1. ミニ株スキャルピング入門
この章では、株式投資の超短期売買手法である「スキャルピング」の基本と、それを少額から始められる「ミニ株(単元未満株)」で行うことの魅力、そして他の取引スタイルとの違いを分かりやすく解説します。スキャルピングが初めての方でも、その概要をしっかりつかめるように、言葉の意味から丁寧に説明していきますので、安心して読み進めてください。
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1.1 スキャルピングとは?
「スキャルピングって何?」初めて聞く方もいるかもしれません。
ここでは、スキャルピングという取引方法の基本的な考え方と、その特徴を中学生にも分かるように、かみ砕いて説明します。
スキャルピングの定義と特徴
スキャルピングとは、非常に短い時間で株式などの売買を繰り返し、小さな利益をコツコツと積み重ねていくことを目指す取引手法です。
まるで「頭の皮を薄く剥ぐように」ごくわずかな利益を狙うイメージから、この名前が付けられたと言われています。
1回の取引にかける時間は、本当に短く、数秒から数分程度が一般的です。
そのため、1日に何十回、時には何百回といった頻度で取引を行うこともあります。
1回あたりの利益は小さいかもしれませんが、その小さな成功を何度も繰り返すことで、最終的にまとまった利益に繋げるのがスキャルピングの考え方です。
スキャルピングの魅力
スキャルピングには、いくつかの魅力的な点があります。
まず、取引時間が極めて短いため、市場の予期せぬ急な変動によって大きな損失を被るリスクを、ある程度抑えやすいという特徴があります。
ポジション(株を持っている状態)を長時間持ち続けることがないため、例えば夜間に大きな経済ニュースが出ても、比較的落ち着いていられるかもしれません。
また、少ない資金でも、取引回数を増やすことで効率的に資金を運用し、利益を狙える可能性があると言われることもあります。
さらに、短期間で多くの取引を経験出来るため、相場に対する感覚や取引のスキルが比較的速く向上することも期待出来るでしょう。
スキャルピングの注意点
一方で、スキャルピングには注意すべき点も存在します。
最も大きな特徴として、取引中はチャート画面に高い集中力を保つ必要があります。
一瞬の判断が利益や損失に直結するため、気を抜けません。
取引回数が多くなる傾向があるため、1回あたりの手数料やスプレッド(株を買う値段と売る値段の差)は小さくても、積み重なると利益を圧迫してしまう可能性があります。
この点は特に注意深く見ていく必要があります。
そして、小さな利益と損失を短い時間で繰り返す中で、常に冷静さを保ち続ける精神的な強さも求められます。
どんな人に向いている?
スキャルピングは、以下のようなタイプの人に向いているかもしれません。
- 短い時間に集中して物事に取り組める人。
- あらかじめ決めたルールをしっかりと守り、感情に左右されずに機械的に判断を下せる人。
- 大きな利益を一度に狙うよりも、小さな成功をコツコツと積み重ねる作業が好きな人。
ミニ株でのスキャルピングについて
ここで一つ知っておいてほしいのは、多くの「ミニ株」サービスでは、スキャルピングで求められるような超高速のリアルタイム取引や、自由な価格での注文が難しい場合があるということです。
しかし、一部の証券会社のサービスでは、これに近い環境が提供されつつあります。
この点については、後の章で詳しく解説します。



1.2 単元未満株でスキャルピングするメリット
「ミニ株」や「単元未満株」という言葉を聞いたことがありますか。
大きな資金がなくても株式投資を始められるこの仕組みと、スキャルピングを組み合わせるメリットについて解説します。
単元未満株(ミニ株)とは?
日本の株式市場では、通常、株は100株を1つの単位(これを「1単元」と言います)として取引されます。
しかし、単元未満株(たんげんみまんかぶ)とは、その名の通り、1単元である100株に満たない株数のこと、例えば1株から99株の単位で取引が出来る制度です。
証券会社によっては、「S株(エスかぶ)」(SBI証券)、「かぶミニ」(楽天証券)、「ワン株」(マネックス証券)、「プチ株」(auカブコム証券)など、それぞれ独自のサービス名で提供されています。
この記事では、基本的に「ミニ株」と「単元未満株」を同じ意味合いで使っていきます。
ミニ株でスキャルピングを行う主なメリット
ミニ株を使ってスキャルピングのような短期売買に挑戦することには、初心者にとっていくつかの嬉しい点があります。
- 少額から投資を始められる
- ミニ株の最大の魅力は、なんと言っても数百円や数千円といった、非常に少ない資金から株式投資をスタート出来る点です。
- 例えば、株価が1株1,000円の銘柄であれば、ミニ株なら1,000円から投資を始めることが可能です。
- 通常の100株単位の取引では10万円の資金が必要になるところ、ミニ株ならお小遣い程度の金額からでも気軽に挑戦出来ます。
- これにより、普段は手が届きにくい高価な有名企業の株(「値がさ株」と言います)にも、無理なく投資を試すことが出来ます。
- リスクを分散しやすい
- 少ない金額で1株から購入出来るため、複数の異なる会社の株に資金を分けて投資する「分散投資(ぶんさんとうし)」がとても行いやすいです。
- 例えば、1万円の資金があれば、1株1,000円の銘柄を10社に1株ずつ投資する、といったことも可能です。
- 1つの銘柄だけに全ての資金を集中させるよりも、リスクを抑える効果が期待出来ます。
- 練習や「試し買い」に最適
- スキャルピングのような超短期売買は、取引の回数が多くなりがちです。
- 最初から大きな金額で取引するのは、誰でも不安を感じるものです。
- ミニ株であれば、少額で実際の取引を経験し、実践的な練習を積むことが出来ます。
- 「この会社の株、将来性がありそうで気になるけど、いきなり大きな金額を投資するのはちょっと…」と感じる時にも便利です。
- まず1株だけ購入してみて、その会社の株価がどのように動くのかを観察する「試し買い」といった使い方も出来ます。
- たとえスキャルピング特有の超高速取引が一部のミニ株サービスでしか実現できなくても、この少額での実践経験は、市場の動きを肌で感じたり、注文方法に慣れたり、少額でも実際のお金が動くことによる感情のコントロールを学んだりする上で、非常に価値のある「練習の場」となるでしょう。
- 精神的な負担が少ない(可能性)
- 投資する金額が小さいということは、万が一、取引で損失が出てしまった場合の金額も、相対的に小さく抑えられるということです。
- これにより、大きな金額を運用する時のような過度なプレッシャーを感じることなく、比較的冷静に取引の判断を下せる可能性があります。



1.3 デイトレード・スイングトレードとの違い
スキャルピングの他にも、短期的な取引スタイルとして「デイトレード」や「スイングトレード」があります。
これらの取引方法とスキャルピングがどう違うのか、期間や特徴を比較しながら見ていきましょう。
取引スタイルの比較
株式投資の取引スタイルは、株を保有する期間によって、いくつかの種類に分けられます。
- スキャルピング
- 取引期間: 数秒~数分程度。
- 1日の取引回数: 多い時で数十回~数百回に及ぶことも。
- 狙う利益: ごくごく小さな値動き。
- 特徴: 最も短い時間軸で行う取引です。高い集中力と素早い判断が常に求められます。
- デイトレード
- 取引期間: 数時間~長くても1日以内。その日の取引時間内に売買を完了させ、翌日に株を持ち越さないのが原則です。
- 1日の取引回数: 1回~多くても数回程度が一般的。
- 狙う利益: スキャルピングよりは大きな値動きを狙います。
- 特徴: 1日の市場全体の動きの中で利益獲得を目指します。スキャルピングよりは時間に少し余裕がありますが、日中の市場の動向を継続して見守る必要があります。
- スイングトレード
- 取引期間: 数日~数週間程度。
- 取引回数: 数日から数週間に1回程度の売買が目安。
- 狙う利益: デイトレードよりもさらに大きな値動き、市場のトレンド(方向性)を捉えて利益を狙います。
- 特徴: 日々の一時的な値動きに一喜一憂せず、数日単位の大きな流れに乗って利益を目指すスタイルです。比較的ゆっくりと取引に取り組めるため、株式投資の初心者の方や、日中は学校や仕事で忙しいという人にも向いていると言われています。
それぞれのスタイルのイメージ
これらの取引スタイルを、陸上競技に例えてみると分かりやすいかもしれません。
- スキャルピング
- 短距離走の選手。
- 一瞬のスピードと反応が勝負を分けます。
- デイトレード
- 中距離走の選手。
- 1日のレース全体の展開を読み、戦略的に走ります。
- スイングトレード
- マラソン選手。
- 数日、あるいは数週間かけて、じっくりとゴールを目指します。
ミニ株 スキャルピング というのは、これらの取引スタイルの中でも、特に短い時間軸で、かつ「ミニ株」という少額から始められる単位で挑戦するイメージです。
スキャルピングが最も短期的な取引であると理解することで、その難易度や求められるスキルについても想像しやすくなるでしょう。
また、もし本格的なスキャルピングがミニ株の制約上難しいと感じた場合でも、もう少しだけ時間軸を長くしたデイトレードに近い短期売買から試してみる、といった柔軟な考え方も出来ます。



2. ミニ株スキャルピングの基礎知識
ミニ株でスキャルピングに挑戦する前に、知っておくべき基本的なルールや知識があります。注文の方法、取引にかかるコスト、そして利益が出た場合の税金について、初心者の方にも分かりやすく解説します。これらの基礎をしっかり押さえることが、スムーズな取引への第一歩です。
2.1 注文方式(リアルタイム・成行・指値)
株を買ったり売ったりするには「注文」を出す必要があります。
ここでは、スキャルピングに関係の深い注文方法の種類と、ミニ株取引での注意点を説明します。
主な注文方法
株式の注文方法にはいくつか種類がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。
- 成行(なりゆき)注文
- これは、値段を指定せずに「いくらでもいいから今すぐ買いたい(売りたい)」という意思表示をする注文方法です。
- 取引が成立しやすい(これを「約定(やくじょう)しやすい」と言います)のが大きなメリットですが、一方で、自分が思っていたよりも高い値段で買ってしまう、あるいは予想外に安い値段で売ってしまうリスクも持っています。
- 多くの証券会社のミニ株サービス、例えばSBI証券の「S株」、マネックス証券の「ワン株」、auカブコム証券の「プチ株」では、基本的にこの成行注文のみの取り扱いとなっています。
- 指値(さしね)注文
- こちらは、「この値段になったら買いたい(売りたい)」と、自分で具体的な値段を指定して出す注文方法です。
- 自分が希望する値段で取引出来るのがメリットですが、株価がその指定した値段に到達しない限り、取引は成立しません。
- スキャルピングでは、ほんのわずかな株価の動きを捉えることが求められるため、理想を言えば、指値注文で正確な価格を狙って取引したいところです。
- 重要なポイントとして、ほとんどの証券会社が提供するミニ株(単元未満株)サービスでは、この指値注文を利用することが出来ません。
- しかし、楽天証券の「かぶミニ」というサービスでは、リアルタイム取引において指値注文が可能です。
- これは、ミニ株でスキャルピングのような取引を考えたい人にとって、非常に大きな違いとなります。
リアルタイム取引の重要性
スキャルピングは、刻一刻と変わる株価のほんのわずかな動きを捉えて利益を狙う手法です。
そのため、注文を出した瞬間の株価で取引が成立する「リアルタイム取引」が、本来は不可欠と言えます。
しかし、多くのミニ株サービスでは、投資家からの注文を1日に数回(例えば、取引が始まる前の「前場寄付(ぜんばよりつき)」や、午後の取引開始時の「後場寄付(ごばよりつき)」、1日の取引が終わる「大引け(おおびけ)」など)まとめて処理する方式を取っています。
これでは、リアルタイム性が確保されません。
この点においても、楽天証券の「かぶミニ」は、主要なネット証券の中で唯一、ミニ株のリアルタイム取引を提供しています。
この機能があることで、よりスキャルピングに近い形での取引がミニ株でも可能になるのです。
逆指値注文について
「株価が〇〇円以下になったら自動的に売る(損失を確定させる「損切り」のため)」や、「株価が〇〇円以上になったら自動的に買う」といった注文方法を「逆指値(ぎゃくさしね)注文」と言います。
これはリスクを管理する上で非常に便利な機能です。
しかし、注意点として、どの証券会社のミニ株(単元未満株)サービスでも、基本的にこの逆指値注文は利用出来ません。
これは、スキャルピングを行う上で、リスク管理の面で大きな制約の一つとなります。
損切りは自分自身で株価を常にチェックし、手動で行うか、他の方法を工夫する必要が出てきます。



