株式投資って、なんだか難しそうだし、たくさんお金がないと始められないと思っていませんか。
でも、実は「ミニ株」という方法なら、少ないお金から気軽に株式投資を体験できるんです。
この記事では、プロの株式投資家であり、経験豊富なライターである私が、株式投資の初心者の方、それこそ中学生にも分かるように、ミニ株の魅力と注意点をイチから丁寧に解説します。
ミニ株のメリットやデメリットをしっかり理解して、賢い投資家への第一歩を踏み出しましょう。
1. ミニ株のメリット
ミニ株には、少ないお金で投資を始められる、いろいろな会社の株に分けやすい、株主優待や配当金がもらえるチャンスがある、積立投資で買うタイミングをずらせる、そして手の届きにくい高い株も買いやすくなる、といったうれしい点がたくさんあります。これらのミニ株のメリットを一つずつ見ていきましょう。
1.1 少額から投資できる
「株ってお金持ちがやるものでしょ?」と思っていませんか。
実はミニ株なら、お小遣いからでも始められるかもしれないんです。
その秘密を、ここで解き明かしましょう。
(1) ミニ株(単元未満株)ってなに?
普通の株式取引では、株を買うときにはある程度まとまった単位でしか買えません。
この最小単位のことを「単元株(たんげんかぶ)」と呼び、多くの会社では1単元株は100株と決められています。
例えば、1株の値段が1,000円の会社の株を買いたいと思っても、通常は100株単位なので、最低でも10万円(1,000円×100株)のお金が必要になるのです。
これだと、ちょっと試してみたいと思っても、なかなか手が出しにくいですよね。
そこで登場するのが、「ミニ株」や「単元未満株(たんげんみまんかぶ)」と呼ばれる仕組みです。
これは、100株に満たない、例えば1株や10株といった少ない単位から株を買うことができる制度のことです。
証券会社によっては、呼び方が違うこともあります。
例えば、SBI証券では「S株(エスかぶ)」、楽天証券では「かぶミニ」、マネックス証券では「ワン株」、auカブコム証券では「プチ株」といった名前で呼ばれています。
(2) どれくらい少ないお金で始められるの?
ミニ株なら、本当に少ないお金で株式投資をスタートできます。
先ほどの例で、1株1,000円の株があったとします。
ミニ株で1株から買えるなら、なんと1,000円からその会社の株主になれる可能性があるのです(実際には取引手数料がかかる場合もあります)。
これなら、毎月のお小遣いや、ちょっとしたアルバイト代からでも、無理なく始められそうですよね。
今まで「株価が高くて手が出せない…」と思っていた有名な大企業の株、例えばソニーグループのような1単元で買うと100万円以上もするような会社の株も、ミニ株なら1株から買いやすくなります。
夢だったあの会社の株主になることも、ミニ株なら現実的になるかもしれません。
(3) 初心者にとってどんな良いことがあるの?
ミニ株が少額から始められることは、特に株式投資の初心者の方にとって、たくさんの良いことがあります。
まず、投資を始めるためのハードルがぐっと下がります。
「株を始めるには、まとまったお金を貯めないと…」と気負う必要がありません。
気軽に「ちょっと試してみようかな」という気持ちで、投資の世界に足を踏み入れることができます。
そして、ミニ株は株式投資の練習に最適です。
実際に自分のお金を使って株を買うことで、株価が上がったり下がったりするのを体験できます。
もし株価が下がってしまっても、投資している金額が少ないので、大きな損をしにくいのです。
例えば、10万円で株を買って株価が半分になったら5万円の損ですが、1,000円で買った株が半分になっても損は500円です。
心のダメージも少なく、冷静に「なぜ株価が動いたのかな?」と考える余裕が持てます。
このように、少ないリスクで実際の取引を経験できるのは、初心者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
「投資は自分にもできるかもしれない」という自信にもつながります。
経済ニュースで見た会社や、いつも使っている商品を作っている会社の株を少しだけ持ってみることで、経済の動きがより身近に感じられるようになるかもしれません。
これは、教科書で勉強するのとは違う、生きた経済の学びになるはずです。



1.2 分散投資がしやすい
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の言葉を知っていますか。
これは、大切なお金を一つの場所に集中させず、いくつかの場所に分けておくことで、もしもの時のリスクを減らそうという考え方です。
ミニ株なら、この大切な「分散投資」を実践しやすくなります。
(1) 分散投資ってどういうこと?
分散投資(ぶんさんとうし)とは、投資先を一つに絞らず、複数の異なる対象に分けて投資することで、リスクを減らす考え方です。
例えば、A社の株だけに自分のお金を全部つぎ込んでしまうと、もしA社の業績が悪くなって株価が大きく下がったり、最悪の場合倒産してしまったりしたら、大切なお金がほとんど戻ってこないかもしれません。
でも、A社、B社、C社と、いくつかの異なる会社の株に分けて投資していれば、もしA社の株価が下がっても、B社やC社の株価が上がっていれば、全体の損失を小さく抑えられたり、逆に利益が出たりすることもあります。
これが分散投資の基本的な考え方です。
(2) ミニ株だと、なぜ分散投資しやすいの?
ミニ株は1株からといった少額で株を買えるため、同じ予算でも、通常の100株単位の取引よりもたくさんの種類の会社の株を持つことができます。
例えば、あなたが「10万円で株式投資を始めてみよう!」と思ったとします。
もし、買いたい株が1単元(100株)でちょうど10万円だったら、その1社の株しか買えません。
でも、ミニ株を利用すればどうでしょう。
1株数千円で買える株なら、10万円の予算で10社以上の株を買うことだって可能です。
つまり、少ない資金でも、たくさんの会社に投資を分散させることができるのです。
これは、投資のリスクを抑える上で、とても効果的な方法です。
(3) どんなふうに分散するの?
