に置いておきたいと考えるのであれば、市場で再度その株を買い戻すという選択肢があります。この場合、以下の点に注意が必要です。
- 価格変動リスク: 買い戻す際の株価は、売却したときの株価よりも高くなっている可能性もあれば、安くなっている可能性もあります。もし高く買い戻すことになれば、その差額分が実質的な損失となります。
- 取引手数料: 単元株の買い戻しには、証券会社所定の取引手数料がかかります。
- 日計り取引の制約(差金決済のルール): もし、間違って売却した単元株の代金がまだ証券口座に入金されていない状態(受渡日を迎えていない状態)で、その未入金の売却代金を使って同じ銘柄を買い戻そうとすると、「差金決済(さきんけっさい)」に該当し、取引が制限される場合があります。 具体的には、同じ日に同じ銘柄を「売却→買い付け→売却」という取引は、買い付け代金に最初の売却代金を充当できないルールがあります 14。 このルールに抵触しないように、買い戻しの資金は別途用意するか、受渡日を過ぎて売却代金が確定してから行うなどの注意が必要です。証券会社によってルールが異なる場合もあるため、詳細は利用している証券会社に確認しましょう。
- 売却したままにする(損益を確定させる):買い戻しに伴うリスクやコスト、手続きの手間などを考慮した結果、あるいは、売却した価格が結果的に悪くなかったと判断できる場合は、そのまま売却した状態を受け入れるという選択もあります。その場合は、売却によって生じた損益(利益または損失)が確定することになります。
なぜこのような間違いが起こるのか?
ミニ株と単元株の取引画面は、証券会社のシステムによっては似ているようで異なる部分があったり、選択肢を間違えやすかったりする場合があります。
例えば、
- 保有株一覧画面で、ミニ株と単元株が一緒に表示されていて、間違った方を選択してしまった。
- 注文画面で、「単元未満株注文」と「単元株注文」の切り替えを忘れた、または間違えた。
といったことが考えられます。
再発防止のために
- 注文前の確認を徹底する: どの口座の、どの銘柄を、何株売るのか、注文の種類(単元未満か単元か)は正しいか、といった点を、注文確定前に必ず複数回確認する習慣をつけましょう。
- 取引画面の操作に習熟する: 利用している証券会社の取引画面のどこにどのような情報が表示され、どのように操作すれば意図した通りの注文が出せるのかを、しっかりと理解しておくことが大切です。
間違えてしまった場合は冷静に状況を把握し、証券会社に相談の上、最善と思われる対応を取りましょう。



6.4 非取扱銘柄を換金したいときの「買取請求」手続き
証券会社でミニ株(単元未満株)を売買しようと思っても、すべての銘柄が取り扱われているわけではありません。
もし、あなたが保有しているミニ株が、利用している証券会社のミニ株サービスでは売却できない「非取扱銘柄」だった場合、どうすれば現金に換えることができるのでしょうか。
その一つの方法が「買取請求(かいとりせいきゅう)」という手続きです。
買取請求とは?