2.2 約定スピードと手数料構造
スキャルピングでは、取引の速さとコストがとても重要です。
注文がどれくらいの速さで成立するのか、そしてどんな手数料がかかるのか、詳しく見ていきましょう。
約定(やくじょう)スピード
「約定」とは、あなたが出した株の売買注文が、取引所などで実際に成立することを言います。
スキャルピングでは、狙った瞬間に注文が成立する能力、これを「約定力(やくじょうりょく)」と言いますが、これが非常に求められます。
もし約定が遅れてしまうと(これを「スリッページが発生する」とも言います)、自分が意図した価格とは異なる価格で取引が成立してしまい、期待した利益が減ってしまったり、逆に損失が出てしまったりする可能性があります。
リアルタイム取引に対応していない多くのミニ株サービスでは、約定するタイミングが1日に数回に限られているため、スキャルピングで求められるようなスピード感とは大きく異なります。
この点において、楽天証券の「かぶミニ」が提供するリアルタイム取引は、約定スピードの面で有利と言えるでしょう。
手数料構造の理解
スキャルピングは、1日に何度も取引を繰り返すスタイルです。
そのため、1回あたりの手数料はたとえ小さくても、それが積み重なると、最終的に大きなコストとなってしまうことがあります。
利益が出ても、手数料を支払ったらほとんど残らなかった、あるいは赤字になってしまった、という状態を「手数料負け」と言います。
これには十分な注意が必要です。
(1) 売買手数料
株式売買手数料とは、株を買ったり売ったりするたびに、証券会社に支払う費用のことです。
この手数料は、証券会社ごと、あるいは取引する金額によって異なります。
- SBI証券の「S株」現在の情報では、買付時も売却時も手数料は無料です。これは一見すると大きなメリットですが、次に説明するスプレッドというコストに注意が必要です。
- 楽天証券の「かぶミニ」こちらも、売買手数料は無料です。ただし、リアルタイム取引を行う場合には、スプレッドという形で実質的なコストが発生します。
- マネックス証券の「ワン株」買付手数料は無料ですが、売却する際には約定金額に対して0.55%(税込)の手数料がかかります。この手数料には最低料金が設定されており、52円(税込)となっています。
- auカブコム証券の「プチ株」約定代金に対して0.55%(税込)の手数料がかかり、こちらも最低手数料は52円(税込)です。ただし、NISA口座の成長投資枠を利用した取引の場合は無料になることがあります。
ポイントとして、手数料が無料と表示されていても、他の形(例えばスプレッド)でコストが発生する場合があります。
そのため、表面的な手数料だけでなく、取引にかかる全てのコストを総合的に見て判断することが必要です。
(2) スプレッド・隠れコスト
スプレッドとは、株を買う時の値段(買値またはAskと言います)と、売る時の値段(売値またはBidと言います)の差のことです。
これは、実質的な取引コストの一つと考えられます。
例えば、ある株の買値が1005円で、売値が1000円だったとします。
この場合、スプレッドは5円です。
もしあなたがこの株を買ってすぐに売ろうとすると、この5円分のスプレッドがあるため、最初から少し不利な状況で取引を始めることになります。
スキャルピングのように、ごくわずかな値動きで利益を狙う取引方法では、このスプレッドの大きさが利益に直接大きく影響します。
- SBI証券の「S株」売買手数料は無料ですが、公式サイトによると売却時にはスプレッドが適用されると記載されています。具体的なスプレッドの幅は明示されていませんが、これが実質的な取引コストとなります。
- 楽天証券の「かぶミニ」リアルタイム取引を行う場合、基準となる価格に対して0.22%のスプレッドがかかります。一方で、寄付取引(市場が始まる前の注文で、始値で約定する取引)の場合はスプレッドはかかりません。
- マネックス証券の「ワン株」やauカブコム証券の「プチ株」これらのサービスの主要な情報ページには、スプレッドに関する明確な記載は見当たりません。しかし、これらの取引は証券会社と投資家が直接取引する「相対取引(あいたいとりひき)」となる場合が多く、その仕組み上、証券会社が提示する売買価格には、実質的なコストが含まれている可能性があります。特に相対取引の場合、市場でついている価格と完全に一致しないことがある点も理解しておく必要があります。
隠れコストとは、売買手数料という名目以外で、投資家が実質的に負担している費用の総称です。
スプレッドもその代表的なものの一つです。
また、約定するタイミングが限られていることによって、狙った価格で取引できずに機会を逃してしまうこと(機会損失)なども、広い意味ではコストと言えるかもしれません。
スキャルピングを行う上では、これらの「見えないコスト」にも目を向けることが、より正確な損益管理に繋がります。



2.3 税金と確定申告のポイント
株取引で利益が出たら、税金について考える必要があります。
難しそうに感じるかもしれませんが、基本的なポイントを押さえれば大丈夫。
ここでは、株の利益にかかる税金と、確定申告が楽になる口座の種類について説明します。
株の利益にかかる税金
株式投資で得た利益、具体的には株を売って得た利益(売却益)や、株を持っていることでもらえる配当金には、原則として税金がかかります。
現在の税率は、所得税が15.315%(これには復興特別所得税が含まれます)と、住民税が5%で、これらを合わせると合計で20.315% となります。
簡単にイメージすると、もし株取引で1万円の利益が出た場合、そのうち約2,031円が税金として引かれる、ということです。
証券口座の種類と確定申告
証券会社で株取引を始めるためには、まず口座を開設する必要があります。
その際、主に以下の3種類の口座から選ぶことになります。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- これは、特に株式投資の初心者の方に最もおすすめされる口座の種類です。
- この口座を選ぶと、株取引で利益が出た場合に、証券会社が自動的に税金の計算をしてくれて、さらには納税まで代行してくれます。
- そのため、原則として自分で確定申告(1年間の所得とそれに対する税金を計算して税務署に申告する手続きのこと)をする必要がありません。
- これにより、税金に関する手間を大幅に減らすことが出来ます。
- 特定口座(源泉徴収なし)
- この口座を選んだ場合、証券会社は1年間の取引の損益を計算した「年間取引報告書」という書類を作成してくれます。
- 投資家は、この報告書を使って、自分自身で確定申告を行う必要があります。
- 例えば会社員の方で、お給料以外の所得(投資の利益など)が年間で20万円以下の場合など、特定の条件を満たせば確定申告が不要になるケースがあります。
- そのような場合には、「源泉徴収あり」の口座よりも手取りの金額が多くなる可能性があります。
- しかし、その判断が難しい場合もあるため、注意が必要です。
- 一般口座
- この口座では、1年間の取引の損益を全て自分で計算し、確定申告も自分自身で行う必要があります。
- 計算や手続きに手間がかかるため、初心者の方にはあまりおすすめ出来ません。
NISA口座の活用
「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」という制度を聞いたことがあるでしょうか。
これは、毎年決められた一定金額の範囲内で購入した株式や投資信託などから得られる利益が非課税になる、つまり税金がかからなくなるという、とてもお得な制度です。
ミニ株も、多くの証券会社でこのNISA口座を使って取引することが可能です。
例えば、SBI証券のS株や楽天証券のかぶミニ、マネックス証券のワン株などが対応しています。
NISA口座を利用すれば、ミニ株スキャルピングで得た利益も非課税の対象となるため、非常に有利です。
ただし、NISA口座には年間に投資出来る金額の上限が定められているなどのルールがあります。
損失が出た場合の確定申告(繰越控除・損益通算)
株取引で残念ながら損失が出てしまった場合、通常は利益がないので税金はかからず、確定申告も不要です。
しかし、あえて確定申告を行うことでメリットがある場合があります。
その一つが「繰越控除(くりこしこうじょ)」という制度です。
これは、その年に出た損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来もし利益が出た場合にその利益と相殺出来るというものです。
また、複数の証券口座で取引をしていて、一方の口座では利益が出たけれど、もう一方の口座では損失が出てしまった、という場合に、それらの利益と損失を合算して計算出来る「損益通算(そんえきつうさん)」という仕組みもあります。
これも確定申告によって利用可能になります。
これらの制度を利用したい場合には、たとえ「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいたとしても、自分で確定申告を行う必要があります。
初心者の方は、まずは税金の手続きが簡単な「特定口座(源泉徴収あり)」から始めるのが分かりやすいでしょう。
そして、NISA口座は税制面で大きなメリットがあるので、積極的に活用を検討したいところです。



3. 証券会社・サービス比較
ミニ株(単元未満株)でスキャルピングを始めるには、どの証券会社のサービスを選べば良いのでしょうか。ここでは、主要なネット証券であるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券のミニ株サービスを比較し、それぞれの特徴やスキャルピングへの向き不向きを解説します。手数料、注文方法、取引時間などをしっかり比べて、自分に合った証券会社を見つけましょう。
ミニ株(単元未満株)のサービスは、証券会社によってサービス名や手数料、注文のルールなどが大きく異なります。
スキャルピングという超短期売買に適しているかどうかを判断する上で、特に重要なポイントとなるのは、「リアルタイムで取引が出来るか」「指値注文が使えるか」、そして「手数料やスプレッドといったコストがどれくらいか」という点です。
これらのミニ株取引も、基本的には東京証券取引所(東証)が開いている時間内の株価に基づいて約定(取引成立)します。
東証の現在の主な取引時間は、前場(ぜんば)が午前9時から11時30分まで、後場(ごば)が午後12時30分から15時30分までとなっています。
3.1 SBI証券「S株」
SBI証券の「S株」は、ミニ株取引の中でも人気のあるサービスの一つです。
手数料や注文方法など、S株の特徴を詳しく見ていきましょう。
サービス概要
SBI証券の「S株(エスかぶ)」は、国内の株式を1株から取引出来る単元未満株サービスです。
手数料
現在の情報によると、S株の売買手数料は買付時も売却時も無料です。
これは投資家にとって大きな魅力と言えるでしょう。
ただし、注意点として、売却する際にはスプレッド(具体的な幅は公開されていません)が実質的なコストとしてかかるとされています。
注文方法・時間・約定ルール
S株の注文や約定に関するルールは以下の通りです。
- 注文方法: 成行注文のみの取り扱いです。つまり、自分で値段を指定する指値注文は出来ません。
- リアルタイム取引: 出来ません。
- 約定タイミング:
- 当日の午前0時から午前7時までに出された注文は、原則として当日の前場(午前の取引)の始値(はじめね:その日最初についた値段)で約定します。
- 当日の午前7時から午前10時30分までに出された注文も、原則として当日の前場の始値で約定します。
- 当日の午前10時30分から午後2時までに出された注文は、原則として当日の後場(午後の取引)の終値(おわりね:その日最後についた値段)で約定します。
- 当日の午後2時から深夜0時までに出された注文は、原則として翌営業日の前場の始値で約定します。
このように、注文を出してから実際に取引が成立するまでに時間が空くため、その間に株価が変動するリスクがあります。
スキャルピングへの適性
上記の点を踏まえると、SBI証券のS株はスキャルピングには不向きと言わざるを得ません。
リアルタイムでの取引が出来ず、指値注文も利用出来ないため、スキャルピングで求められる迅速な売買や、狙った価格での取引といったコントロールが非常に難しいです。
約定タイミングも1日に数回に限られています。
売買手数料が無料である点は魅力的ですが、スキャルピングという取引手法の道具としては、残念ながら機能しにくいでしょう。
その他特徴
S株はNISA(少額投資非課税制度)の枠内での取引が可能です。
また、保有しているポイントを使ってS株を購入出来るポイント投資サービスも提供されています。



3.2 楽天証券「かぶミニ」
楽天証券の「かぶミニ」は、ミニ株取引でスキャルピングを考えるなら大注目のサービスです。
その理由となる特徴を詳しく解説します。
サービス概要
楽天証券の「かぶミニ」も、国内株式を1株から取引出来る単元未満株サービスです。
手数料
現在の情報では、「かぶミニ」の売買手数料は無料です。
ただし、取引の方法によって実質的なコストが異なります。
リアルタイム取引を行う場合、基準となる価格に対して0.22%のスプレッドがかかります。
これが取引のコストとなります。
一方で、寄付取引(前場の寄付で約定する取引)を選択した場合は、このスプレッドはかかりません。
注文方法・時間・約定ルール
「かぶミニ」の注文や約定に関する特徴は以下の通りです。
- 注文方法: 成行注文だけでなく、指値注文も可能です(リアルタイム取引時)。
- リアルタイム取引: 可能です。 これは、主要なネット証券が提供するミニ株サービスの中では、楽天証券の「かぶミニ」だけの特徴です(2024年12月10日時点の情報に基づきます)。 取引時間は、東京証券取引所の取引時間中(具体的には9:00~11:30、12:30~15:25)となります。
- 寄付取引: 前場の寄付で約定する取引も選択出来ます。
- 約定ルール: 「かぶミニ」の取引は、楽天証券が相手方となって市場外で売買を成立させる「相対取引」です。
スキャルピングへの適性
上記の点を総合的に考えると、楽天証券の「かぶミニ」は、ミニ株でスキャルピングを行う上で比較的向いていると言えます。
最大の理由は、リアルタイムで取引が可能であること、そして指値注文が使えることです。
これらは、スキャルピングのように一瞬の値動きを捉え、狙った価格で売買を行いたい場合に、非常に大きなアドバンテージとなります。
リアルタイム取引時には0.22%のスプレッドがコストとしてかかりますが、他の多くのミニ株サービスではそもそもスキャルピング的な取引自体が困難であることを考えると、現状では最も適した選択肢の一つと言えるでしょう。
「ミニ株 スキャルピング」を実際に試してみたい初心者の方にとっては、まず検討すべきサービスです。
その他特徴
「かぶミニ」もNISA(成長投資枠)での取引が可能です。
また、楽天グループで貯まった楽天ポイントを使って投資することも出来ます。



3.3 マネックス証券「ワン株」
マネックス証券の「ワン株」も、1株から投資できるサービスです。
手数料や取引の仕組みについて確認し、スキャルピングに使えるか見てみましょう。
サービス概要
マネックス証券の「ワン株」は、上場している株式に1株から投資出来る単元未満株のサービスです。
手数料
現在の情報によると、「ワン株」の手数料は以下の通りです。
- 買付手数料: 無料です。
- 売却手数料: 約定金額に対して0.55%(税込)がかかります。 ただし、最低手数料として52円(税込)が設定されています。
- NISA口座を利用して取引する場合、売買手数料は実質無料となります(売却時の手数料は後日キャッシュバックされる形式です)。
注文方法・時間・約定ルール
「ワン株」の注文や約定に関するルールは以下の通りです。
- 注文方法: 成行注文のみです。自分で値段を指定する指値注文は出来ません。
- リアルタイム取引: 出来ません。
- 約定タイミング: 原則として、取引日の午前11時30分までに出された注文が、その日の後場(午後の取引)の始値(はじめね)で約定します。
- 約定した結果が取引画面などに反映されるのは、当日の16時10分頃となります。
スキャルピングへの適性
上記の点を考慮すると、マネックス証券の「ワン株」はスキャルピングには不向きと言えます。
リアルタイムでの取引が出来ず、指値注文も利用出来ません。
約定するタイミングも1日に1回(後場の始値)と限定的であるため、スキャルピングで求められる迅速な売買は困難です。
また、売却時には手数料がかかるため、ごく小さな利益を狙うスキャルピングでは、その手数料が負担となる可能性も考えられます。
その他特徴
マネックス証券が提供している投資SNSアプリ「ferci(フェルシー)」からも「ワン株」の買付注文が可能です。



3.4 auカブコム証券「プチ株」
auカブコム証券の「プチ株」は、名前の通り少額から始められるミニ株サービスです。
こちらの特徴も確認してみましょう。
サービス概要
auカブコム証券の「プチ株」は、1株から株式投資が可能な単元未満株のサービスです。
手数料
現在の情報によると、「プチ株」の手数料は以下の通りです。
- 約定代金に対して0.55%(税込)の手数料がかかります。 最低手数料は52円(税込)です。
- NISA口座(成長投資枠)を利用した取引の場合は、手数料は無料です。
- また、「プレミアム積立(プチ株)」という積立サービスを利用して買付を行う場合も、手数料は無料となります。
注文方法・時間・約定ルール
「プチ株」の注文や約定に関するルールは以下の通りです(auカブコム証券の公式サイトでより詳細な情報を確認してください)。
- 注文方法: 成行注文のみです。自分で値段を指定する指値注文は出来ません。
- リアルタイム取引: 出来ません。
- 約定タイミング:
- 前営業日の午後11時1分から当日の午前10時までに出された注文は、原則として当日の後場の始値で約定します。
- 当日の午前10時1分から当日の午後11時までに出された注文は、原則として翌営業日の前場の始値で約定します。
- 基本的には1日に2回の約定機会がある形となります。
スキャルピングへの適性
上記の点を考慮すると、auカブコム証券の「プチ株」もスキャルピングには不向きと言えます。
リアルタイムでの取引が出来ず、指値注文も利用出来ません。
約定するタイミングも限定的であるため、スキャルピングで求められる迅速な売買は非常に難しいです。
手数料も、ごくわずかな利益を狙うスキャルピングにとっては、やや割高に感じるかもしれません。
その他特徴
「プチ株」の注文は24時間受け付けていますが、実際の約定は上記の定められたタイミングとなります。