分散投資には、いくつかの種類があります。
- 銘柄分散(めいがらぶんさん)
- 文字通り、いろいろな会社の株を持つことです。A社だけでなく、B社、C社、D社…といった具合です。
- 業種分散(ぎょうしゅぶんさん)
- 例えば、ゲームを作る会社(IT関連)、お菓子を作る会社(食品関連)、自動車を作る会社(製造業)など、異なる分野(業種)の会社の株をバランス良く持つことです。
- ある業種が不調でも、別の業種が好調なら、リスクを和らげることができます。
- 地域分散(ちいきぶんさん)
- 日本の会社だけでなく、アメリカやヨーロッパ、アジアなど、外国の会社の株も持つことです(ミニ株では主に日本の株が対象になりますが、分散投資の考え方の一つとして覚えておくと良いでしょう)。
ミニ株を使って分散投資を始めると、自然と色々な会社や業界のことを調べるようになります。
最初は「自分がよく使っているお菓子を作っている会社」や「好きなゲームを作っている会社」など、身近なところから数社の株を買ってみるかもしれません。
そこから、「この業界はこれから伸びそうだから、関連する別の会社の株も少し買ってみようかな」というように、興味の輪が広がっていくこともあります。
結果として、社会の様々な分野の仕組みや動きについて理解が深まり、投資の判断力も養われるでしょう。
また、少額でいろいろな株の組み合わせを試せるので、「この組み合わせは値動きが激しいな」「こっちは安定しているけど、あまり増えないな」といった経験を通じて、自分に合った投資のスタイルを見つけていく「実験場」としても活用できます。



1.3 株主優待・配当を受け取れる
株を持つと、会社からプレゼントがもらえたり、利益の一部を分けてもらえたりすることがあります。
これをそれぞれ「株主優待」と「配当金」と言います。
ミニ株でも、そのチャンスがあるんです。
(1) 配当金ってなあに?
配当金(はいとうきん)とは、会社が事業で得た利益の一部を、株主に対して現金で分配するものです。
いわば、株主への「おすそ分け」のようなものです。
ミニ株を保有している場合でも、持っている株の数に応じて配当金を受け取ることができます。
例えば、ある会社が「1株あたり年間10円の配当金を出します」と決めた場合、その会社の株を1株持っていれば年に10円、10株持っていれば年に100円の配当金がもらえる計算になります(実際には税金が引かれます)。
もちろん、全ての会社が配当金を出しているわけではありませんし、業績によって配当金の額が変わることもあります。
それでも、配当金は株を持っていることの魅力の一つです。
(2) 株主優待ってどんなもの?
株主優待(かぶぬしゆうたい)とは、会社が株主に対して、自社の製品やサービス、商品券、割引券などをプレゼントする制度です。
例えば、食品会社なら自社製品の詰め合わせ、レストランチェーンなら食事券、鉄道会社なら運賃の割引券などがもらえたりします。
一般的に、この株主優待は、1単元(通常100株)以上の株を持っている株主を対象にしている会社が多いです。
「じゃあ、ミニ株じゃもらえないの?」と思うかもしれませんが、諦めるのはまだ早いです。
実は、一部の企業では、100株に満たない単元未満株の保有者に対しても、何らかの株主優待を提供している場合があります。
また、ミニ株を少しずつ買い増していって、いずれ100株になれば、その時点で単元株主として扱われ、多くの企業で株主優待の対象になることができます。
(3) もらうための注意点はある?
配当金や株主優待をもらうためには、いくつか知っておくべきことがあります。
まず、株主優待の内容や、もらうために必要な株数は、会社によって全く異なります。
「この会社の優待が欲しいな」と思ったら、その会社のホームページなどで、優待の条件をしっかり確認することが大切です。
また、ミニ株で株主優待をもらう場合、株主としての名前がきちんと会社に登録される形で株を保有している必要があります。
SBI証券の「S株」、楽天証券の「かぶミニ」、マネックス証券の「ワン株」、auカブコム証券の「プチ株」といった主要なネット証券のミニ株サービスでは、株主名義は基本的に本人になるので、この点は安心できるでしょう。
たとえ少額の配当金でも、実際に自分の銀行口座に振り込まれると、「自分もこの会社を応援している一員なんだな」という実感が湧いてきます。
株主優待品が届けば、その会社への愛着も増すかもしれません。
こうした体験は、株価の上がり下がりだけではない、投資の楽しさや意義を感じさせてくれるはずです。



1.4 積立投資で時間分散できる
「株を買うなら、一番安い時に買いたい!」誰でもそう思いますよね。
でも、いつが一番安いかなんて、プロの投資家でもなかなか分かりません。
そんな悩みを少し軽くしてくれるのが、ミニ株を使った「積立投資」という方法です。
(1) 積立投資ってどんな仕組み?
積立投資(つみたてとうし)とは、毎月決まった日に、決まった金額分の金融商品(この場合は株)をコツコツと買い続けていく投資方法です。
例えば、「毎月1日に、A社の株を5,000円分ずつ買う」というように、あらかじめ設定しておくイメージです。
銀行の自動積立預金と似たような感覚で、株式投資ができるのです。
(2) 時間分散(ドルコスト平均法)って何がいいの?
積立投資の大きなメリットの一つに、「時間分散(じかんぶんさん)」ができるという点があります。
これは、株を買うタイミングを一度に集中させず、何回かに分けることで、もし株価が高い時にまとめて買ってしまった…という失敗(高値掴み)のリスクを減らす効果が期待できる考え方です。
特に、毎月決まった金額で買い続ける方法を「ドルコスト平均法(どるこすとへいきんほう)」と言います。
このドルコスト平均法には、面白い特徴があります。
株価が高い時には、同じ金額で買える株の数は少なくなります。
逆に、株価が安い時には、同じ金額でたくさんの株数を買うことができます。
これを毎月続けていくと、結果的に、平均購入単価をならす効果が期待できるのです。
「いつ買えば一番いいんだろう…」とタイミングに悩む初心者の方にとっては、何も考えずに機械的に投資を続けられるので、とても心強い方法と言えるでしょう。
(3) ミニ株で積立投資はできるの?