「買取請求」とは、あなたが保有している単元未満株を、その株を発行している会社自身(またはその株主名簿を管理している信託銀行など)に、「買い取ってください」とお願いして換金する方法です 15。
通常の証券会社のミニ株サービスが、他の投資家との間で売買を仲介するのに対し、買取請求は発行会社が直接の買い手となる点が大きく異なります。
楽天証券のウェブサイトにも、「かぶミニ(単元未満株取引)取扱銘柄のみ売却することができます。非取扱銘柄については、『買取請求』をすることで換金できます。」と記載されています 15。
買取請求の手続きの流れ(一般的な例)
買取請求の手続きは、証券会社を通じて行いますが、通常のミニ株取引よりも手間と時間がかかるのが一般的です。
- 証券会社に買取請求を申し出る:まずは、あなたの株を預けている証券会社に連絡し、「買取請求をしたい」旨を伝えます。電話や、証券会社のウェブサイトから専用の書類を請求する形が多いです。例えば、マネックス証券では、「単元未満株式買取取次請求書」をウェブサイトから請求し、記入・返送する手続きとなっています 16。
- 必要書類の準備と提出:証券会社から送られてくる「買取請求書」などの書類に、必要事項(氏名、住所、買取を希望する銘柄、株数、代金の振込先口座など)を記入し、本人確認書類のコピーなどと共に証券会社に返送します。auカブコム証券の場合も、同様に書類での手続きとなり、完了まで2週間程度を要するとされています 17。
- 証券会社から発行会社(または株主名簿管理人)への取次:あなたが提出した書類を基に、証券会社が発行会社(またはその株式の名簿を管理している信託銀行などの株主名簿管理人)に対して、買取の取次を行います。
- 買取価格の決定と約定:買取価格は、あなたが自由に指定することはできません。原則として、買取請求の書類が発行会社(または株主名簿管理人)に到着した日の終値(おわりね)など、発行会社側が定める基準に基づいて決定されます 18。いつの価格で買い取られるかは、手続きの進捗によって変動するため、正確な予測は難しいです。
- 代金の受領:買取が成立すると、後日、買取代金から手数料などが差し引かれた金額が、あなたが指定した銀行口座に振り込まれます。この代金の受領までには、通常2週間程度、あるいはそれ以上の日数がかかることが多いです 15。
買取請求の注意点
買取請求は便利な制度ではありますが、利用する際にはいくつかの重要な注意点があります。
- 手数料がかかる:買取請求を利用する場合、証券会社への「取次手数料」が必要になるのが一般的です。例えば、楽天証券では1件につき330円(税込) 15、マネックス証券では1銘柄につき550円(税込) 16、auカブコム証券でも1銘柄につき550円(税込) 17 の手数料がかかります。さらに、発行会社側でも別途手数料が発生する場合もあります 18。少額のミニ株を換金する際には、これらの手数料が利益を上回ってしまう可能性も考慮しなければなりません。
- 価格や売却日を指定できない:買取価格や、いつ売却が成立するか(約定日)を自分で決めることはできません 15。すべて発行会社側のルールに従うことになります。
- 換金までに時間がかかる:書類のやり取りや社内手続きなどが必要なため、証券会社の通常のミニ株取引と比べて、現金化までにかなりの日数を要します 15。「すぐに現金が必要」という場合には不向きな方法です。
- 手続きが煩雑:多くの場合、書類の取り寄せ、記入、返送といったアナログな手続きが必要になります。インターネットだけで完結する取引に慣れていると、手間に感じるかもしれません。
- 特定口座の扱いに注意:特定口座で保有している単元未満株を買取請求する場合、その譲渡損益は特定口座内での計算には含まれず、一般口座での取引として扱われることがあります 16。この場合、確定申告が必要になる可能性がありますので、事前に証券会社に確認しましょう。
- NISA口座の扱いに注意:NISA口座で保有している単元未満株を買取請求する場合、一度課税口座(特定口座や一般口座)に払い出してから手続きを行う必要があるなど、特別な対応が必要になることがあります 16。これも証券会社への確認が必須です。
買取請求は、どうしても他の方法で売却できない場合の最終手段と考え、利用する際はこれらの注意点を十分に理解した上で、慎重に進めるようにしましょう。



7. ミニ株売却チェックリスト【保存版】
ミニ株の売却は、慣れてしまえば難しいものではありませんが、初めての方や久しぶりに取引する方にとっては、手順や注意点が多くて戸惑うこともあるでしょう。そこで、スムーズかつ安心してミニ株を売却するために、事前に確認しておきたい項目をチェックリストにまとめました。売却注文を出す前に、このリストを使って一つ一つ確認することで、思わぬミスを防ぎ、より納得のいく取引を目指しましょう。ぜひ、この「ミニ株売却チェックリスト」を保存版としてご活用ください。
ミニ株を売却する前に、以下の項目を一つずつ確認してみましょう。
1. 売却準備と思考整理
- [ ] なぜこのミニ株を売却するのか、目的は明確ですか?