ミニ株(単元未満株)サービス スキャルピング適性比較
証券会社 | サービス名 | 売買手数料(買/売) | スプレッド(リアルタイム時) | リアルタイム取引 | 指値注文 | スキャルピング適性 | 主な約定タイミング |
SBI証券 | S株 | 無料/無料 | なし | × | × | × 不向き | 前場始値、後場終値 |
楽天証券 | かぶミニ | 無料/無料 | 0.22% | 〇 可能 | 〇 可能 | △~〇 比較的向き | リアルタイム、前場寄付 |
マネックス証券 | ワン株 | 無料/0.55%(最低52円) | なし | × | × | × 不向き | 後場始値 |
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4. スキャルピングに向くミニ株銘柄の選び方
ミニ株でスキャルピングに挑戦する際、どんな銘柄を選べば良いのでしょうか。全ての株がスキャルピングに向いているわけではありません。ここでは、取引が活発で値動きがあり、ニュースの影響も考慮した銘柄選びのポイントを、初心者にも分かりやすく解説します。適切な銘柄選びが、スキャルピング成功の第一歩です。
4.1 流動性・出来高をチェックする
スキャルピングでは「買いたい時に買え、売りたい時に売れる」ことが非常に重要です。
そのためにチェックすべき「流動性」と「出来高」について説明します。
流動性(りゅうどうせい)とは?
株式市場で「流動性(りゅうどうせい)が高い」と言う時、それはその株の取引が活発で、買いたいと思っている人と売りたいと思っている人が常にたくさんいる状態を指します。
流動性が高い銘柄は、株価を大きく動かしてしまうことなく、スムーズに売買が成立しやすいという特徴があります。
スキャルピングは、ほんのわずかな値動きを狙う取引なので、注文がすぐに成立しないと、せっかくのチャンスを逃してしまうことになりかねません。
そのため、取引したい銘柄の流動性の高さは、スキャルピングを行う上での必須条件と言えるでしょう。
出来高(できだか)とは?
「出来高(できだか)」とは、一定の期間内(例えば1日間)に、その株がどれくらい売買されたか、その成立した株の総数を表すものです。
出来高が多い銘柄というのは、それだけ多くの投資家がその株に注目し、活発に取引を行っている証拠です。
一般的に、出来高が多い銘柄は流動性も高い傾向にあります。
株価チャートを見ていると、下の方に棒グラフで表示されていることが多いのが、この出来高です。
なぜスキャルピングに重要か?
出来高が多く、流動性が高い銘柄を選ぶことには、スキャルピングにおいていくつかのメリットがあります。
まず、約定の確実性が高まります。
多くの買い手と売り手がいれば、成行注文を出したとしても、比較的安定した価格で取引が成立しやすくなります。
また、一般的にはスプレッド(買値と売値の差)も狭くなる傾向があります。
(ただし、ミニ株の場合は証券会社との相対取引になることが多く、この限りではない場合もありますので注意が必要です。)
次に、値動きの期待が持てます。
多くの参加者がいるということは、それだけ細かな値動きが生まれやすく、スキャルピングで狙えるような小さな利益のチャンスが増える可能性があります。
注意点として、ミニ株の取引は、多くの場合、証券会社と投資家が直接取引を行う「相対取引」となります。
そのため、その銘柄自体の市場での流動性が非常に高かったとしても、ミニ株としての取引条件(例えばスプレッドの幅や、約定する価格の決定方法など)は、最終的には各証券会社のルールに依存します。
しかしながら、元となる株式の流動性があまりにも低いと、証券会社もそのミニ株の適切な価格を提示しにくくなるため、やはり元の株式の流動性は重要な要素となります。
チェック方法
では、どのようにして流動性や出来高をチェックすれば良いのでしょうか。
証券会社の提供する取引ツールや、株式情報サイトなどで、個別銘柄の「出来高ランキング」や「売買代金ランキング」といった情報を見ることが出来ます。
これらのランキングで上位に来るような、活発に取引されている銘柄を選ぶのが、一つの目安となるでしょう。
また、普段からテレビのニュースや新聞などでよく名前を目にするような、多くの人が知っている大企業の株は、一般的に出来高が多い傾向にあります。



4.2 値動き(ボラティリティ)の基準
スキャルピングで利益を出すには、株価が適度に動いてくれないと困ります。
この「値動きの大きさ」を示すボラティリティについて、どの程度が目安になるのかを解説します。
ボラティリティとは?
「ボラティリティ」とは、株価の値動きの激しさ、つまり価格の変動率がどれくらい大きいか小さいかを表す言葉です。
ボラティリティが高い銘柄は、株価が短期間に大きく上がったり下がったりしやすい傾向があります。
逆に、ボラティリティが低い銘柄は、株価の動きが比較的小さく、穏やかな値動きをすることが多いです。
スキャルピングにおけるボラティリティの重要性
スキャルピングを行う上で、このボラティリティは非常に重要な要素となります。
まず、利益機会の創出という点で、ある程度のボラティリティが必要です。
スキャルピングはごく小さな値幅を狙う取引なので、株価が全く動かない状態では、利益を得るチャンスそのものが生まれません。
適度なボラティリティがあることで、細かな売買の機会が生まれるのです。
しかし一方で、過度なボラティリティはリスクにも繋がります。
ボラティリティが高すぎると、株価が一瞬のうちに大きく自分にとって不利な方向に動いてしまうリスクも高まります。
特に、損切り(損失を確定させること)の判断が遅れてしまうと、大きな損失につながる可能性があります。
「ミニ株 スキャルピング」では、ほんの数ティック(株価が動く最小の変動単位のこと)の動きを狙うことになります。
そのため、適度な値動きがある銘柄を選ぶことが望ましいと言えます。
ボラティリティの目安
では、どの程度のボラティリティがスキャルピングに適しているのでしょうか。
残念ながら、「ボラティリティが何%なら良い」と一概に言うのは難しいです。
なぜなら、株価の水準によって、同じ値幅の動きでもボラティリティのパーセンテージは変わってくるからです。
例えば、株価100円の株が10円動くのと、株価1000円の株が10円動くのでは、値動きの幅は同じでも、変動率は大きく異なります。
初心者の方は、まずは日経平均株価に採用されているような大型株や、自分が普段からよく名前を聞いたり、製品を使ったりしているような、よく知っている企業の株の中から、比較的よく株価が動いていると感じる銘柄から試してみるのが良いでしょう。
極端に値動きがない銘柄や、逆に一部の投機家によって価格が操作されているような「仕手株(してかぶ)」のように、過度に投機的で値動きが荒すぎる銘柄は、最初のうちは避けるのが無難です。
証券会社の取引ツールなどで見られる株価チャートで、1分足や5分足といった短い時間軸のチャートを見て、株価が細かく上下に動いているかどうかを確認するのも、一つの判断材料になります。
注意点
ボラティリティは、常に一定ではありません。
市場全体の状況(例えば、世界的に大きなニュースがあった時など)や、その銘柄に関する個別のニュース(例えば、新しい製品の発表や業績の発表など)によって、日々変動します。
一般的な初心者向けの資産運用では、リスクを抑えるためにボラティリティが低い(値動きが穏やかな)ものが推奨されることもありますが、スキャルピングの場合は、利益を得る機会を確保するために、ある程度の値動きが必要となる点を理解しておきましょう。



4.3 ニュース・イベント影響の見極め
株価は、会社の業績発表や経済ニュース、世界的な出来事など、さまざまな情報に影響を受けて動きます。
スキャルピングを行う上で、これらのニュースやイベントとどう向き合えば良いかを解説します。
ニュース・イベントの種類
株価に影響を与える可能性のあるニュースやイベントには、様々なものがあります。
- 企業関連のニュース:
- 企業の決算発表(売上や利益がどうだったかなど)
- 新しい製品や技術の発表
- 他の会社との業務提携や合併の発表
- 残念ながら、不祥事や事故などのネガティブなニュース
- 経済指標の発表:
- 日本国内や海外の重要な経済指標の発表。
- 例えば、国の経済成長率(GDP)、失業率、物価の上がり下がりを示す消費者物価指数などがあります。
- 特に、アメリカの雇用統計などは、世界の株式市場全体に大きな影響を与えることがあります。
- 金融政策の変更:
- 日本銀行やアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)など、各国の中央銀行が行う金融政策の決定会合の結果。
- 例えば、政策金利の変更(利上げや利下げ)などがこれにあたります。
- 政治・地政学リスク:
- 国内外の選挙の結果
- 国際的な紛争や緊張の高まり
- テロ事件など
スキャルピングとニュースの関係
スキャルピングは非常に短い期間の取引を行うため、基本的な判断材料は、過去の株価の動きを分析する「テクニカル分析」(チャートの形などから判断する方法)が中心になります。
しかし、ニュースやイベントの影響を全く無視できるわけではありません。
- 発表直後の急変動に注意:大きなニュースや重要な経済指標が発表された直後は、株価が非常に大きく、そして予測が難しい動きをすることがよくあります。このような時は、スプレッド(買値と売値の差)が普段よりも大きく開いたり、注文が思った通りに成立しなかったり(約定が不安定になる)することもあります。株式投資の初心者のうちは、特に重要な経済指標の発表時刻の前後など、相場が荒れそうな時間帯は、あえて取引を避けるのが賢明な判断と言えるでしょう。
- 予期せぬ変動リスクは比較的低い?一方で、スキャルピングは株を保有している時間が極めて短いため、例えば大きなニュースが突然流れて市場全体がパニックになるような状況に、長時間巻き込まれるリスクは、長期投資に比べて低いとも言えます。なぜなら、何か異変を感じたらすぐに取引を手仕舞う(決済する)のがスキャルピングの基本だからです。
ニュースの活用(上級者向け、初心者は注意が必要)
特定のニュースに対して市場が過去にどのように反応したか、そのパターンを研究し、短期的な値動きを予測して取引を行うという高度な手法も存在します。
しかし、これには深い知識と豊富な経験、そして高度な判断力が必要です。
初心者の方は、まずは大きなニュースが出た時は「下手に手を出さず、様子を見る」あるいは「取引を一旦控える」という慎重な姿勢を持つことが大切です。
情報収集について
経済ニュースの専門サイトや、証券会社が配信するニュース、あるいはSNSなどでも、様々な情報を得ることは出来ます。
しかし、その情報の速さや正確さを見極めること、そしてその情報が実際の株価にどのように影響するかを判断することは、非常に難しい作業です。
スキャルピングにおいては、情報そのものよりも、情報が出た後の「市場の実際の反応(つまり、株価がどう動いたか)」を、株価チャートで見て判断することの方が多くなります。
重要なのは、大きなイベントがある時間帯を事前に把握しておき、その時間帯の取引は避けるという自衛策です。



5. スキャルピング戦略の作り方
ミニ株スキャルピングで利益を目指すには、自分なりの「戦略」が必要です。いつ買って、いつ売るのか、その判断基準を明確にすることが大切です。この章では、テクニカル指標やローソク足といった分析ツールを使い、具体的なエントリー(買い)とエグジット(売り)のルールを作る方法を、初心者にも分かりやすく解説します。
5.1 テクニカル指標(移動平均・RSIほか)
「テクニカル指標」は、過去の株価の動きを分析して、将来の値動きを予測するのに役立つツールです。
スキャルピングでよく使われる代表的な指標とその見方を簡単に紹介します。
テクニカル指標とは?
テクニカル指標とは、過去の株価や出来高(どれくらい取引されたか)などのデータをもとにして、統計的な計算式を使って作られたグラフや数値のことです。
株価チャートの上に表示させて、株を買ったり売ったりするタイミングを判断するための材料の一つとして使われます。
たくさんの種類がありますが、ここでは特に代表的で初心者にも比較的わかりやすいものを紹介します。
移動平均線(いどうへいきんせん)
移動平均線は、最もポピュラーで基本的なテクニカル指標の一つです。
これは、一定期間の株価の終値(その日の最後の値段)の平均値を計算し、それらを線で結んでグラフにしたものです。
例えば、「5日移動平均線」であれば、過去5日間の終値の平均値を毎日計算し、それを繋いでいくことで線が描かれます。
- 見方・使い方:
- 移動平均線の線の向きを見ることで、株価のトレンド(方向性)が分かります。 線が上向きなら上昇トレンド(株価が上がりやすい傾向)、下向きなら下落トレンド(株価が下がりやすい傾向)、横ばいなら方向感のない保ち合い(レンジ相場)と判断出来ます。
- 株価が移動平均線を下から上に突き抜けたら「買いのサイン」、逆に上から下に突き抜けたら「売りのサイン」とされることがあります。 前者を特に「ゴールデンクロス」、後者を「デッドクロス」と呼ぶこともあります(これは通常、短期の移動平均線と長期の移動平均線のクロスを指します)。
- よく使われる方法として、期間の短い移動平均線(例えば5日線など。これを短期線と言います)と、期間の長い移動平均線(例えば25日線など。これを長期線と言います)の2本をチャートに表示させます。 そして、短期線が長期線を下から上に突き抜けることを「ゴールデンクロス」として買いのサイン、逆に短期線が長期線を上から下に突き抜けることを「デッドクロス」として売りのサインと判断する方法があります。
- スキャルピングでの設定例: スキャルピングでは、1分足チャートや5分足チャートといった非常に短い時間軸のチャートを使います。 そのため、移動平均線の期間設定も、5期間、10期間、20期間といった短いものを使うのが一般的です。 これにより、ごく短期間の値動きの方向性を捉えようとします。
RSI(アールエスアイ:相対力指数)
RSIは、「買われすぎ」なのか「売られすぎ」なのか、相場の過熱感を見るのに役立つ「オシレーター系指標」と呼ばれる種類の一つです。
RSIの数値は0%から100%の範囲で動き、一般的には、数値が70%以上になると「買われすぎ」、30%以下になると「売られすぎ」と判断されます。
- 見方・使い方:
- RSIが70%を超えてきたら、そろそろ株価が下がるかもしれない(売りのタイミングを検討)。
- RSIが30%を割れてきたら、そろそろ株価が上がるかもしれない(買いのタイミングを検討)。
- ただし、注意点として、非常に強いトレンド(上昇が続く、または下落が続く)が出ている時には、RSIが70%以上にずっと張り付いたまま上がり続けたり、逆に30%以下にずっと張り付いたまま下がり続けたりすることがあります。 これを「ダマシ」と言い、RSIのサイン通りに動かないこともあるので注意が必要です。
- スキャルピングでの設定例: RSIは一般的には期間14で使われることが多いです。 これはRSIを開発した人が推奨した設定です。 スキャルピングでは、より値動きへの反応を早くするために、この期間を短く設定する(例えば9期間など)こともあります。 ただし、期間を短くすると、その分「ダマシ」のサインも増える傾向があるので、バランスが大切です。
他の指標について
テクニカル指標には、他にも「ボリンジャーバンド」「MACD(マックディー)」「ストキャスティクス」など、本当にたくさんの種類があります。
しかし、株式投資の初心者の方が、いきなり多くの指標を使いこなそうとするのは難しいでしょう。
まずは、ここで紹介した移動平均線やRSIといった、比較的シンプルで基本的なものから、その見方や使い方をじっくりと覚えていくのが良いでしょう。
「ミニ株 スキャルピング」では、これらのテクニカル指標を参考にしながら、ごく短期間でのエントリーポイント(買いのタイミング)やエグジットポイント(売りのタイミング)を探していくことになります。
多くの情報を詰め込みすぎず、まずは一つか二つの指標に絞って、その動きをじっくり観察することから始めるのが、初心者にとっては効果的な学習方法と言えるでしょう。