はい、多くの証券会社では、ミニ株(単元未満株)を使った積立サービスを提供しています。
例えば、SBI証券には「日株積立」というサービスがありますし、auカブコム証券には「プレミアム積立®(プチ株®)」というサービスがあります。
auカブコム証券の「プレミアム積立®(プチ株®)」なら、毎月500円以上1円単位という少額から積立金額を設定でき、しかも買付手数料が無料というメリットもあります。
楽天証券でも、かぶミニ(単元未満株)を利用した積立設定が可能です。
(4) 長期的な資産形成に向いている
積立投資は、短期的に大きな利益を狙うというよりは、長い時間をかけてコツコツと資産を育てていくのに向いている投資方法です。
毎月少しずつでも積み立てていくことで、知らず知らずのうちにまとまった株数になっていたり、配当金が再投資されてさらに株数が増えたり(これを「複利(ふくり)の効果」と言います)、将来的に大きな力になる可能性があります。
感情に左右されやすい初心者の投資判断を、積立投資というシステムがサポートし、規律ある投資習慣を身につける手助けにもなります。
「いつの間にかこんなに貯まっていた!」という喜びを、将来味わえるかもしれません。



1.5 高額銘柄へアクセスしやすい
「あの有名な会社の株、一度は持ってみたいけど、高すぎてとても手が出ない…」そんな風に諦めていた憧れの株も、ミニ株なら夢物語ではなくなるかもしれません。
(1) 値がさ株(高額銘柄)って何?
1株あたりの株価が非常に高い株のことを、市場では「値がさ株(ねがさかぶ)」と呼ぶことがあります。
例えば、ゲーム業界で有名な任天堂や、ロボット技術で世界的に知られるキーエンス、衣料品ブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング、半導体製造装置大手の東京エレクトロンといった会社の株は、1株だけでも数万円することが珍しくありません。
これらの値がさ株を通常の100株単位で買おうとすると、数百万円、場合によってはそれ以上の大きな資金が必要になってしまいます。
これでは、普通の個人投資家、特に初心者の方にはなかなか手が出せませんよね。
(2) ミニ株なら、憧れの株にも手が届く!
しかし、ミニ株(単元未満株)の制度を利用すれば、これらの値がさ株も、なんと1株から購入することが可能です。
例えば、1株4万円するファーストリテイリングの株も、ミニ株なら約4万円(別途手数料がかかる場合があります)から投資を始めることができるのです。
これにより、今まで「高嶺の花」だった優良企業や、これから大きく成長するかもしれない企業の株主になるチャンスが、ぐっと身近になります。
少ない資金でも、自分が「この会社を応援したい!」「この会社の成長に期待したい!」と心から思える、信頼できる大企業の株を選ぶことができるようになるのは、大きなメリットです。
「株価が高いから」という理由だけで、投資の選択肢から外れていた銘柄にも、目を向けることができるようになります。
(3) 将来的には単元株主も夢じゃない?
ミニ株で憧れの会社の株を1株ずつでも買い続けていくと、いつかは100株に到達するかもしれません。
そうなれば、晴れて「単元株主」として扱われるようになり、株主総会での議決権(会社の経営方針などに意見を言う権利)を得られたり、より本格的な株主優待の対象になったりすることもあります。
ミニ株でまず1株持つことは、その大きな目標への大切な第一歩となるでしょう。
「いつかはあの会社の株を単元で持ちたい」という夢が、投資の勉強を続けるモチベーションにもつながるかもしれません。
質の高い企業への投資を少額から体験することで、企業の成長と自分の資産が結びつく面白さを感じ、なぜその企業が高い評価を得ているのかを考える良いきっかけにもなります。



2. ミニ株のデメリット
ミニ株にはたくさんのメリットがありますが、注意したい点、つまりデメリットもいくつかあります。手数料が少し高めになること、取引の時間や方法に制限があること、株主総会には参加できないこと、思った通りのタイミングや価格で売買できないリスク、そして大きな利益は狙いにくいことなどです。これらのミニ株のデメリットについて、しっかり理解しておきましょう。
2.1 手数料やスプレッドが割高になりやすい
ミニ株は手軽に始められる反面、取引にかかるコスト、つまり手数料などが、通常の株取引と比べて少し割高になってしまうことがあるんです。
この点をしっかり理解しておかないと、「せっかく利益が出たのに、手数料を引かれたらマイナスになっちゃった!」なんてことにもなりかねません。
(1) 手数料の仕組みと「手数料負け」
ミニ株(単元未満株)の取引では、通常の100株単位の取引(単元株取引)と比べて、1株あたりの手数料が相対的に高くなる傾向があります。
特に注意したいのが、証券会社によっては「最低手数料」というものが設定されている場合です。
例えば、「1回の取引につき最低でも52円の手数料がかかります」といった具合です。
もし、あなたが1,000円分のミニ株を買うとして、最低手数料が52円だとすると、取引金額の5.2%も手数料で取られてしまう計算になります。
これは結構大きな負担ですよね。
このように、取引で得た利益よりも手数料の方が高くなってしまい、結果的に損をしてしまうことを「手数料負け」と言います。
ミニ株のように取引金額が小さい場合は、この「手数料負け」に特に注意が必要です。
(2) 「スプレッド」って何?