- (例:利益確定、損切り、他の銘柄への乗り換え、現金が必要など)
- [ ] 売却する銘柄と株数は正確に把握していますか?
- 証券口座にログインして、保有銘柄一覧で確認しましたか。
- [ ] その銘柄の平均取得単価はいくらですか?
- 現在の株価と比較して、利益が出ているか損失が出ているか(含み益・含み損)を把握しましたか。
- [ ] 売却タイミングについて、自分なりの考えはありますか?
- 株価チャートの動き、関連ニュース、市場全体の状況などを考慮しましたか。
- あらかじめ決めていた売却ルール(目標利益率、許容損失率など)はありますか。
- [ ] 利用している証券会社のミニ株サービスの約定ルールを理解していますか?
- いつ注文すれば、いつの価格(始値、終値など)で約定するのか確認しましたか。
- リアルタイム取引が可能か、指値注文が可能か、把握していますか。
2. 注文入力前の最終確認
- [ ] 売却する銘柄名は正しいですか?(似たような名前の銘柄と間違えていませんか)
- [ ] 売却する株数は正しいですか?(桁数を間違えていませんか)
- [ ] 注文方法(成行、指値など)は意図したものになっていますか?
- (ミニ株の多くは成行注文のみです。楽天証券「かぶミニ」など一部サービスでは指値も可能です)
- [ ] もし指値注文なら、指定した価格は適切ですか?
- (現在の市場価格から大きくかけ離れていませんか)
- [ ] 預り区分(特定口座、一般口座、NISA口座など)の選択は正しいですか?
- [ ] 取引パスワード(暗証番号)は手元に準備できていますか?
- [ ] 注文内容の確認画面で、すべての項目を再度チェックしましたか?
3. 手数料と税金の確認
- [ ] 売却にかかる手数料は把握していますか?
- (SBI証券「S株」や楽天証券「かぶミニ」は条件付きで無料ですが、auカブコム証券「プチ株」やマネックス証券「ワン株」はNISA口座以外では手数料がかかります)
- (楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引ではスプレッドがかかります)
- [ ] 売却益が出た場合の税金について理解していますか?
- (特定口座(源泉徴収あり)なら原則確定申告不要、NISA口座なら非課税など)
- [ ] もし損失が出た場合、損益通算や繰越控除の制度について知っていますか?
- (確定申告が必要になる場合があります)
4. 売却後の資金管理
- [ ] 売却代金が実際に口座に入金される「受渡日」はいつか把握していますか?
- (通常、約定日から起算して3営業日目です)
- [ ] 売却代金の使い道や、再投資のプランは考えていますか?
5. トラブルシューティングの知識(念のため)
- [ ] もし指値注文が約定しなかった場合の対処法を考えていますか?
- [ ] もし間違った注文をしてしまった場合の対応方法(証券会社への連絡など)を知っていますか?
- [ ] もし保有しているミニ株が証券会社の取扱銘柄でなかった場合の換金方法(買取請求など)について、基本的な知識はありますか?