5.2 ローソク足パターンの活用
株価チャートの基本である「ローソク足」。
1本1本の形や、複数本が並んだ時のパターンから、相場の勢いや転換点などを読み取ることができます。
スキャルピングに役立つ基本的なローソク足の見方を紹介します。
ローソク足の基本
ローソク足は、株価の動きを視覚的に分かりやすく表現したもので、日本の伝統的なチャート分析方法です。
1本のローソク足は、ある一定の期間(例えば、スキャルピングでよく使う1分間や5分間、あるいは1日など)の株価の始値(はじめね:その期間の最初に付いた値段)、終値(おわりね:その期間の最後に付いた値段)、高値(たかね:その期間で一番高かった値段)、安値(やすね:その期間で一番安かった値段)という4つの価格情報(これを「四本値(よんほんね)」と言います)を一本の形にまとめて表しています。
- 始値よりも終値が高い場合(つまり、期間中に株価が上がった場合)を「陽線(ようせん)」と言い、通常は赤色や白色で表示されます。
- 始値よりも終値が安い場合(つまり、期間中に株価が下がった場合)を「陰線(いんせん)」と言い、通常は青色や黒色で表示されます。
- ローソク足は、始値と終値の間の太い四角い部分である「実体(じったい)」と、実体から高値や安値まで伸びる細い線である「ヒゲ(上ヒゲ、下ヒゲ)」で構成されています。
スキャルピングで注目したいローソク足の形(例)
短い時間軸で取引するスキャルピングでは、1本1本のローソク足の形が、その瞬間の市場の勢いを教えてくれることがあります。
- 大陽線(だいようせん) / 大陰線(だいいんせん)実体部分が非常に長い陽線や陰線のことです。大陽線は非常に強い買いの勢いを示し、大陰線は非常に強い売りの勢いを示していると考えられます。これらのローソク足が、相場の安いところで出現したのか、高いところで出現したのかによっても、その後の値動きの解釈が変わることがあります。
- 下ヒゲ陽線 / 上ヒゲ陰線
- 下ヒゲ陽線は、ローソク足の実体は陽線で、その下に長いヒゲ(下ヒゲ)が出ている形です。 これは、期間中に一旦株価が大きく下がったものの、その後買い戻されて価格が上昇し、始値よりも高い値段で終わったことを示します。 特に株価が下落している局面でこの形が出ると、下値での買い支えが強いことを示唆し、反発上昇のサインとなることがあります。
- 上ヒゲ陰線は、ローソク足の実体は陰線で、その上に長いヒゲ(上ヒゲ)が出ている形です。 これは、期間中に一旦株価が大きく上がったものの、その後売り圧力に押されて価格が下落し、始値よりも安い値段で終わったことを示します。 特に株価が上昇している局面でこの形が出ると、上値が重いことを示唆し、反落のサインとなることがあります。
- コマ(小陽線・小陰線)実体部分もヒゲも短い、小さなローソク足のことです。これは、相場に方向感がなく、買い手と売り手の力が拮抗している「迷い」の状態を示していると考えられます。トレンドが出ていない時によく現れる形で、このような時は無理に取引をせず、様子を見るのも一つの戦略です。
ローソク足の組み合わせパターン(例)
ローソク足は、1本だけでなく、複数本が連続して出現した時の形(パターン)からも、相場の状況を読み取ることが出来ます。
- 三兵(さんぺい)陽線が3本連続して出現するパターンを「赤三兵(あかさんぺい)」、陰線が3本連続して出現するパターンを「黒三兵(くろさんぺい)」と言います。赤三兵は強い上昇のサイン、黒三兵は強い下落のサインとされることがあります。スキャルピングでは、この連続した勢いに乗って売買する戦略が考えられます。
- 包み線(つつみせん) / はらみ線
- 包み線は、前の期間のローソク足を、次の期間の大きなローソク足が完全に包み込んでしまうような形です。 例えば、陽線の後にそれを包み込むような大きな陰線が出現すると下落への転換、逆に陰線の後にそれを包み込むような大きな陽線が出現すると上昇への転換のサインとされることがあります。
- はらみ線は、前の期間のローソク足の実体の中に、次の期間の小さなローソク足がすっぽりと収まってしまうような形です。 これは、それまでの相場の勢いが弱まってきていることを示唆し、トレンド転換の可能性を示すサインとされることがあります。
スキャルピングでの活用
スキャルピングでは、1分足や5分足といった非常に短い時間軸のチャート上で、これらのローソク足の形や連続したパターンを観察します。
そして、ごく短期的なエントリー(買いや新規売り)のタイミングや、エグジット(決済)のタイミングを判断する材料とします。
例えば、ローソク足が1本か2本動いただけで決済する、といった超短期の判断にも使われます。
ローソク足の分析は、先ほど紹介した移動平均線やRSIといった他のテクニカル指標と組み合わせて使うことで、より判断の精度を高めることが期待出来ます。
スキャルピングのように瞬時の判断が求められる取引では、ローソク足が示す微細なサインを読み取る能力が重要になるのです。



5.3 エントリー・エグジットルール設定
スキャルピングで感情に流されずに一貫した取引をするためには、「いつ買うか(エントリー)」「いつ売るか(エグジット)」のルールを事前に決めておくことが不可欠です。
具体的なルールの設定方法について見ていきましょう。
ルール設定の重要性
なぜ、取引のルールを事前に決めておくことがそんなに重要なのでしょうか。
それは、感情的な取引を防ぎ、規律あるトレードを行うためです。
例えば、損失が出てしまった時に「何とか取り返そう」と焦って無謀な取引をしてしまったり、少し利益が出た時に「もっと儲かるかも」と欲張って売り時を逃してしまったりするのは、よくある失敗パターンです。
事前にルールを決めておけば、このような感情に左右されることなく、冷静な判断を保ちやすくなります。
また、判断に迷う時間を減らし、迅速な行動を可能にするためにもルールは役立ちます。
スキャルピングでは、一瞬の判断の遅れが利益を逃したり、損失を拡大させたりすることにも繋がりかねません。
さらに、ルールに基づいて取引を行うことで、その結果を客観的に振り返り、戦略のどこが良くてどこが悪かったのかを分析し、改善に繋げることが出来ます。
エントリー(買い/新規売り)ルールの例
エントリー、つまり株を新たに買ったり、信用取引で新規に売ったりするタイミングのルールは、具体的にどのように設定すれば良いのでしょうか。
以下に簡単な例を挙げます。
- 例1(移動平均線とRSIを使った買いルール):
- 5分足チャートで、短期の移動平均線(例: 5期間線)が中期の移動平均線(例: 20期間線)を下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス」が発生した。
- かつ、RSI(相対力指数)の数値が50%を上回っている。
- これらの条件が揃ったら、買いでエントリーする。
- 例2(サポートラインとローソク足を使った買いルール):
- 1分足チャートで、過去に何度も株価が反発している価格帯(これを「サポートライン」または「支持線」と言います)まで現在の株価が下落してきた。
- そして、そのサポートライン付近で、下に長いヒゲをつけた陽線(下ヒゲ陽線)が出現した。
- これらの条件が揃ったら、反発を期待して買いでエントリーする。
これらのルールはあくまで一例です。
大切なのは、自分で様々な情報を参考にしながらルールを考え、過去のチャートなどでそのルールが有効かどうかを検証(これを「バックテスト」と言います)し、自分にとって分かりやすく、実際に実行可能なものに落とし込むことです。
エグジット(決済)ルールの設定
エントリーしたら、次はいつその株を手放すか、つまりエグジットのルールも決めなければなりません。
エグジットのルールは、主に「利益を確定させるためのルール(利確)」と「損失を限定させるためのルール(損切り)」の二つがあります。
特に損切りルールは、大きな失敗を防ぎ、市場で長く取引を続けていくために非常に重要です。
(1) 利確幅・損切り幅の目安
スキャルピングでは、利益を確定する幅(利確幅)も、損失を確定させる幅(損切り幅)も、非常に小さく設定するのが一般的です。
- スキャルピングの利確・損切り:具体的には、数ティックから十数ティック程度の値動きを狙います。ティックとは、株価が動く最小の変動単位のことです。例えば、株価が1000円の銘柄で、1ティックが1円だとすると、数円から10数円程度の値動きで利益を確定したり、損失を確定したりするイメージです。FX(外国為替証拠金取引)のスキャルピングの例では、数pips(ピップス:FXでの最小変動単位)で利確や損切りを行うことがよくあります。
- 利確幅の目安:スキャルピングでは、大きな利益を一度に狙うのではなく、小さな利益でも確実に積み重ねていくことを目指します。欲張らずに、「〇円株価が上がったら利益を確定する」とか、「RSIの数値が70%に達したら利益を確定する」といったように、事前に具体的なルールを決めておきましょう。
- 損切り幅の目安:これは、スキャルピング戦略において最も重要な項目の一つと言っても過言ではありません。損失をいかに小さく抑えるかが、スキャルピングで長期的に成果を出すための鍵となります。一般的には、利確幅よりも損切り幅を小さく設定するのが良いとされています(これを「損小利大(そんしょうりだい)」の原則と言います)。例えば、利確目標がプラス10円なら、損切りはマイナス5円で実行する、といった具合です。ある情報では、利確幅の半分以下に損切り幅を設定することが推奨されています。「エントリーした価格から〇円株価が下がったら損切りする」とか、「重要な支持線を明確に割り込んだら損切りする」など、機械的に実行出来る明確なルールを設定することが不可欠です。
- ミニ株取引の注意点(再掲):ここで改めて注意しておきたいのは、多くのミニ株サービスでは逆指値注文(指定した価格になったら自動的に損切り注文を出す機能)が使えないという点です。そのため、損切りは常に自分で株価チャートを見ながら、手動で成行注文や指値注文(楽天証券の「かぶミニ」など一部サービスで利用可能な場合)を出して行う必要があります。これは、精神的にも、また操作の正確性の面でも、大きな負担となる可能性があります。特に成行注文しか使えない場合は、損切り注文を出した際に、自分が意図した価格よりも不利な価格で約定してしまう「スリッページ」のリスクも考慮に入れなければなりません。楽天証券の「かぶミニ」で指値注文を使って損切りを試みる場合でも、その価格で必ず約定するとは限らない可能性も頭に入れておく必要があります。この手動での損切りは、スキャルピングの難易度を上げる大きな要因の一つです。
- 損切りルールの徹底:「もう少し待てば、株価が戻ってくるかもしれない…」という淡い期待は、スキャルピングにおいては禁物です。事前に決めた損切りルールを、感情を排して淡々と実行する訓練が絶対に必要です。
(2) ポジションサイズ計算
ポジションサイズとは、1回の取引で、どれくらいの株数を買ったり売ったりするのか、その量のことです。
- なぜ重要か?ポジションサイズの決定は、資金管理の観点から非常に重要です。1回の取引で許容出来る最大の損失額を自分でコントロールし、たった一度の失敗で投資資金の大部分を失ってしまうような大きなダメージを負わないようにするために、ポジションサイズの管理は不可欠です。
- 計算方法の考え方(初心者向けシンプル版):では、どのようにポジションサイズを考えれば良いのでしょうか。初心者向けの簡単な考え方を紹介します。
- ステップ1: 1回の取引で許容できる損失額を決める。まず、自分の持っている投資資金全体のうち、1回の取引で失っても良いと考える金額の上限を決めます。例えば、投資資金が10万円あるとして、1回の取引での損失は最大でも資金の1%(この場合は1,000円)まで、あるいは2%(この場合は2,000円)まで、といった具体的なルールを設定します(「2%ルール」などが有名です)。
- ステップ2: 損切り幅(1株あたりの損失許容額)を決める。次に、エントリーした価格からどれくらい株価が逆方向に動いたら損切りするか、1株あたりの損失許容額(損切り幅)を決めます。例えば、エントリー価格から5円下がったら損切りすると決めます。
- ステップ3: ポジションサイズ(株数)を計算する。最後に、ステップ1で決めた「1回の取引で許容できる損失額」を、ステップ2で決めた「1株あたりの損切り幅」で割ることで、その取引で持つことが出来るおおよその株数(ポジションサイズ)を計算出来ます。計算式: ポジションサイズ = 許容損失額 ÷ 1株あたりの損切り幅例: 許容損失額が1,000円で、1株あたりの損切り幅が5円の場合 → 1,000円 ÷ 5円/株 = 200株。ただし、これはあくまで計算上の目安です。ミニ株の場合は1株単位で調整出来ますが、この計算結果が通常の単元株数(例えば100株)を超えないように、また、自分の持っている資金で実際に買える範囲内である必要があります。実際には、ミニ株は1株から購入出来るため、「最大で何株まで」という形で考えることになります。
- ミニ株での実際:ミニ株は1株単位で細かく株数を調整出来るため、少額の許容損失額に合わせて、非常に小さなポジションを持つことが可能です。例えば、1回の取引での許容損失額を100円と決め、1株あたりの損切り幅を5円と設定したならば、ポジションサイズは20株(100円 ÷ 5円/株)といった具体的な株数を計算し、その範囲内で取引を行うことが出来ます。このように、ミニ株の柔軟性は、初心者の方がリスク管理のルール(例えば1%ルールや2%ルール)を実践する上で、大きな助けとなります。
- 注意点:常に全く同じポジションサイズで取引する必要はありませんが、その時の感情でコロコロと株数を変えるのは避けるべきです。最初のうちは、ごくごく小さなポジションサイズから始めて、取引に慣れてきたら、自分のリスク許容度や戦略に合わせて徐々に調整していくことを検討しましょう。