最近では、売買手数料を無料にしている証券会社も増えてきました。
「やった!手数料タダなら安心だ!」と思うかもしれませんが、ここにも注意点があります。
手数料が無料でも、「スプレッド」と呼ばれる実質的なコストがかかる場合があるのです。
スプレッドとは、株を買う時の値段(買値)と売る時の値段(売値)の間に設けられた差額のことです。
証券会社は、この差額を収益の一部としています。
例えば、楽天証券の「かぶミニ」では、リアルタイム取引の手数料は無料ですが、株価に対して0.22%のスプレッドが設定されています。
これは、買う時は市場の価格より0.22%高い値段で買い、売る時は市場の価格より0.22%安い値段で売ることになる、という意味です。
これも実質的な取引コストと言えます。
(3) 証券会社ごとの手数料・スプレッド比較
ミニ株の取引コストは、証券会社によって大きく異なります。
以下に、主要なネット証券のミニ株サービスの手数料体系(2024年6月時点の一般的な情報、最新情報は各社HPでご確認ください)を簡単にまとめてみました。
証券会社 | サービス名 | 買付手数料 | 売却手数料 | スプレッド(リアルタイム取引時) |
SBI証券 | S株 | 無料 | 無料 | なし |
楽天証券 | かぶミニ | 無料 | 無料 | 0.22% |
マネックス証券 | ワン株 | 無料 | 約定代金の0.55% (最低52円税込) | なし |
auカブコム証券 | プチ株 | NISA口座:無料<br>特定/一般:約定代金の0.55% (最低52円税込)<br>プレミアム積立買付:無料 | NISA口座:無料<br>特定/一般:約定代金の0.55% (最低52円税込) | なし |
このように、買付も売却も無料のところもあれば、売却時に手数料がかかるところ、スプレッドがあるところなど様々です。
「手数料が安いから」という理由だけで選ぶのではなく、自分の取引スタイル(頻繁に売買したいか、長期で持ちたいかなど)に合わせて、総合的に判断することが大切です。
手数料やスプレッドの存在は、「投資は完全にタダではないんだ」ということを教えてくれます。
このコスト意識を早い段階で持つことは、将来大きな金額で投資をするようになった時にも必ず役立ちます。



2.2 リアルタイム取引・指値注文の制限
普通の株取引のイメージだと、「今だ!」と思った瞬間にパソコンやスマホでカチッと売買したり、「この値段になったら買いたいな」と予約注文を入れたりする光景を思い浮かべるかもしれません。
でも、ミニ株(単元未満株)の世界では、そういった自由な取引が少し制限されることがあるんです。
(1) 「今すぐ売買したい!」が難しい?リアルタイム取引の制限
多くの証券会社のミニ株取引では、リアルタイム取引、つまり市場が開いている間(東京証券取引所なら平日の午前9:00~11:30と午後12:30~15:30)に、自分の好きなタイミングで自由に売買することができない場合があります。
注文を出しても、実際に売買が成立する(これを「約定(やくじょう)」と言います)のは、1日に1回か2回、証券会社があらかじめ決めた特定の時間になることが多いのです。
例えば、マネックス証券の「ワン株」では、原則として当日午前11時30分までに出した注文が、その日の午後の一番最初の取引(後場の始値)で約定します。
auカブコム証券の「プチ株」も、注文を出す時間帯によって、午前の取引の一番最初(前場の始値)か、午後の取引の一番最初(後場の始値)で約定する仕組みになっています。
ただし、ここ最近ではリアルタイム取引に対応する証券会社も出てきています。
楽天証券の「かぶミニ」やSBI証券の「S株」では、条件付きではありますが、市場の株価を見ながらリアルタイムに近い形での取引が可能です。
(2) 「この値段で!」が難しい?指値注文の制限
もう一つの大きな制限が、指値注文(さしねちゅうもん)ができない、または制限されることが多いという点です。
指値注文とは、「この株を1,000円で買いたい」とか「この株が1,200円になったら売りたい」というように、自分で値段を指定して注文する方法です。
しかし、多くのミニ株取引では、この指値注文ができず、「成行注文(なりゆきちゅうもん)」のみとなる場合が多いのです。
成行注文とは、「いくらでもいいから、その時の市場価格で買いたい(または売りたい)」という注文方法で、値段を指定できません。
マネックス証券の「ワン株」やauカブコム証券の「プチ株」は、基本的に成行注文のみです。
SBI証券の「S株」では、買う時には指値注文もできますが、売る時はリアルタイム取引(実質的には成行注文に近い形)のみとなっています。
楽天証券の「かぶミニ」は、リアルタイム取引であれば指値注文も成行注文も可能です。
(3) 思った値段と違う?価格変動リスク
リアルタイム取引や指値注文が制限されると、どんな困ったことが起きる可能性があるのでしょうか。
それは、注文してから実際に約定するまでの間に時間が空いてしまうと、その間に株価が大きく動いてしまい、自分が思っていたよりも高い値段で買ってしまうことになったり、逆に安い値段で売ってしまうことになったりするリスクがある、ということです。
特に、市場全体の動きが激しい時や、特定の会社の株価が急に上がったり下がったりしている時は、注意が必要です。
こうした取引のタイミングや価格決定の自由度が低いことは、ミニ株がデイトレードのような短期的な売買で利益を狙うのにはあまり向いていない理由の一つです。
むしろ、この制約があるからこそ、短期的な値動きに一喜一憂せず、企業の長期的な成長に期待してじっくりと株を保有する、というスタイルに向かいやすくなるとも言えるでしょう。



2.3 議決権がない・株主総会に参加不可
「株主になると、その会社のオーナーの一員になれるんだよ」と聞いたことがあるかもしれません。
確かにその通りなのですが、ミニ株(単元未満株)で株を持っているだけでは、会社の経営に直接口を出す権利は、基本的にはもらえないのです。
(1) 議決権って何のこと?
会社は年に一度(または必要に応じて)、株主が集まって会社の重要なことを話し合って決める「株主総会(かぶぬしそうかい)」というものを開きます。
例えば、会社の社長さんなどの役員を選んだり、会社の大きな方針を決めたりします。
この株主総会で、株主が自分の意見を表明し、賛成か反対かの票を投じる権利のことを「議決権(ぎけつけん)」と言います。
この議決権は、通常、1単元(多くの場合は100株)の株を持っていて初めて1つの権利が与えられます。
つまり、会社の経営に参加するための「投票券」のようなものだと考えてください。
(2) ミニ株だと議決権はないの?
残念ながら、ミニ株(単元未満株)の保有者は、1単元に満たない株数しか持っていないため、原則としてこの議決権を持つことができません。
したがって、株主総会に株主として参加して、意見を言ったり投票したりすることも、基本的にはできないのです。
これは、ミニ株の大きなデメリットの一つと言えるでしょう。
(3) 株主としての権利にも違いがある
株主が持つ権利には、大きく分けて2つの種類があります。
一つは、配当金を受け取る権利のように、株主個人の利益に直接関わる権利で、「自益権(じえきけん)」と呼ばれます。
ミニ株の株主でも、この自益権である配当金を受け取る権利は、持っている株数に応じてあります。
もう一つは、議決権のように、会社全体の運営に関わる権利で、「共益権(きょうえきけん)」と呼ばれます。
ミニ株では、この共益権が制限される、ということになります。
もちろん、ミニ株をコツコツと買い集めていって、いずれ1単元(100株)に到達すれば、その時点で晴れて議決権を得て、株主総会にも参加できるようになります。
「株主として会社の経営に関わってみたい!」という強い思いがある方は、ミニ株からスタートして、将来的に単元株主を目指すというのも一つの道です。
しかし、ミニ株で投資を始める段階では、「会社の経営に参加する」というよりは、「少額から資産形成を始めるための一つの手段」と捉えておくのが良いでしょう。
この違いを知っておくことは、株式会社の仕組みや株主の役割について、より深く学ぶ良いきっかけになるはずです。



2.4 流動性・約定タイミングのリスク
「この株、今すぐ売りたいのに、なかなか売れない!」「逆に、買いたいのに、誰も売ってくれない!」そんなふうに、自分が思った通りに株の売買ができない状況が、ミニ株(単元未満株)では、通常の株取引よりも起こりやすいと言われています。
これを「流動性リスク」や「約定タイミングのリスク」と呼びます。
(1) 流動性リスクって何?