このチェックリストが、あなたのミニ株売却の一助となれば幸いです。
特に、注文を確定する前の最終確認は、何度でも慎重に行うようにしましょう。



8. まとめ 初めてでも安心してミニ株を売却するための極意
ここまで、ミニ株(単元未満株)の売却方法について、基本的な知識から具体的な手順、さらには税金やトラブル対処法に至るまで、詳しく解説してきました。最後に、この記事の要点を振り返りながら、株式投資初心者の方が初めてでも安心してミニ株を売却するための「極意」をまとめてお伝えします。このまとめが、あなたのミニ株投資成功への確かな一歩となることを願っています。
ミニ株は、少額から気軽に始められる株式投資として、初心者の方にとって非常に魅力的な選択肢です。
購入するのも比較的簡単ですが、いざ「売却する」となると、少し戸惑うこともあるかもしれません。
しかし、この記事で解説してきたポイントを押さえておけば、決して難しいものではありません。
ミニ株売却成功のための5つの極意
- 【極意その1】まずは基本を知ることから!焦らずじっくり準備しよう。
- ミニ株とは何か、単元株との違いは何かを理解しましょう。
- 利用している証券会社のミニ株サービスのルール(手数料、約定タイミング、注文方法など)をしっかり把握することが大切です。特に、SBI証券「S株」のようにリアルタイム取引や指値注文ができないサービスもあれば、楽天証券「かぶミニ®」のように可能なサービスもあります。
- 売却前には、保有株数、取得単価、現在の株価、市場全体の状況などを確認し、自分なりの売却方針(目標利益、損切りラインなど)を立てておきましょう。
- 【極意その2】注文は慎重に!「確認」こそがミスを防ぐ最大の武器。
- 売却する銘柄、株数、注文方法(多くは成行注文)などを、注文確定前に何度も確認しましょう。
- 特に、リアルタイム取引の成行注文は取消ができない場合があるので、細心の注意が必要です。
- 取引パスワードの管理も徹底しましょう。
- 【極意その3】手数料と税金も計画のうち!賢く付き合おう。
- 売却手数料は証券会社や口座の種類によって異なります。NISA口座なら非課税・手数料無料(または実質無料)の恩恵を受けられることが多いです。
- 売却益が出た場合の税金は、主に「特定口座(源泉徴収あり)」ならお任せでOK、「NISA口座」なら非課税です。
- 損失が出た場合は、「損益通算」や「繰越控除」といった制度を活用できないか検討しましょう(確定申告が必要になる場合があります)。
- 【極意その4】売った後も大切!資金の管理と次のステップを考えよう。
- 売却代金が実際に使えるようになる「受渡日」(通常、約定日から3営業日目)を把握しておきましょう。
- 売却で得た資金をどうするか(再投資、貯蓄、他の用途など)をあらかじめ考えておくと、スムーズに次の行動に移せます。
- ミニ株で株式投資の経験を積んだら、より多様な投資戦略が取れるCFD(差金決済取引)などにステップアップしてみるのも面白いかもしれません。CFDなら、少ない資金で大きな取引ができたり、株価の下落局面でも利益を狙えたりする可能性があります。ただし、リスクもしっかり理解した上で、慎重に検討しましょう。
- 【極意その5】困ったときは慌てずに!情報収集と相談を。
- 指値注文が通らない、間違った注文をしてしまった、などのトラブルが起きても、まずは冷静に状況を把握しましょう。
- 証券会社のQ&Aページを見たり、カスタマーサポートに問い合わせたりして、正しい情報を得ることが大切です。
- この記事で紹介した「買取請求」のように、通常とは異なる手続きが必要になる場合もあります。
最後に
ミニ株の売却は、株式投資における一つの出口戦略です。
利益を確定させる喜びもあれば、時には損失を最小限に抑えるための苦渋の決断となることもあるでしょう。
どのような結果であれ、その経験は必ずあなたの次の投資に活かされます。
この記事が、あなたがミニ株の売却方法を理解し、自信をもって取引に臨むための一助となれば、これ以上の喜びはありません。
焦らず、慎重に、そして楽しみながら、株式投資の世界を歩んでいってください。



本記事の注意事項(免責事項)
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を意図したものではありません。本記事に記載されている情報については、正確性、完全性、有用性を確保するために努力しておりますが、その保証は致しかねます。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の内容を利用して生じたいかなる損害についても、当サイトおよび著者は一切の責任を負いかねます。詳しくは免責事項ページをご確認ください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
【登場人物】



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