6. 実践ステップ:初めてのミニ株スキャルピング
ミニ株スキャルピングを実際に始めるための具体的なステップを、取引ツールの準備から注文方法、そして大切な振り返りまで、一つ一つ丁寧に解説します。このセクションを読めば、初心者の方でも安心してミニ株スキャルピングの第一歩を踏み出せるでしょう。
6.1 取引ツールの初期設定
株の取引を始めるには、まず証券会社の取引ツールを使えるようにする必要があります。
ここでは、口座を開設した後の最初のステップとして、ツールの基本的な設定について見ていきましょう。
口座開設後の流れ
証券会社の口座開設が無事に終わると、多くの場合、ログインIDや仮のパスワードが郵送やメールで送られてきます。
まずは、その情報を使って証券会社のウェブサイトや取引アプリにログインしてみましょう。
最初のログイン時には、セキュリティのために仮のパスワードを自分専用の本パスワードに変更するよう求められることが一般的です。
このパスワードは、誕生日や電話番号など、他の人に推測されやすいものは避け、アルファベットの大文字・小文字、数字、記号などを組み合わせた、複雑で安全なものに設定することが大切です。
次に、取引暗証番号の設定が必要になることが多いです。
これは、実際に株の注文を出したり、口座からお金を引き出したりする際に使う、ログインパスワードとは別の暗証番号です。
こちらも、他人に知られないよう大切に管理しましょう。
その後、あなたの氏名や住所などの個人情報が正しく登録されているか確認し、必要であれば修正します。
また、勤務先に関する情報の登録も求められます。
これは、あなたがもし上場企業やその関連会社にお勤めの場合、インサイダー取引(会社の内部情報を使って不公平な取引をすること)を防ぐために必要な手続きです。
正直に、正確な情報を登録することが、公正な市場を守るためにも求められます。
日本にお住まいであれば日本国籍であることの確認、もし外国籍の方であればその情報を登録する項目もあります。
そして、マイナンバー(個人番号)の登録も必要です。
これは、税金の処理などで証券会社が国に報告するために使われます。
これらの初期設定は、少し手間がかかるかもしれませんが、安全でスムーズな取引のためには欠かせないステップです。
取引ツールの画面に慣れよう
初期設定が終わったら、いよいよ取引ツールを使ってみましょう。
証券会社によって、パソコン用のウェブサイトやスマートフォン用のアプリなど、いくつかの取引ツールが用意されています。
最初はどの画面に何があるのか戸惑うかもしれませんが、まずは基本的な機能の場所を覚えていきましょう。
例えば、以下のような機能は多くのツールに共通してあります。
- 銘柄検索: 取引したい会社の名前や銘柄コード(会社ごとに割り振られた4桁の数字)を入力して株を探す機能です。
- 株価情報・気配値: 今現在の株価や、いくらで買いたい人・売りたい人がいるか(気配値)を見ることができます。
- チャート: 株価の過去の値動きをグラフで表示する機能です。様々な分析に使います。
- 注文画面: 実際に株を買ったり売ったりする注文を出す画面です。
ミニ株(単元未満株)を取引したい場合は、通常の株式取引の画面とは別に、専用の注文画面が用意されていることが多いです。
例えば、SBI証券なら「単元未満株」や「S株」といったボタンやメニュー、楽天証券なら「かぶミニ(単元未満)」というタブを探してみましょう。
証券会社ごとにツールのデザインや操作方法は異なります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、証券会社のウェブサイトにあるヘルプページや使い方ガイドを読んだり、まずは少額で実際に操作してみたりしながら、少しずつ慣れていくことが大切です。
特に、ミニ株 スキャルピング を行う上で、楽天証券の「かぶミニ」のようにリアルタイムで価格が動き、注文が出せるサービスを利用する場合には、注文画面の操作に素早く慣れておくことが、チャンスを逃さないために重要になります。



6.2 注文から決済までの流れ
株を買って、それが自分のものになり、そして売却してお金に変わるまでには、いくつかのステップがあります。
ミニ株の注文から決済完了までの基本的な流れを、分かりやすく解説します。
(1) 証券口座への入金
まず、株を買うための元手となるお金を、あなたが証券会社に開設した口座に入金する必要があります。
入金方法には、銀行の窓口やATMから振り込む方法の他に、インターネットバンキングを利用したクイック入金サービスなどがあります。
クイック入金は、提携している金融機関のインターネットバンキング口座を持っていれば、パソコンやスマートフォンから24時間いつでも(メンテナンス時間を除く)手数料無料で、ほぼリアルタイムに証券口座へ資金を移動できる便利なサービスです。
多くのネット証券で対応しているので、利用できる場合は活用すると良いでしょう。
(2) 銘柄を選んで注文を出す
証券口座にお金が入ったら、いよいよ株の注文です。
まず、どの会社の株を買うか(銘柄選択)を決めます。
銘柄が決まったら、次に注文方法を選びます。
ミニ株(単元未満株)の取引では、主に以下の二つの注文方法があります。
- 成行(なりゆき)注文:「いくらでもいいから、今の市場価格で買いたい(または売りたい)」という注文方法です。価格を指定しないため、確実に売買が成立しやすいというメリットがありますが、予期せぬ価格で約定してしまうリスクもあります。SBI証券の「S株」、マネックス証券の「ワン株」、auカブコム証券の「プチ株」など、多くのミニ株サービスでは、基本的にこの成行注文のみで取引が行われます。
- 指値(さしね)注文:「この値段になったら買いたい(または売りたい)」と、自分で価格を指定する注文方法です。希望する価格でなければ約定しないため、不利な価格での取引を防ぐことができますが、指定した価格に株価が届かなければ、いつまでも注文が成立しないこともあります。楽天証券の「かぶミニ」では、リアルタイム取引の際にこの指値注文を利用することが可能です。これは、ミニ株 スキャルピング のように特定の価格での売買を狙う場合に非常に有効な手段となります。
次に、何株買うか(株数)を指定します。ミニ株は1株から購入できるのが大きな特徴です。
最後に、注文内容(銘柄名、注文方法、株数など)をしっかりと確認し、間違いがなければ発注ボタンを押します。
(3) 約定(やくじょう)の確認
出した注文が取引所で成立すること(つまり、買い注文なら株が買えたこと、売り注文なら株が売れたこと)を「約定」と言います。
注文が約定すると、証券会社の取引ツールやメールなどで通知が来ることが一般的です。
ミニ株の約定タイミングは、利用する証券会社やサービスによって大きく異なる点に注意が必要です。
- SBI証券「S株」の場合:リアルタイムでの約定ではありません。注文を受け付けた時間帯によって、1日に複数回設定されている特定のタイミング(例えば、午前中の注文なら当日の後場の始値、午後の注文なら翌営業日の前場の始値など)で約定します。
- 楽天証券「かぶミニ」の場合:二つの約定タイミングがあります。一つは「リアルタイム取引」で、東京証券取引所が開いている時間帯(平日の9:00~11:30、12:30~15:00)であれば、注文を出すとすぐに市場の状況に応じて約定します。もう一つは「寄付取引(よりつきとりひき)」で、これは前営業日の取引終了後から当日朝8時50分頃までに出した注文が、当日の前場(午前中の取引時間)の最初の値段(始値)で約定するものです。
- マネックス証券「ワン株」の場合:平日の午前11時30分までに出した注文は、原則として当日の後場(午後の取引時間)の始値で約定します。それ以降の注文は、翌営業日の後場の始値での約定となります。
- auカブコム証券「プチ株」の場合:注文を受け付けた時間帯によって、前場の始値または後場の始値で約定します。例えば、前営業日の23:01から当日の10:00までの注文は当日の後場の始値で、当日の10:01から23:00までの注文は翌営業日の前場の始値で約定、といった具合です。
このように、楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引を除けば、多くのミニ株サービスでは注文を出してから実際に約定するまでに時間が空くことを理解しておく必要があります。
スキャルピングのように瞬時の判断が求められる取引では、このタイムラグが不利に働くこともあります。
(4) 決済(けっさい)と受渡(うけわたし)
株の売買が約定した後、実際に株式の所有権とお金のやり取りが完了することを「決済」または「受渡」と言います。
日本の株式市場では、この受渡は通常、約定した日を含めて3営業日目に行われます。
例えば、月曜日に株を買う注文が約定した場合、その株が正式にあなたのものとして証券口座に記録され、代金が口座から引き落とされるのは、水曜日(月曜日を1営業日目として、火曜日が2営業日目、水曜日が3営業日目)となります。
株を売った場合も同様で、売却代金が口座に入金されるのは3営業日目です。
ミニ株 スキャルピング を行う場合、特に楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引を利用すると、(2)注文から(3)約定までが非常にスピーディーに進むため、短時間での売買が可能になります。
しかし、他の多くのミニ株サービスでは約定までに時間がかかるため、その点を考慮した取引戦略が必要になります。



6.3 トレード日誌で検証・改善
取引に少し慣れてきたら、ぜひ「トレード日誌」をつけてみましょう。
自分の取引を記録し、客観的に振り返ることは、上達への一番の近道です。
なぜトレード日誌が大切なのか
トレード日誌をつけることには、たくさんのメリットがあります。
まず、自分の取引パターンを客観的に把握できるようになります。
どんな時に利益を出しやすく、どんな時に損失を出しやすいのか、得意な相場の状況や苦手な銘柄などが見えてくるかもしれません。
次に、成功した取引や失敗した取引の原因を具体的に分析し、それを次の取引に活かすことができます。
なぜあの時買ったのか、なぜあの時売ったのか、その判断は正しかったのか、といったことを冷静に振り返ることで、改善点が見つかります。
また、取引中は「もっと上がるはず」「損を取り返したい」といった感情に左右されがちですが、日誌を書くことで、感情的な取引を反省し、より冷静な判断ができるように訓練することにも繋がります。
そして、自分で決めた取引ルール(例えば、「株価が〇〇円になったら損切りする」など)を、実際に守れているかどうかを確認する良い機会にもなります。
これらの記録と分析を継続することで、徐々に自分だけの「勝ちパターン」を見つけ出し、取引の精度を高めていくことができるでしょう。
トレード日誌に記録する項目(例)
何を書けばいいか分からないという方のために、一般的な記録項目を以下に示します。
最初は全てを完璧に書こうとしなくても大丈夫です。自分にとって必要だと思う項目から始めてみましょう。
記録項目 | 具体的な内容 |
日付・時間 | 取引を行った正確な日時(エントリー時とエグジット時) |
銘柄名・コード | 取引した会社の名前と4桁の銘柄コード |
売買の別 | 「買い」で入ったか、「売り」で入ったか(決済の場合はその旨も) |
株数 | 取引した株の数 |
エントリー価格 | 株を買った(または信用取引で売った)時の価格 |
エグジット価格 | 株を売った(または信用取引で買い戻した)時の価格 |
損益(金額・率) | その取引でいくら儲かったか、または損したか(手数料を引いた後の金額と、投資額に対する割合) |
エントリー根拠 | なぜこのタイミングで、この銘柄を、この方向(買いor売り)で取引しようと思ったかの理由 |
エグジット根拠 | なぜこのタイミングで決済しようと思ったかの理由 |
その時の感情 | 取引中に感じていたこと(例:冷静だった、焦っていた、期待しすぎていた、など) |
反省点・改善点 | その取引から学んだこと、次に活かせること、もし違う判断をしていたらどうだったか、など |
表形式で記録すると、後で見返したときに比較しやすくなります。
トレード日誌を続けるコツ
トレード日誌は、続けることが何よりも大切です。
完璧を目指しすぎると長続きしないので、まずは簡単なメモからでも良いので始めてみましょう。
取引ツールのチャート画面をスクリーンショット(画面コピー)して、日誌と一緒に保存しておくと、後で「どんな相場状況で取引したんだっけ?」と思い出すのに役立ちます。
毎日書くのが大変なら、取引ごと、あるいは週末にまとめて記録するなど、自分が続けやすいペースを見つけることが重要です。
ミニ株 スキャルピング のような細かい取引を繰り返す手法では、一つ一つの取引の記録と分析が特に重要になります。
たとえ小さな利益や損失であっても、その積み重ねが結果に繋がるため、日誌を通じて自分の取引を客観的に見つめ直し、戦略を磨いていきましょう。



7. リスク管理とメンタルコントロール
株式投資には、残念ながら「絶対儲かる」という保証はありません。大切な自分のお金を守りながら、冷静に取引を続けるためには、「リスク管理」と「メンタルコントロール」が車の両輪のように重要です。このセクションでは、その具体的な方法を学びましょう。
7.1 資金管理の黄金比率
投資で大きな失敗を避けるために一番大切なのは、自分のお金をどう使うか、その計画をしっかり立てる「資金管理」です。
ここでは、その基本的な考え方を紹介します。
(1) 必ず「余剰資金」で投資する
まず、株式投資に使うお金は、必ず「余剰資金(よじょうしきん)」で行うようにしましょう。
余剰資金とは、毎日の生活費や、将来使う予定が決まっているお金(例えば、数年後の進学費用や、欲しいものを買うためのお金など)、そして万が一病気やケガをした時のためのお金(緊急予備資金)などを除いた、「もしなくなってしまっても、当面の生活に困らないお金」のことです。
なぜ余剰資金で投資することがそんなに大切なのでしょうか。
それは、生活に必要なお金で投資をしてしまうと、もし損失が出た場合に精神的なプレッシャーが非常に大きくなり、冷静な判断ができなくなってしまうからです。
「このお金を失ったら大変なことになる」という焦りから、普段ならしないような危険な取引をしてしまったり、損切りができずに損失を拡大させてしまったりする可能性があります。
余剰資金であれば、心に余裕を持って取引に臨むことができ、万が一損失が出たとしても、生活への影響を最小限に抑えることができます。
(2) 1回の取引で失ってもよい金額(許容損失額)を決める
次に、1回の取引で最大いくらまでなら損失を出しても大丈夫か、という「許容損失額」をあらかじめ決めておくことが重要です。
投資の世界でよく言われる目安の一つに、「2%ルール」というものがあります。
これは、「1回の取引における最大損失額を、投資資金全体の2%以内におさえる」という考え方です。
例えば、あなたが投資に使えるお金が10万円だったとします。
この場合、2%ルールに従うと、1回の取引で許容できる最大の損失額は、10万円 × 2% = 2,000円となります。
もし株価が不利な方向に動いて、含み損が2,000円に達したら、それ以上損失が拡大する前に潔く損切りをする、というルールです。
このルールを守ることで、たとえ何度か連続で負けてしまったとしても、一度の失敗で投資資金の大部分を失ってしまうような致命的なダメージを防ぐことができます。
再起不能になるリスクを減らし、長く市場に残り続けるために、この許容損失額の設定は非常に効果的です。
(3) ポジションサイズ(何株買うか)を調整する
許容損失額が決まったら、次はその金額に基づいて、実際に何株買うか(これを「ポジションサイズ」と言います)を調整します。
ポジションサイズは、許容損失額と、株価がどこまで下がったら損切りするかという「損切りライン(損切り幅)」から計算できます。
例えば、先ほどの例で、許容損失額が2,000円だとします。
そして、あなたが買おうとしている株について、「買値から1株あたり20円下がったら損切りする」と決めたとしましょう。
この場合、買える株数は最大で、2,000円 ÷ 20円/株 = 100株まで、となります。
もし100株買って、思惑通りに株価が上がれば利益が出ますが、もし予想に反して株価が20円下がってしまったら、100株 × 20円 = 2,000円の損失となり、ここで損切りをすれば、許容損失額の範囲内に収めることができます。
ミニ株は1株単位で細かく株数を調整できるため、このポジションサイズの管理が非常にしやすいというメリットがあります。
例えば、上記の計算で100株となった場合でも、資金やリスク許容度に応じて、50株や30株といったように、より小さな単位でポジションを持つことが可能です。
ミニ株 スキャルピング は少額から始められるのが大きな魅力ですが、これらの資金管理の基本ルールは、投資金額の大小に関わらず非常に重要です。
たとえ小さな金額での取引であっても、最初からこれらのルールを守る練習をしておくことで、将来、より大きな金額を扱うようになったときにも、冷静で規律ある取引ができるようになるでしょう。