流動性リスク(りゅうどうせいりすく)とは、簡単に言うと、「売りたい時にすぐに売れない、または買いたい時にすぐに買えない」可能性のことです。
また、もし売買できたとしても、自分が希望していた価格から大きくかけ離れた不利な価格でしか取引できないリスクも、この流動性リスクに含まれます。
株は、買いたい人と売りたい人がいて初めて取引が成立します。
あまり人気のない会社の株や、普段からあまり取引されていない株(これを「出来高が少ない株」と言います)は、買いたい人や売りたい人が少ないため、この流動性リスクが高くなる傾向があります。
(2) ミニ株と流動性の関係
ミニ株は、通常の100株単位の取引(単元株取引)と比べると、まだ取引に参加している人の数が少ない場合があります。
そのため、銘柄によっては、単元株取引よりも流動性が低くなってしまうことがあるのです。
特に、もともとあまり取引量の多くない会社のミニ株は、いざ売ろうと思ってもなかなか買い手が見つからなかったり、買おうと思っても売り手がいなかったりして、希望通りに売買できない可能性があります。
(3) 約定タイミングのリスクとは?
先ほど「2.2 リアルタイム取引・指値注文の制限」でも触れましたが、ミニ株は注文を出してから実際に売買が成立する(約定する)までに、タイムラグがあることが多いです。
この時間が空いている間に、市場全体の状況やその会社の株価が急に変わってしまうと、自分が「この値段で買える(売れる)はず」と思っていた価格と、実際に約定した価格が大きくズレてしまうリスクがあります。
例えば、朝一番に「A社の株価が1,000円だから、今のうちに買っておこう」とミニ株の買い注文を出したとします。
でも、その注文が実際に約定するのがお昼休み明けの株価で、その時にはA社の株価が1,050円に値上がりしていた…なんてことも起こり得るのです。
これでは、思ったよりも高い値段で買ってしまうことになりますよね。
また、株価がストップ高(1日の値上がり幅の上限)やストップ安(1日の値下がり幅の下限)になってしまうと、注文が約定しないこともあります。
SBI証券のS株のルールでは、「前場(午前の取引)に取引が成立せず未約定となった注文は、後場(午後の取引)始値での取引となります。後場始値での取引において、取引が成立せず未約定となった注文は失効されます」とされています。
つまり、1日のうちで必ず売買できるとは限らないのです。
こうしたリスクは、ミニ株が「いつでも簡単に、思った通りの値段で売買できるわけではない」という市場の現実を教えてくれます。
銘柄を選ぶ際には、株価や配当金だけでなく、その株がどれくらい活発に取引されているか(出来高など)も少し気にしてみると良いかもしれません。



2.5 大きなリターンを狙いにくい
「ミニ株で一攫千金!」「あっという間に大金持ち!」…そんな夢のような話を期待している人もいるかもしれませんが、残念ながら、ミニ株(単元未満株)でそういった大きなリターン(利益)を短期間で狙うのは、ちょっと難しいかもしれません。
その理由を、ここでしっかり理解しておきましょう。
(1) 投資したお金とリターンの関係
投資で得られる利益(リターン)の大きさは、基本的に、最初に投資した金額に比例します。
当たり前のことかもしれませんが、1万円を投資して10%の利益が出れば1,000円の儲けですが、100万円を投資して10%の利益が出れば10万円の儲けになります。
ミニ株は、そもそも少額から投資を始めることができるのが大きなメリットです。
しかし、それは同時に、投資している金額が少ない分、たとえ株価がものすごく上昇したとしても、実際に手元に入ってくる利益の絶対額は小さくなってしまう、ということを意味します。
例えば、ある会社の株価が5,000円の時に買ったとしましょう。
その後、その会社の業績が絶好調で、株価がなんと2倍の10,000円になったとします。
もし、あなたがその会社の株を1株だけ(投資額5,000円)持っていたとしたら、得られる利益は5,000円です。
でも、もし100株(投資額50万円)持っていたとしたら、利益は50万円にもなります。
同じように株価が2倍になっても、元々の投資額が違うと、利益の額もこれだけ大きく変わってくるのです。
(2) リスクが小さい分、リターンも小さい
ミニ株は、投資額が少ないので、もし株価が下がってしまっても損失は限定的です。
これは「ローリスク」と言えます。
しかし、一般的に、リスクが低いものはリターンも低い(ローリターン)傾向があります。
「安全だけど、あまり儲からない」ということです。
逆に、大きなリターンを期待できるものは、リスクも高くなる(ハイリスク・ハイリターン)ことが多いです。
ミニ株は、この「ローリスク・ローリターン」の典型と言えるかもしれません。
短期間で一気に資産を増やしたい!と考えている人にとっては、ミニ株の利益の小ささは、少し物足りなく感じてしまう可能性があります。
(3) 1日の値動きには限界がある(制限値幅)
株式市場には、「制限値幅(せいげんねはば)」というルールがあります。
これは、株価が1日のうちにあまりにも大きく上がりすぎたり、下がりすぎたりしないように、1日の株価の変動できる範囲に上限と下限が設けられているものです。
これにより、株価が1日で何十倍にもなるような、とんでもない急騰は基本的には起こりにくくなっています。
そのため、短期的なミニ株投資で得られる利益は、この制限値幅の存在によっても、さらに限定的になると言えます。
(4) 手数料の影響も忘れずに
そして、忘れてはいけないのが手数料です。
「2.1 手数料やスプレッドが割高になりやすい」で説明したように、ミニ株は手数料が相対的に割高になることがあります。
せっかく株価が少し上がって利益が出ても、その利益が手数料でほとんど消えてしまったり、場合によっては手数料の方が高くて損をしてしまったりすることも考えられます。
このように、ミニ株は、大きな利益を狙うというよりは、投資の経験を積んだり、長期的な視点でコツコツと資産を増やしたり、分散投資でリスクを抑えたり、といった目的で活用するのが向いていると言えるでしょう。
「一攫千金」の夢を追いかけるのではなく、現実的で持続可能な投資観を育むことが、ミニ株を通じて学べる大切なことの一つかもしれません。