7.2 連敗時のドローダウン対処法
どんなに経験を積んだトレーダーでも、取引がうまくいかず、負けが続いてしまう「連敗」は必ず経験します。
そんな時、投資資金が一時的に減ってしまうことを「ドローダウン」と言います。
このドローダウンとどう向き合うかが、長く投資を続けるための鍵です。
ドローダウンとは?
ドローダウンとは、投資資金が、過去の最も大きな金額(ピーク)からどれだけ減少したかを示す割合や金額のことです。
例えば、投資資金が10万円からスタートし、順調に増えて一時12万円まで達したとします。
しかし、その後、取引がうまくいかずに9万円まで減ってしまった場合、この時のドローダウンは、ピーク時の12万円から現在の9万円を引いた3万円、ということになります。
割合で言うと、3万円 ÷ 12万円 × 100 = 25%のドローダウンとなります。
連敗・ドローダウン時の心理状態
連敗が続いたり、ドローダウンが大きくなったりすると、誰でも精神的に辛い状態になります。
焦り、不安、怒り、自己嫌悪、自信喪失といったネガティブな感情が次々と湧き上がってくるかもしれません。
そして、最も危険なのが、「すぐに失った分を取り返したい!」という強い衝動に駆られてしまうことです。
この状態になると、普段なら絶対にしないような、根拠のない無謀な取引(これを「リベンジトレード」と言います)をしてしまいがちです。
リベンジトレードは、さらに大きな損失を招く可能性が非常に高く、ドローダウンをより深刻なものにしてしまう悪循環に陥ることが少なくありません。
ドローダウンへの具体的な対処法
では、実際に連敗してドローダウンが発生してしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
- まず取引を一時的に休む:これが最も重要で、かつ効果的な対処法の一つです。感情が高ぶっている時や、冷静な判断ができないと感じた時は、一度パソコンやスマートフォンの取引画面から離れ、頭を冷やす時間を作りましょう。散歩をする、好きな音楽を聴く、友人と話すなど、投資とは全く関係ないことをして気分転換を図るのが良いでしょう。
- 取引サイズ(株数)を小さくする:もし取引を再開する場合でも、いきなり元のサイズで取引するのではなく、まずは普段よりも小さな株数で試してみましょう。これにより、もし再び損失が出たとしてもダメージを最小限に抑えることができますし、小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に自信を取り戻すことができます。
- トレード日誌を徹底的に見返す:なぜ連敗してしまったのか、その原因を客観的に分析することが不可欠です。トレード日誌(6.3参照)を見返し、一つ一つの取引について、エントリーの根拠は正しかったか、損切りはルール通りに行えたか、市場全体の状況はどうだったか、などを詳細に検証します。自分の戦略やルールそのものに問題があったのか、それともルールを守れなかったことに原因があるのかを突き止めましょう。
- 守るべきルールを再確認する:ドローダウン時は、つい感情的になって普段守っているルールを破ってしまいがちです。自分が決めたエントリー条件、損切りライン、利食い目標などを改めて確認し、いかなる状況でもそれを守り抜くことの重要性を再認識しましょう。
- 分散投資を考える(スキャルピングとは少し異なる視点ですが一般論として):もし、特定の銘柄や特定の手法に固執しすぎていると感じるなら、投資対象や手法を分散することも一つの考え方です。ただし、これはスキャルピングのような短期集中型の取引とは少し異なるアプローチになりますので、ご自身の投資スタイルに合わせて検討しましょう。
ドローダウンから学ぶべき大切なこと
ドローダウンは、株式投資を行う上で避けては通れないものです。
大切なのは、ドローダウンを経験した時に、そこから何を学び、次にどう活かすかです。
そして、最も重要なのは、大きなドローダウンをいかに避けるかということです。
そのためには、前述した資金管理(7.1参照)のルールを徹底することが前提となります。
また、一度大きな損失を出してしまうと、それを取り戻すためには、失った割合以上の利益率が必要になるという数学的な事実を理解しておくことも大切です。
例えば、投資資金が50%減ってしまった場合(10万円が5万円になった場合)、元の10万円に戻すためには、残った5万円を2倍にする、つまり100%の利益を上げなければなりません。
これは非常に困難なことです。
だからこそ、損失を小さく抑えることの重要性が際立つのです。



7.3 トレードルールを守るコツ
自分で「こうなったら買う、こうなったら売る」といった取引の約束事、それが「トレードルール」です。
しかし、このルールを作っても、いざ取引の場面になると守れない…というのは、特に初心者にありがちな悩みです。
ここでは、誘惑や感情に負けずにルールを守り続けるためのコツを紹介します。
なぜトレードルールを守れないのか?
トレードルールを守れない背景には、いくつかの心理的な要因が隠れています。
- 感情の介入:株価が予想通りに動かないと、「もう少し待てば上がるかもしれない(損切りしたくない)」という期待や、「早く利益を確定しないと下がってしまうかもしれない」という恐怖など、様々な感情が判断を鈍らせます。特に損失を確定させることへの心理的な抵抗感は強く、損切りを遅らせてしまう大きな原因となります。
- 自分への甘え・都合の良い解釈:「今回は特別な状況だからルールを破っても大丈夫」「このチャンスを逃したら二度と来ないかもしれない」といったように、自分に都合よくルールを曲げて解釈してしまうことがあります。
- ルールの不備:そもそも作ったルール自体が曖昧だったり、複雑すぎたりして、実際の取引場面でどう判断すれば良いか迷ってしまうこともあります。また、現実離れした達成困難なルールも、守れない原因となり得ます。
トレードルールを守り抜くための具体的なコツ
では、どうすればこれらの誘惑に打ち勝ち、決めたルールをしっかりと守ることができるのでしょうか。
- (1) シンプルで明確、かつ具体的なルールを作る:ルールは、誰が見ても同じように判断できるくらい、具体的でなければなりません。「なんとなく上がりそうだから買う」といった曖昧なものではなく、「株価が25日移動平均線を上回ったら買い、下回ったら売り」のように、客観的な指標に基づいた明確な基準を設けます。特に、エントリー条件(いつ買うか)、利食い目標(いくらで利益を確定するか)、そして最も重要な損切りライン(いくらで損失を確定するか)は、具体的な数値で決めておくことが不可欠です。
- (2) ルールを紙に書き出し、常に目につく場所に貼っておく:作成したルールを紙に大きく書き出し、パソコンのモニターの横や、取引する場所の壁など、常に目に入る場所に貼っておきましょう。これにより、取引中にルールを意識し続けることができ、感情的な判断に流されそうになった時の抑止力になります。
- (3) 取引を始める前に、必ずルールを声に出して確認する:実際に注文を出す直前に、これから行う取引が自分のルールに合致しているかどうかを、一つ一つ声に出して確認するくらいの徹底ぶりが大切です。「エントリー条件よし!損切りラインよし!利食い目標よし!」といった感じです。
- (4) 取引が終わったら、トレード日誌で「ルール通りにできたか」を必ず振り返る:利益が出たか損失が出たかという結果だけでなく、「決めたルール通りに取引できたか」というプロセスを重視して振り返ります(6.3参照)。もしルールを破ってしまった場合は、なぜ破ったのか、その時の感情はどうだったのかを正直に記録し、深く反省することが次に繋がります。
- (5) 小さな成功体験を積み重ね、ルールを守ることの有効性を実感する:最初は我慢が必要かもしれませんが、ルールを守って小さな利益でも着実に積み重ねることができれば、「ルールを守れば勝てるんだ」という自信が生まれ、ルールを守ることへのモチベーションが高まります。
- (6) 損切りは特に機械的に実行する習慣をつける:損切りは、感情的に最も難しい判断の一つです。含み損が膨らんでくると、「いつか戻るはず」という希望的観測にすがりたくなります。しかし、「ここまで価格が下がったら、どんな理由があろうとも必ず売る」と決めた損切りラインに達したら、ためらわずに機械的に実行する訓練が必要です。 ここで非常に重要な注意点があります。多くの株式取引では、「逆指値注文」という、あらかじめ「この価格まで下がったら自動的に売る」という設定ができる便利な注文方法があります。しかし、ミニ株(単元未満株)の取引では、現在のところ、どの証券会社でもこの逆指値注文を利用することができません。つまり、ミニ株で損切りを行う場合は、常に自分で株価をチェックし、損切りラインに達したら手動で売り注文を出す必要があるのです。これは、非常に強い自己規律と、こまめな株価チェックを要求されることを意味します。この点を理解しておくことは、ミニ株でリスク管理を行う上で極めて重要です。
トレードルールを守ることは、一時の感情に流されず、長期的に安定した成績を上げるための最も重要なスキルの一つと言っても過言ではありません。
ミニ株 スキャルピング で成功するためにも、この自己規律を日々の取引の中で徹底的に鍛えていきましょう。



8. よくある失敗と対策
投資の道に失敗はつきものです。大切なのは、失敗から学び、それを次に活かすこと。このセクションでは、ミニ株スキャルピング初心者が特に陥りやすい失敗例と、その具体的な対策を解説します。同じ過ちを繰り返さないためのヒントがきっと見つかるはずです。
8.1 手数料負けするケース
スキャルピングは、ごく小さな利益をコツコツと積み重ねていく取引手法です。
しかし、その小さな利益が、意外な伏兵である「手数料」によって消えてしまうことがあります。
「頑張って取引したのに、計算してみたら赤字だった…」なんてことにならないように、「手数料負け」の落とし穴に注意しましょう。
手数料負けとは?
手数料負けとは、株式の売買で得た利益よりも、その取引にかかった手数料(売買手数料や、実質的なコストであるスプレッドなど)の合計額の方が大きくなってしまい、結果的にトータルで損をしてしまう状態のことです。
特に、スキャルピングのように売買回数が多くなりがちな取引スタイルでは、この手数料負けのリスクが高まります。
ミニ株の取引コストを再確認
ミニ株(単元未満株)の取引にかかるコストは、主に以下の二つです。
- 売買手数料:これは、株を買ったり売ったりする際に、証券会社に支払う直接的な手数料です。証券会社やサービスによって異なります。
- SBI証券「S株」: 売買手数料は無料です。
- 楽天証券「かぶミニ」: 手数料コース「ゼロコース」を選択していれば、売買手数料は無料です。
- マネックス証券「ワン株」: 買付手数料は無料ですが、売却時には約定金額の0.55%(税込)がかかります。ただし、最低手数料が52円(税込)と設定されています。
- auカブコム証券「プチ株」: 売買ともに約定代金の0.55%(税込)で、最低手数料は52円(税込)です。ただし、プレミアム積立®(プチ株®)を利用した積立買付の場合、買付手数料は無料になります。
- スプレッド(実質的なコスト):スプレッドとは、株を買う時の値段(買値)と売る時の値段(売値)の差のことです。特に、楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引では、このスプレッドが実質的な取引コストとして存在します。具体的には、東京証券取引所でついている株価(基準価格)に対して、買う時は0.22%上乗せされた価格、売る時は0.22%差し引かれた価格で約定します。この0.22%がスプレッドに相当します。例えば、基準価格が1,000円の株を買う場合、1,000円 × (1 + 0.0022) = 1,002.2円となり、端数処理(買いの場合は切り上げ)されて1,003円で買うことになります。売る場合は逆に、1,000円 × (1 – 0.0022) = 997.8円となり、端数処理(売りの場合は切り捨て)されて997円で売ることになります。この買値と売値の差が、証券会社の手数料とは別に発生するコストとなるわけです。 SBI証券のS株など、約定タイミングが市場の始値や終値となるサービスでは、このような明確なスプレッド提示はありませんが、注文時から約定時までの間に市場価格が変動するリスクがあり、それが実質的なコストとなる可能性も考慮に入れる必要があります。
手数料負けしやすい状況
では、どのような場合に手数料負けしやすくなるのでしょうか。
- ごくわずかな値幅で利益確定を繰り返す場合:例えば、1円や2円といった非常に小さな値動きで利益を確定しようとすると、その利益が手数料やスプレッドで相殺されてしまうか、あるいはそれを下回ってしまうことがあります。
- 一日のうちに何度も売買を繰り返す場合:売買回数が増えれば増えるほど、支払う手数料の総額も増えていきます。
- 取引する株の金額が非常に小さい場合:マネックス証券やauカブコム証券のように最低手数料が設定されている場合、取引金額が小さいと、手数料の割合が相対的に非常に高くなってしまいます。例えば、1,000円分の株を売却して最低手数料52円がかかると、手数料だけで5.2%にもなってしまいます。
手数料負けを防ぐための対策
手数料負けを防ぐためには、以下の点に注意しましょう。
- 利用する証券会社のミニ株の手数料体系を正確に把握する:売買手数料が無料なのか、かかる場合はいくらなのか、最低手数料はあるのか、スプレッドはどの程度なのか、といった情報を事前にしっかりと確認しておきましょう。
- 1回の取引で狙う利益幅(利確幅)を、往復の取引コスト(手数料+スプレッド)以上に設定する:例えば、楽天証券「かぶミニ」でスプレッドが往復で約0.44%かかるなら、最低でもそれ以上の値上がりを狙わないと利益が出ません。
- エントリーの精度を高め、むやみに取引回数を増やさない:「なんとなく」で取引するのではなく、勝てる確率が高いと判断できる優位性のある場面に絞って取引することで、無駄な手数料の支払いを減らすことができます。
ミニ株 スキャルピング を行う上では、特にスプレッドを含めたトータルコストを常に意識し、それを上回る利益を確実に狙っていく戦略が不可欠です。
「手数料無料」という言葉だけに注目せず、実質的なコストもしっかりと計算に入れるようにしましょう。



8.2 約定遅延によるスリッページ
「この値段で買いたい(売りたい)!」と注文ボタンを押した瞬間の価格と、実際に取引が成立した価格がズレてしまうことがあります。
この現象を「スリッページ」と言い、特に値動きの早いスキャルピングでは注意が必要です。
スリッページとは?
スリッページとは、株式やFXなどの取引において、注文時に画面で表示されていた価格(または指定した価格)と、実際に約定した価格との間に生じる差のことです。
スリッページは、自分にとって有利な方向(例えば、思ったより安く買えた、思ったより高く売れた)に発生することも稀にありますが、多くの場合、不利な方向(思ったより高く買ってしまった、思ったより安く売ってしまった)に発生するリスクとして認識されています。
スリッページが起こる主な原因
スリッページが発生する主な原因は、以下の通りです。
- 注文から約定までの時間差(レイテンシー):あなたがパソコンやスマートフォンで注文ボタンを押してから、その注文データが証券会社のサーバーを経由し、取引所で処理されるまでには、ごくわずかながら時間がかかります。株価は常に変動しているため、この短い時間差の間に株価が動いてしまうと、スリッページが発生します。
- 市場の急変時:重要な経済指標(例えば、アメリカの雇用統計など)が発表された直後や、企業に関する大きなニュース(例えば、新製品の発表や業績予想の大幅な修正など)が出た時、あるいは市場全体が大きく動揺するような出来事(例えば、〇〇ショックと呼ばれるような金融危機など)が発生した時など、株価が短時間で非常に大きく、かつ急速に動く場面では、スリッページが特に発生しやすくなります。
- ミニ株特有の約定タイミングによる影響:これがミニ株におけるスリッページの大きな要因の一つです。前述の通り(6.2参照)、楽天証券「かぶミニ」のリアルタイム取引を除けば、多くのミニ株サービス(SBI証券「S株」、マネックス証券「ワン株」、auカブコム証券「プチ株」など)は、注文を出してもすぐには約定しません。代わりに、市場の特定の時間帯(例えば、前場や後場の始値など)で、その時点の市場価格に基づいてまとめて約定処理されます。この方式では、あなたが注文を出した時点から、実際に約定する時点までの間にかなりの時間が空くことになります。その間に市場の状況が大きく変われば、当然、注文時のイメージとはかけ離れた価格で約定してしまう(つまり、大きなスリッページが発生する)可能性が高まります。これは、スキャルピングのように瞬時の価格変動を捉えようとする取引スタイルにとっては、非常に大きなリスクとなり得ます。
スリッページへの対策
では、このスリッページのリスクを少しでも減らすためには、どうすれば良いのでしょうか。
- リアルタイム取引と指値注文が可能なサービスを選ぶ:楽天証券の「かぶミニ」であれば、東京証券取引所が開いている時間帯にリアルタイムで注文が処理され、かつ「指値注文」を利用することができます。指値注文は、「〇〇円以下で買いたい」「〇〇円以上で売りたい」と価格を指定する注文方法なので、指定した価格よりも不利な価格で約定することはありません(ただし、指定した価格に株価が届かなければ約定しない可能性はあります)。これにより、不利なスリッページが発生するリスクを大幅に抑えることができます。
- 値動きが非常に激しい時間帯や、重要イベントの直前直後の取引は避ける:経済指標の発表時などは、プロのトレーダーでも読み切れないほど価格が乱高下することがあります。初心者のうちは、こうしたタイミングでの取引は避け、市場が比較的落ち着いている時に取引する方が賢明です。
- 流動性の高い(取引量の多い)銘柄を選ぶ:(4.1「流動性・出来高をチェックする」の内容とも関連します)普段から取引が活発に行われている銘柄は、比較的買い手と売り手のバランスが取れているため、少々の注文では価格が大きく動きにくく、スリッページが発生しにくい傾向があります。
- スリッページが発生することも想定した上で、戦略を立てる:特に成行注文を利用する場合や、約定タイミングがリアルタイムでないミニ株サービスを利用する場合は、ある程度のスリッページは避けられないものとして、それを前提とした上で利食いや損切りの幅を設定するなどの工夫も考えられます。ただし、これはスキャルピングの「小さな値幅を狙う」という趣旨とは相反する場合もあるため、注意が必要です。
ミニ株 スキャルピング において、スリッページは直接的に損益に影響を与える非常に重要な要素です。
特に、約定タイミングがリアルタイムでないサービスを利用する場合は、このリスクを十分に理解し、可能な限りの対策を講じることが求められます。



8.3 オーバートレード防止法
「もっと儲けたい!」「さっきの損を取り返したい!」
そんな気持ちが先行して、つい何度も何度も取引を繰り返してしまう…これを「オーバートレード」と言います。
冷静さを失った取引は、大きな失敗のもとです。
オーバートレードとは?
オーバートレードとは、明確な取引ルールや、統計的に優位性のある(勝てる確率が高いと考えられる)エントリー根拠がないにもかかわらず、主に感情に任せて、必要以上に頻繁に売買を繰り返してしまう状態のことです。
常に何かしらの株を保有していないと落ち着かない、いわゆる「ポジポジ病」もオーバートレードの一種と言えるでしょう。
オーバートレードに陥る心理的な背景
なぜ人はオーバートレードに陥ってしまうのでしょうか。そこには、以下のような心理が働いていることが多いです。
- 損失を取り返そうとする焦りや執着(リベンジトレード):取引で損失を出すと、「すぐに取り返さなければ」という強い焦りが生まれ、冷静な判断ができなくなりがちです。そして、普段なら見送るような、根拠の薄い場面でも無理にエントリーしてしまうことがあります。
- 一度大きな利益が出た後の高揚感や過度な期待:逆に、取引がうまくいって大きな利益が出ると、「自分は天才かもしれない」「もっと稼げるはずだ」といった高揚感や万能感に包まれ、リスクを顧みずに次々と取引をしてしまうことがあります。
- 手持ち無沙汰や刺激を求める気持ち:特に取引する銘柄やタイミングを厳選していると、何もせずに待っている時間が長くなることがあります。そんな時、手持ち無沙汰から、あるいは単に刺激を求めて、何となく相場を眺めているうちに、特に明確な理由もなく取引したくなってしまうことがあります。
- 「このチャンスを逃したら損だ」という機会損失への恐れ(FOMO: Fear Of Missing Out):他の人が儲けているのを見たり、株価が急騰しているのを見たりすると、「自分だけ乗り遅れてしまうのではないか」「このチャンスを逃したら後悔する」といった焦りを感じ、慌てて飛び乗ってしまうことがあります。
オーバートレードがもたらす弊害
オーバートレードは、百害あって一利なし、と言っても過言ではありません。具体的には、以下のような悪い結果を引き起こしやすくなります。
- 手数料がかさみ、「手数料負け」しやすくなる:売買回数が増えれば増えるほど、その都度手数料(売買手数料やスプレッド)がかかります。一つ一つの利益が小さくても、手数料の総額がそれを上回ってしまえば、結果的に損失となってしまいます。
- 一つ一つの取引の質が低下し、損失を拡大させやすくなる:オーバートレードの状態では、じっくりと相場を分析したり、エントリーの根拠を吟味したりする時間がありません。そのため、質の低い、いわばギャンブルのような取引が増え、損失を出す確率が高まります。
- 精神的に疲弊し、集中力や判断力が鈍る:常に相場に張り付き、頻繁に売買を繰り返していると、精神的に非常に疲れます。疲労が蓄積すると、集中力や判断力が鈍り、さらに悪い取引を招くという悪循環に陥りやすくなります。
- 自分で決めたはずの取引ルールを無視しがちになる:感情が高ぶっている状態では、事前に決めたはずの損切りラインや利食い目標といったルールも、簡単に破ってしまいがちです。
オーバートレードを防ぐための具体的な対策
では、どうすればこの危険なオーバートレードを防ぐことができるのでしょうか。
- (1) 1日の取引回数や損失額の上限を事前に決めておく:「1日の取引は最大〇回まで」「1日の合計損失額が投資資金の〇%(例えば2%など)に達したら、その日はもう一切取引しない」といった具体的な上限を、取引を始める前に必ず決めておきましょう。そして、その上限に達したら、どんなに魅力的なチャンスに見えても、潔くその日の取引を終了する勇気を持ちましょう。
- (2) 明確なエントリー(買い)とエグジット(売り)のルールを持つ:(5.3「エントリー・エグジットルール設定」の内容とも関連します)「こういう条件が揃ったらエントリーする」「こういう条件になったらエグジットする」という明確なルールを作り、そのルールに合致しない限り、どんなに相場が動いていても手を出さない、という規律を徹底します。
- (3) 取引する時間帯を限定する:例えば、「東京証券取引所が開く午前9時から、値動きが活発になりやすい最初の1時間だけ」というように、自分が最も集中でき、かつ得意とする時間帯に絞って取引を行うのも有効な方法です。相場が開いている間ずっと画面に張り付いていると、どうしても取引したくなる衝動に駆られやすくなります。
- (4) 「休むも相場」という格言を理解し、実践する:株式相場では、常に取引をしていなければならないということはありません。明確なエントリーチャンスが見当たらない時は、無理に取引をせず、じっと待つことも立派な戦略の一つです。「待つ」ことができるようになれば、オーバートレードは格段に減るでしょう。
- (5) トレード日誌を活用し、自分のオーバートレードの傾向を客観的に把握する:トレード日誌に、取引時の感情やエントリーの根拠などを正直に記録していくと、自分がどんな時に、どんな心理状態でオーバートレードしやすいのか、そのパターンが見えてくることがあります。自分の傾向を自覚することが、改善の第一歩です。
ミニ株 スキャルピング は、短時間で取引を繰り返すイメージがあるかもしれませんが、それはあくまで質の高い、ルールに基づいた取引を積み重ねた結果です。
感情に流された無駄な取引を減らし、規律あるトレードを心がけることが、安定した成果への近道となるでしょう。



9. Q&A:初心者が抱きやすい疑問
ミニ株スキャルピング、なんだか面白そう!でも、実際に始めるとなると、「本当に儲かるの?」「いくらお金があればできるの?」「特別なソフトとかいるの?」など、色々な疑問が浮かんできますよね。ここでは、そんな初心者の皆さんが特に気になるポイントについて、分かりやすくお答えします!
9.1 ミニ株スキャルピングでどれくらい稼げる?
やっぱり一番気になるのは「実際、どれくらい稼げるの?」ということですよね。
大きな夢を描きたい気持ちも分かりますが、現実的なところもしっかり押さえておきましょう。
結論:一概には言えません。稼げる金額は、その人のスキル、投資資金、市場の状況、そして運など、様々な要因によって大きく変わります。
株式投資の世界には、「絶対にこれだけ稼げる」という保証はどこにもありません。
もし、そのような甘い言葉で勧誘してくる情報があったとしたら、それは非常に注意が必要です。
稼げる金額に影響を与える主な要因
では、どのような要素が稼げる金額に影響を与えるのでしょうか。
- 投資元本の大きさ:当然のことながら、元手となる資金が大きければ大きいほど、同じ利益率(例えば、投資した金額に対して1%の利益が出たなど)でも、得られる利益の絶対額は大きくなります。例えば、10万円の元手で月に5%の利益が出たとすると、利益は5,000円です。しかし、もし元手が100万円あれば、同じ月利5%でも利益は50,000円になります。
- トレーダーの技術と経験:株価チャートを読み解く力、素早く的確な判断を下す能力、エントリー(買い)とエグジット(売り)のタイミングを見極める精度、そして何よりもリスクを適切に管理する能力など、トレーダー自身の総合的なスキルが収益を大きく左右します。これらは一朝一夕に身につくものではなく、日々の学習と実践、そして反省の積み重ねによって磨かれていくものです。
- 取引戦略の質:どのようなルールに基づいて取引を行うか、1回の取引でどの程度の値幅を狙うのか、勝率(勝つ取引の割合)とリスクリワードレシオ(1回の勝ち取引の利益と1回の負け取引の損失の比率)をどのようにコントロールしていくか、といった取引戦略の質も非常に重要です。
- 市場のボラティリティ(値動きの大きさ):市場全体の活況度や、個別の銘柄の値動きの大きさも影響します。値動きが活発な時は、短時間で大きな利益を得るチャンスも増えますが、同時に損失を被るリスクも高まります。
- 取引に割ける時間と集中力:特にスキャルピングのような超短期売買では、市場が開いている間、株価の動きに集中して対応する必要がある場合もあります。どれだけ取引に時間を割けるか、そしてその時間内でどれだけ集中力を維持できるかも、成果に影響するでしょう。
初心者の心構えとして大切なこと
これからミニ株スキャルピングを始めようという初心者の方には、以下の点を心に留めておいていただきたいです。
- 最初から大きな利益を期待しないこと:何事もそうですが、最初からいきなりプロのようにうまくいくことはありません。まずは「負けないこと」「市場の雰囲気に慣れること」「取引の基本操作を覚えること」「小さな成功体験を積むこと」を最優先に考えましょう。
- 「月利〇〇%!」といった目標は、ある程度経験を積み、自分の実力が見えてきてからで十分です:インターネット上には、「デイトレードで月収〇〇万円!」といった華やかな情報も見受けられますが、それはほんの一握りの成功者の話であったり、あるいは非常に大きなリスクを取った結果である可能性もあります。ある調査では、副業で株式投資をしている人の月の収入は1万円から5万円未満というケースが多いというデータもありますが、これも元本やスキルによって大きく異なります。また、別の意見としては、1ヶ月に出せる収益は動かした金額の1%程度という非常にシビアな見方もあります。初心者のうちは、具体的な金額目標よりも、まずは取引のプロセスを学ぶことに集中しましょう。
- ミニ株 スキャルピング は、一攫千金を狙うような派手な手法ではなく、どちらかと言えば、小さな利益をコツコツと安全に積み重ねていくことを目指すものです。最初のうちは、月数千円でも利益が出せたら大成功、くらいの気持ちで臨むのが現実的かもしれません。
金額よりも「成長」を重視する
稼げる金額ももちろん気になるところですが、それ以上に大切なのは、日々の取引を通じて自分自身がトレーダーとして「成長」していくことです。
トレード日誌をつけ、自分の取引を客観的に分析し、良かった点、悪かった点を見つけ出し、少しずつでも改善していく。
そのプロセスそのものを楽しむことが、結果的に長く投資を続け、そしていつか安定して利益を出せるようになるための秘訣です。
本当に稼げるようになるまでには、相応の時間と努力、そして経験が必要であることを理解しておきましょう。