3. ミニ株が向いている人・向いていない人
ミニ株は誰にでもおすすめ、というわけではありません。投資をこれから始めたい初心者の方や、少ない資金でいろいろ試してみたい方にはピッタリです。一方で、すぐに大きな利益が欲しい方や、株主として会社の経営に関わりたい方には、あまり向いていないかもしれません。自分はどちらのタイプか、考えてみましょう。
3.1 ミニ株がおすすめな投資家タイプ
「自分もミニ株、始めてみようかな?」と思っているあなた。
もしかしたら、ミニ株はあなたのための投資方法かもしれません。
こんなタイプの人には、ミニ株が特におすすめです。
(1) 株式投資の初心者さん
「株式投資に興味はあるけど、何から始めたらいいか全然わからない…」という方。
「いきなり大きなお金で取引するのは、なんだか怖いな…」と感じている方。
ミニ株は、まさにそんな株式投資の初心者さんのためにあるような制度です。
少額から実際の株取引を体験できるので、本やインターネットで勉強するだけでは得られない、リアルな投資経験を積むことができます。
いわば、自転車の補助輪のようなもの。
転んでも大きなケガをしにくい(損失が出てもダメージが小さい)ので、安心して投資の練習ができます。
「株って難しそう」という心理的なハードルをぐっと下げてくれるでしょう。
(2) 少額から始めたい・手元資金が限られている人
「株をやってみたいけど、そんなにたくさんお金がないんだよな…」という方。
学生さんで、毎月のお小遣いやアルバイト代の一部で、無理なく投資を始めてみたいと思っている人。
ミニ株なら、数千円や数万円といった少ない資金からスタートできます。
「投資はまとまったお金がないとできない」というのは、もう昔の話かもしれません。
ミニ株は、「投資家デビュー」の敷居を劇的に下げ、これまで投資と縁がなかった若い世代にも、金融や経済について学ぶ素晴らしい機会を提供してくれます。
(3) いろいろな株に分散してリスクを抑えたい人
「一つの会社の株だけに投資するのは、ちょっと不安だな…」と感じる慎重派のあなた。
ミニ株なら、少ない資金でも複数の会社の株に分けて投資する「分散投資」がしやすいです。
これにより、もし一つの会社の株価が下がっても、他の会社の株価がカバーしてくれる可能性があり、全体としてのリスクを抑えることが期待できます。
(4) 長い目で見てコツコツと資産を育てたい人
「毎月少しずつでもいいから、将来のために積み立てていきたい」と考えている方。
ミニ株は、積立投資との相性もバッチリです。
短期的な株価の上がり下がりに一喜一憂するのではなく、じっくりと応援したい会社を選んで、長い時間をかけて資産を育てていきたい人に向いています。
ミニ株は、結果(リターン)だけでなく、そのプロセス(学びや経験)を大切にできる人にとって、投資における「成長する楽しさ」を教えてくれるでしょう。
(5) 憧れの会社の株主になりたいけど、普通の株(単元株)では高すぎる場合
「あの有名なゲーム会社の株、持ってみたいなあ」「いつも使ってるお菓子メーカーの株主になってみたい!」そんな憧れがあるけれど、100株単位で買うには株価が高すぎて手が出せない…という場合。
ミニ株なら、そんな憧れの会社の株も1株から買えるので、夢を叶えるチャンスがあります。
会社によっては、ミニ株でも株主優待の一部がもらえたり、持っている株数に応じて配当金がもらえたりすることもあります。



3.2 ミニ株をおすすめしない投資家タイプ
ミニ株は多くの人にとって魅力的な投資方法ですが、逆に、「こんな人にはミニ株はちょっと合わないかもしれないな…」というタイプもあります。
自分の投資の目的やスタイルと合わない方法を選んでしまうと、期待外れに終わってしまうこともあります。
無理して始める必要はありません。
(1) 短期間で大きな利益(リターン)をガツンと狙いたい人
「株で一攫千金!」「短期間で資産を何倍にもしたい!」というような、大きなリターンを強く求めている人。
ミニ株は、基本的に少額からの投資が前提です。
そのため、たとえ投資した株の株価が大きく上昇したとしても、得られる利益の絶対額は、どうしても小さくなってしまいます。
ハイリスクを取ってでもハイリターンを狙いたい、という積極的な投資家の方には、ミニ株の利益の小ささは物足りなく感じられるでしょう。
(2) 頻繁に売買して細かく利益を積み重ねたい短期トレーダー
デイトレードのように、1日のうちに何度も株を売買したり、数日程度の短い期間で売買を繰り返したりして利益を出したいと考えている短期トレーダーの方。
ミニ株は、証券会社によってはリアルタイム取引ができなかったり、指値注文に制限があったりすることが多く、取引のタイミングが非常に重要な短期売買にはあまり向いていません。
また、手数料やスプレッドが相対的に割高になる傾向があるため、取引回数が多くなると、そのコストが利益を圧迫してしまう可能性も高いです。
(3) 株主総会への参加や議決権の行使をとても重視する人
「株主として、会社の経営に積極的に関わりたい!」「株主総会に出て、自分の意見を述べたい!」というように、株主としての権利行使を重視する方。
ミニ株(単元未満株)の保有者には、原則として議決権がなく、株主総会にも参加できません。
会社の経営方針の決定に影響を与えたい、という目的で株式投資を考えている人には、ミニ株は適していないと言えます。
(4) すでに投資に回せるお金をたくさん持っている経験豊富な投資家
すでに株式投資の経験が豊富で、投資に使える資金も十分にあるという方。
このような投資家の方にとっては、通常の単元株(100株単位)での取引が中心になるでしょうから、あえてミニ株を利用するメリットは、相対的に小さく感じられるかもしれません。
ただし、新しい銘柄を試しに少しだけ買ってみたり、ポートフォリオ(持っている株の組み合わせ)の細かい調整をしたりする目的で、経験豊富な投資家がミニ株を活用するケースはあります。
(5) 手数料や取引の制約をものすごく気にしてしまう人
ミニ株には、どうしても手数料が少し割高になったり、取引の時間や方法に一定の制約があったりします。
これらの特性を理解した上で利用する必要があります。
もし、こうした手数料の負担や取引の不自由さが、どうしても気になってストレスに感じてしまうようなら、ミニ株以外の投資方法を検討した方が、気持ちよく投資を続けられるかもしれません。
「自分には何が向いているか」を知るためには、「自分には何が向いていないか」を理解することも大切です。
ミニ株のデメリットや限界を知ることで、自分の投資目的を達成するためには、もっと別の方法が必要かもしれない、と気づくことができるかもしれません。



4. ミニ株を活用した投資戦略
ミニ株のメリットとデメリットが分かったところで、次はどうやってミニ株を賢く使うか、具体的な作戦を考えてみましょう。配当金や株主優待が魅力的な会社の株を少しずつ集めたり、毎月決まった額を積み立てて長く持ったり、いろいろな会社の株をバランス良く買ったりする方法があります。
4.1 高配当・優待銘柄を少量ずつ買う
株を持っていると、会社からお小遣いのように配当金がもらえたり、プレゼントのように株主優待品が届いたりすることがあります。
ミニ株(単元未満株)を使えば、そんな魅力的な銘柄を、少ない負担で少しずつ集めていくことができます。
これは、投資の楽しみを広げる素敵な戦略の一つです。
(1) 高配当銘柄ってどんな株?
「高配当銘柄(こうはいとうめいがら)」とは、その会社の株価に対して、年間に支払われる配当金の割合が高い銘柄のことを指します。
この割合のことを「配当利回り(はいとうりまわり)」と言います。
例えば、ある会社の株価が1,000円で、その会社が年間に1株あたり30円の配当金を出す場合、配当利回りは「30円 ÷ 1,000円 × 100 = 3%」となります。
一般的に、この配当利回りが高いほど、株主にとっては魅力的とされます。
参考に、日経平均株価を構成する銘柄の予想平均配当利回りは、2024年6月14日時点で1.82%程度でした。
これよりも高い利回りであれば、「高配当」と言えるかもしれません。
(2) 株主優待銘柄の魅力
「株主優待銘柄(かぶぬしゆうたいめいがら)」とは、株主に対して自社の製品やサービス券、クオカードなどを提供している銘柄のことです。
ミニ株(単元未満株)の保有者でも株主優待がもらえる企業は限られていますが、中には1株からでも何らかの優待を提供している太っ腹な会社も存在します。
そういった銘柄を探してみるのも面白いでしょう。
また、すぐに優待がもらえなくても、「いつかは100株にして本格的な優待をもらいたい!」という目標を持って、ミニ株でコツコツと買い増していくのも一つの戦略です。
(3) ミニ株で高配当・優待銘柄を集める戦略
では、具体的にどのようにミニ株でこれらの銘柄に投資していくのでしょうか。
- 少額からスタートできる
- 力的な高配当銘柄や、有名な優良企業の株も、ミニ株なら1株から購入できます。そのため、少ない資金でも、自分のポートフォリオ(持っている株の組み合わせ)にこれらの銘柄を組み入れることが可能です。
- 分散効果を活かす
- 一つの銘柄だけに集中投資するのではなく、複数の異なる高配当銘柄や優待銘柄に分散投資をしましょう。
- そうすることで、もし一つの銘柄の配当金が減ってしまったり、株主優待がなくなってしまったりするリスクを軽減できます。
- 長期保有が基本
- 配当金や株主優待を継続的に受け取るためには、基本的に長期で株を保有することが大切です。
- 株価が短期的に上がったり下がったりすることに一喜一憂せず、じっくりと会社を応援する気持ちで保有しましょう。
- 買い増しで充実させる
- 気に入った銘柄や、配当金・株主優待が特に魅力的な銘柄は、お財布に余裕ができた時に少しずつ買い増していくのも良い方法です。
- 持っている株数が増えれば、将来受け取れる配当金の額も増えますし、株主優待の内容がより充実することもあります。そして、100株になれば、本格的な株主優待の権利や議決権も視野に入ってきます。
(4) どんな銘柄を選べばいいの?
高配当銘柄を選ぶ際には、単に配当利回りが高いというだけで飛びつくのは禁物です。
その会社の業績が安定していて、今後も継続して配当金を支払っていけそうか(過去の配当実績や、利益のうちどれくらいを配当に回しているかを示す「配当性向」なども参考に)をしっかり確認しましょう。
株主優待銘柄を選ぶ場合は、優待の内容が自分にとって本当に魅力的で、実際に使いやすいものかどうかを考えることが大切です。
例えば、高配当銘柄としてよく名前が挙がる企業には、通信大手のKDDIや、日本たばこ産業(JT)などがあります(これらはあくまで過去の実績や一般的な情報に基づく例であり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください)。
ミニ株で高配当・優待銘柄に投資する戦略は、株価の値上がり益だけでなく、「定期的にお金が入ってくる(インカムゲイン)」という形で投資の成果を実感しやすく、投資を続けるモチベーションの維持にもつながります。



4.2 定期積立で長期保有
毎月コツコツと貯金箱にお金を入れていくように、ミニ株(単元未満株)も定期的に積み立てていくことができます。
この「積立投資」と「長期保有」を組み合わせる戦略は、特に投資初心者の方や、忙しくてなかなか投資のタイミングを計れない方にとって、時間を味方につけてじっくりと資産を育てていく賢い方法の一つです。
(1) 積立投資のメリットをおさらい
「1.4 積立投資で時間分散できる」でも触れましたが、積立投資には大きなメリットがあります。
- ドルコスト平均法の効果
- 毎月決まった金額で株を買い続けると、株価が高い時には少なく、株価が安い時には多く買うことになります。
- これを続けることで、平均購入単価をならす効果が期待でき、一度に高い値段でたくさん買ってしまう「高値掴み」のリスクを減らすことができます。
- 投資タイミングに悩まない
- 「いつ買えばいいんだろう…」という最大の悩みから解放されます。
- 感情に左右されることなく、機械的に、淡々と投資を継続できるのが強みです。
- 少額から無理なく始められる
- 多くの証券会社では、ミニ株の積立サービスを数百円や数千円といった少額から設定できます。
- auカブコム証券の「プレミアム積立®(プチ株®)」のように、買付手数料が無料になるサービスもあります。
(2) なぜ長期保有が大切なの?