9.2 最低資金はいくら必要?
「株の取引って、たくさんお金がないとできないんでしょ?」
そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。
確かに、昔は株式投資を始めるにはある程度のまとまった資金が必要でした。
しかし、ミニ株(単元未満株)の登場によって、その常識は大きく変わりました。
ここでは、最低どれくらいの資金があればミニ株スキャルピングを始められるのか、見ていきましょう。
ミニ株なら、1株数百円~数千円から購入可能
ミニ株の最大の魅力は、なんといってもその少額から始められる手軽さです。
通常の株式取引では、多くの銘柄が100株を1単元として売買されるため、例えば株価が3,000円の会社の株を買おうとすると、3,000円 × 100株 = 30万円(+手数料)もの資金が必要になります。
しかし、ミニ株であれば、この1単元に満たない1株からでも株を購入することができるのです。
- SBI証券の「S株」 であれば、銘柄によっては数百円から投資を始めることが可能です。
- 楽天証券の「かぶミニ」 も、1株から購入できます。例えば、株価が1,000円の有名企業の株でも、1,000円(+スプレッドなどのコスト)から株主になることができます。
- マネックス証券の「ワン株」 は、その名の通り「ワンコイン(500円玉1枚)からでも株が買える」ことをアピールしており、非常に手軽に始められます。
- auカブコム証券の「プチ株」 も、銘柄によっては数百円程度から買付が可能で、気軽に株式投資を体験できます。
このように、ミニ株を利用すれば、文字通りお小遣い程度の金額からでも株式投資の世界に足を踏み入れることができるのです。
これは、特に投資初心者の方にとって、金銭的なハードルだけでなく、心理的なハードルも大きく下げてくれることでしょう。
スキャルピングを意識した場合の最低資金の考え方
では、単に株を買うだけでなく、「スキャルピング」という取引手法をミニ株で行うことを考えた場合、最低資金はどのように考えれば良いのでしょうか。
理論上は1株買える金額があれば始められますが、以下の点を考慮すると、ある程度のまとまりはあった方が良いかもしれません。
- 取引コストをカバーできる程度の資金:(8.1「手数料負けするケース」でも触れましたが)ミニ株の取引には、売買手数料やスプレッドといったコストがかかります。1回の取引でこれらのコストを吸収し、さらに利益を出すためには、ある程度の利益幅を狙う必要があります。そのためには、ある程度の株価の銘柄を選ぶか、あるいはある程度の株数を買うための資金が欲しいところです。例えば、マネックス証券のワン株で売却時に最低手数料52円がかかる場合、1回の取引で52円以上の利益を出せなければ、取引する意味があまりありません。
- ある程度の株数を購入できる資金:スキャルピングは、ごく小さな値動き(例えば1円や数ティックなど)を捉えて利益を積み重ねる手法です。もし1株しか保有していなければ、たとえ株価が1円有利に動いても、得られる利益はわずか1円です。これでは、取引コストを考えると割に合わないことが多いでしょう。スキャルピングで意味のある利益(例えば、1回数十円~数百円)を狙うには、ある程度の株数を保有して、小さな値動きでもそれなりの利益額になるようにしたい場合があります。
- 練習として複数の銘柄に分散投資するなら、その分の資金:初心者のうちは、いきなり一つの銘柄に全資金を集中させて取引するよりも、値動きの異なるいくつかの銘柄で、それぞれ少額ずつ取引を試してみるのも良い経験になります。その場合は、それぞれの銘柄を買うための資金が必要になります。
具体的な目安(あくまで一例として、自己責任の範囲で)
これらの点を考慮すると、ミニ株 スキャルピング の練習を始めるのであれば、まずは数万円(例えば、1万円~5万円程度) あれば、いくつかの銘柄で何度かミニ株の売買を経験し、取引の感覚を掴むことができるのではないでしょうか。
もちろん、これはあくまで目安であり、もっと少ない金額からでも始めることは十分に可能です。
大切なのは、必ず生活に全く影響のない余剰資金の範囲内で行うということです。
最初は、例えばお小遣いの中から1万円程度を入金してスタートし、市場の雰囲気に慣れたり、取引ツールの操作を覚えたりすることから始めてみるのがおすすめです。
大切なのは金額の多寡よりも「実際に始めてみること」
最低資金がいくらか、ということも気になるとは思いますが、それ以上に大切なのは、「実際に自分のお金で株を売買してみる」という経験をすることです。
たとえ1株でも、たとえ数百円の取引でも、実際に自分のお金が動くのを体験することで、本を読んだりインターネットで情報を集めたりするだけでは決して得られない、貴重な学びや気づきがたくさんあるはずです。
ミニ株は、その第一歩を非常に低いハードルで踏み出させてくれる、素晴らしい制度と言えるでしょう。



9.3 システムトレードは利用可能?
「システムトレード」という言葉を聞いたことがありますか?
なんだか難しそうだし、プロのトレーダーが使う特別なもの、というイメージがあるかもしれません。
ミニ株で、しかもスキャルピングのような超短期売買で、このシステムトレードは使えるのでしょうか?
そんな疑問にお答えします。
システムトレードとは?
システムトレードとは、あらかじめ自分で決めた明確な取引のルール(例えば、「株価が25日間移動平均線を上に抜けたら買い、下に抜けたら売り」といった具体的な条件)をプログラム化し、そのルールに従ってコンピューターが自動的または半自動的に売買の判断や実際の注文を行ってくれる取引方法のことです。
システムトレードの大きなメリットは、人間の感情(例えば、恐怖で損切りが遅れたり、欲望で利食いが早すぎたりすること)を排除し、常に一貫したルールに基づいて客観的な取引ができるとされる点です。
ミニ株でシステムトレードは現実的か?
では、ミニ株(単元未満株)の取引で、このシステムトレードを利用することはできるのでしょうか。
結論から言うと、初心者がミニ株で本格的なシステムトレードを始めるのは、現状ではかなりハードルが高いと言えるでしょう。
その理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 自分でシステムを開発する場合の技術的な難易度:もし自分で売買システムを作ろうとするなら、ExcelのVBA(Visual Basic for Applications)のような表計算ソフトのマクロ機能や、Python(パイソン)のような専門的なプログラミング言語の知識、そして株価データを取得して分析し、売買シグナルを出すためのロジックを組み込むといった、高度なスキルが必要になります。これらを初心者がいきなり習得するのは容易ではありません。
- 証券会社が提供するツールの状況:現在、日本の主要なネット証券会社で、ミニ株(単元未満株)の、特にスキャルピングのような超短期売買に特化した専用のシステムトレードツールや自動売買サービスは、一般的には提供されていません。証券会社が提供している自動売買ツールやサービスは、FX(外国為替証拠金取引)や日経225先物といった金融商品、あるいは通常の単元株のデイトレードなどを対象としているものがほとんどです。
- API(エーピーアイ)の利用可能性とハードル:一部の証券会社では、「API(Application Programming Interface)」という、外部のプログラムからその証券会社の取引システムに接続して注文を出したり情報取得したりするための「窓口」のようなものを提供している場合があります。このAPIを利用すれば、理論上は自分でプログラムを組んでミニ株の自動売買を行うことも不可能ではありません。しかし、APIを利用したプログラム開発も、やはり高度な技術知識が前提となります。
初心者向けの考え方とステップ
では、初心者はシステムトレードについて、どのように考えれば良いのでしょうか。
- まずは手動取引で徹底的に基本を学ぶ:システムに取引を任せる前に、まずは自分自身で相場を読み、株価チャートを分析し、注文を出し、利益確定や損切りを行うという、一連の取引の基本を徹底的に学ぶことが先決です。実際に自分の手で取引を経験することで、相場観や取引の感覚、そして何よりもリスクに対する意識が養われます。
- ルールをシステム化する前に、自分でそのルールを検証する:もし将来的にシステムトレードに挑戦したいと考えるなら、まずはその「システム(取引ルール)」を自分で考案し、トレード日誌(6.3参照)などを活用しながら、手動でそのルール通りの取引を一定期間試してみることが重要です。その結果、そのルールが本当に有効なのか、改善すべき点はないかなどを検証します。自分で検証して有効性が確認できないルールを、いきなりシステム化しても良い結果は期待できません。
- ミニ株 スキャルピング であれば、例えば楽天証券の「かぶミニ」のようにリアルタイム取引と指値注文が可能なサービスを利用し、自分で明確に決めたエントリーとエグジットのルールに従って、感情を排して機械的に手動で取引を繰り返す練習をすることが、ある意味でシステムトレード的な思考や規律を養う第一歩になるかもしれません。
結論として
初心者がミニ株(単元未満株)で、いきなり本格的なシステムトレードを始めて利益を上げるというのは、残念ながら現実的ではありません。
まずは、自分自身の判断(これを「裁量取引」と言います)で取引を行うことに慣れ、そこでしっかりと利益を出せるような明確な取引ルールを自分自身で確立できるようになってから、次のステップとしてシステムトレードを検討してみるのが良いでしょう。



10. まとめ:ミニ株スキャルピングで少額から経験を積もう
この記事では、ミニ株を使ったスキャルピングという取引手法について、その基本から実践的なステップ、リスク管理、そして初心者が抱きやすい疑問に至るまで、詳しく解説してきました。最後に、これまでの内容を振り返りながら、ミニ株スキャルピングで少額から経験を積むことの意義と、これから始める皆さんへのメッセージをお伝えします。
これまで、ミニ株スキャルピングの世界を一緒に旅してきました。
まず、「スキャルピングとは何か」という基本から始まり、1株から取引できるミニ株(単元未満株)でスキャルピングを行うメリット、そしてデイトレードやスイングトレードといった他の取引手法との違いについて見てきました。
次に、ミニ株取引の基礎知識として、注文方法(リアルタイム取引が可能な楽天証券「かぶミニ」の存在や、成行注文・指値注文の違い)、約定のスピード感、そして手数料構造(売買手数料やスプレッドといった隠れコストの重要性)、さらには税金と確定申告のポイントについても触れました。
証券会社選びも重要なポイントです。
SBI証券の「S株」、楽天証券の「かぶミニ」、マネックス証券の「ワン株」、auカブコム証券の「プチ株」といった主要なミニ株サービスを比較し、それぞれの特徴、特に楽天証券「かぶミニ」がリアルタイム取引や指値注文に対応しており、スキャルピングという観点からは有利である可能性を示しました。
スキャルピングに適した銘柄選びの基準として、流動性(取引の活発さ)や出来高(売買された株数)をチェックすること、値動きの大きさ(ボラティリティ)の目安、そしてニュースや経済イベントが株価に与える影響を見極めることの重要性も解説しました。
具体的な戦略作りでは、移動平均線やRSIといったテクニカル指標の活用法、ローソク足の形から相場を読み解くヒント、そして何よりも大切なエントリー(いつ買うか)とエグジット(いつ売るか)の明確なルール設定、利確幅や損切り幅の目安、適切なポジションサイズの計算方法について学びました。
そして、いよいよ実践ステップとして、取引ツールの初期設定から、実際の注文から決済までの流れ、そして上達に不可欠なトレード日誌による検証と改善の方法を紹介しました。
株式投資にリスクはつきものです。
大切な資金を守るためのリスク管理として、余剰資金での投資や1回の取引での許容損失額を決める資金管理の黄金比率、連敗時のドローダウンへの対処法、そして一度決めたトレードルールを何があっても守り抜くコツについてもお伝えしました。
初心者が陥りがちな失敗例として、手数料負けしてしまうケース、約定遅延によるスリッページのリスク(特にミニ株の約定方式との関連)、そして感情に任せて無駄な取引を繰り返してしまうオーバートレードとその防止法も具体的に見てきました。
最後に、皆さんが抱きやすい疑問、「どれくらい稼げるのか?」「最低資金はいくら必要か?」「システムトレードは利用できるのか?」といった点について、現実的な視点からお答えしました。
ミニ株でスキャルピング(またはそれに近い短期売買)を始めることの意義
では、なぜミニ株を使って、スキャルピングのような短期的な視点での取引経験を積むことが、初心者にとって有意義なのでしょうか。
- 最大のメリットは「少額から始められる」こと:これが何と言っても一番の魅力です。通常の株式投資では数十万円単位の資金が必要になることもありますが、ミニ株なら数百円、数千円といったお小遣い程度の金額からでも、実際の株式市場に参加し、本物の取引を体験することができます。これにより、大きな金銭的リスクを負うことなく、株式投資の第一歩を踏み出すことができます。
- 実践的なスキルが効率的に身につく:スキャルピングは、短時間で何度も判断と実行を繰り返すため、チャートの読み方、注文方法の習熟、利益確定や損切りのタイミングの判断といった、株式投資に必要な実践的なスキルが、短期間で集中的に鍛えられます。もちろん、最初はうまくいかないことの方が多いでしょうが、その一つ一つの経験が血肉となります。
- 精神面が鍛えられる:たとえ少額であっても、自分のお金が実際に増えたり減ったりするのを目の当たりにすると、本やシミュレーションだけでは決して味わえない緊張感や感情の動きを経験します。その中で、いかに冷静な判断を保つか、いかに規律を守るかといった精神的なコントロールの重要性を、身をもって学ぶことができます。
- 自分に合った投資スタイルを見つけるきっかけになる:実際にやってみることで、スキャルピングという手法が自分に合っているのかどうか、あるいはもっとゆったりとした時間軸の投資の方が向いているのか、といった自分自身の適性を見極める良い機会になります。
初心者への最終的なアドバイスとエール
これからミニ株スキャルピングの世界に挑戦しようとしている皆さんに、最後にいくつかのアドバイスと応援のメッセージを送ります。
- 焦らず、急がず、自分のペースで
- 株式投資は、短距離走ではなく長距離走です。
- 特に最初のうちは、うまくいかないこと、分からないことだらけで当たり前です。
- 周りの人と比べたり、すぐに結果が出ないからといって諦めたりせず、自分のペースで一歩一歩進んでいくことが何よりも大切です。
- 学び続ける姿勢を忘れずに
- 株式市場は常に変化していますし、投資の世界は奥が深いです。
- この記事で学んだことは、ほんの入り口に過ぎません。
- 本を読んだり、信頼できる情報源から新しい知識を吸収したり、常に学び続ける謙虚な姿勢を持ち続けてください。
- 楽しむことを忘れずに
- 投資は、決して苦しい修行ではありません。
- 自分の知識や判断でお金が増えたり、社会や経済の動きをより深く理解できたりと、知的な面白さや達成感を味わえるものでもあります。
- 興味を持って、楽しみながら取り組むことが、長続きの秘訣です。
この記事が、あなたの「ミニ株 スキャルピング」への第一歩を踏み出すきっかけとなり、株式投資という新しい世界への扉を開くお手伝いができたなら、これ以上の喜びはありません。
さあ、準備ができたら、まずは少額取引に対応した証券会社で口座を開設し、あなた自身の小さな一歩から、大きな可能性に満ちた投資の世界を体験してみませんか。
本記事の注意事項(免責事項)
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を意図したものではありません。本記事に記載されている情報については、正確性、完全性、有用性を確保するために努力しておりますが、その保証は致しかねます。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の内容を利用して生じたいかなる損害についても、当サイトおよび著者は一切の責任を負いかねます。詳しくは免責事項ページをご確認ください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
【登場人物】



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