株式投資は、基本的に長い期間保有することで、いくつかの恩恵を受けやすくなると言われています。
- 短期的な価格変動リスクの軽減
- 株価は短期間で見ると上がったり下がったりを繰り返しますが、長い目で見れば、一時的な変動の影響は小さくなる傾向があります。
- 企業の成長の果実を得る
- 良い企業を選んで長く株を持っていれば、その企業が成長するにつれて株価も上昇し、資産が増える可能性があります。
- 複利の効果を活かす
- 株を持っていると配当金がもらえることがあります。
- その配当金をさらに同じ株の購入に充てる(再投資する)と、元本だけでなく利益も新たな利益を生み出す「複利(ふくり)」の効果が期待できます。
- この複利の効果は、期間が長ければ長いほど、雪だるま式に大きくなっていきます。
歴史を振り返ると、世界の株式市場は短期的には様々な危機や調整を経験しながらも、長期的には成長を続けてきた傾向があります(ただし、これは過去のことであり、将来も必ずそうなると保証するものではありません)。
(3) ミニ株で積立投資を始めるには?
ミニ株の積立投資を始めるのは難しくありません。
SBI証券の「日株積立」やauカブコム証券の「プレミアム積立®(プチ株®)」など、多くのネット証券がミニ株(単元未満株)の積立サービスを提供しています。
これらのサービスを利用して、毎月の積立日(例えば給料日の翌日など)と、積み立てる金額(または株数)を設定するだけです。
さらに、NISA口座(特に成長投資枠がミニ株の対象になりやすいです)を活用すれば、積立投資で得た利益(値上がり益や配当金)が非課税になるという大きなメリットも享受できます。
(4) 積立投資の注意点
積立投資は素晴らしい戦略ですが、万能ではありません。
市場全体が長期間にわたって下落し続けるような局面では、積み立てていても損失が拡大してしまう可能性はあります。
また、積立投資を始めたら、すぐに結果を求めるのではなく、数年、場合によっては10年、20年といった長い目で、じっくりと続ける覚悟が必要です。
そして、どの会社の株を積み立てていくか、という銘柄選びも非常に重要です。
目先の人気だけでなく、長期的に見て安定して成長していけそうな企業や、安定した配当金が見込める企業を選ぶように心がけましょう。
「貯蓄から投資へ」という言葉をよく耳にしますが、ミニ株の定期積立は、この言葉を最も実践しやすく、かつ心理的な負担も少ない形で具体化できる手段の一つと言えるでしょう。



4.3 株価指標を使った分散購入
世の中にはたくさんの会社の株があって、「一体どれを選んだらいいんだろう…」と迷ってしまうのは当然のことです。
そんな時、市場全体の動きや特定のテーマを表す「ものさし」のようなものである「株価指標」を上手に使って、バランス良く株を選ぶという戦略があります。
ミニ株(単元未満株)でも、この考え方を活かすことができます。
(1) 株価指標ってなあに?
株価指標(かぶかしひょう)、またはインデックスとは、株式市場全体の株価の動きや、特定のグループに属する銘柄の株価の動きを、一つの数値で分かりやすく表したものです。
日本の株式市場でよく耳にする代表的な株価指標には、以下のようなものがあります。
- 日経平均株価(にっけいへいきんかぶか)
- 日本を代表する225社の株価を特別な方法で平均したものです。
- ニュースで「今日の日経平均株価は…」と報道されることが多いので、聞いたことがある人も多いでしょう。
- TOPIX(トピックス、東証株価指数)
- 東京証券取引所のプライム市場に上場している全ての日本企業の株価を基に計算される指数で、市場全体の動きをより幅広く表していると言われます。
これら以外にも、特定の業種(例えば、銀行株指数や医薬品株指数など)の動きを示す指数や、特定のテーマ(例えば、高配当株を集めた指数や、成長が期待される新興企業の株を集めた指数など)に連動する指数もたくさんあります。
(2) なぜ株価指標が役立つの?
個別の会社を一つ一つ詳しく調べて分析するのは、特に初心者にとっては時間も手間もかかり、とても大変な作業です。
しかし、株価指標に連動するような形で投資を行うことで、手軽に多くの銘柄に分散投資したのと同じような効果を得ることができます。
例えば、日経平均株価に連動する投資なら、実質的に日本の主要な225社に少しずつ投資しているようなイメージです。
市場全体が成長していけば、その恩恵を受けやすくなるというわけです。
(3) ミニ株で株価指標を活用する方法
ミニ株を使って株価指標を意識した投資を行うには、主に二つの方法が考えられます。
一つ目は、「ETF(いーてぃーえふ、上場投資信託)」という金融商品をミニ株で購入する方法です。
ETFとは、特定の株価指標(例えば日経平均株価やTOPIXなど)に値段が連動するように運用されている投資信託の一種で、株式と同じように証券取引所で売買することができます。
証券会社によっては、このETFもミニ株(単元未満株)の制度を使って1口から購入することが可能です。
例えば、楽天証券の「かぶミニ」やSBI証券の「S株」では、一部のETFが取引対象になっています。
高配当株を集めた指数に連動するETF(例えば、「NF・日経高配当株50指数連動型上場投信」など)をミニ株で少しずつ買えば、間接的に複数の高配当株に手軽に分散投資することができます。
二つ目は、自分で個別のミニ株を選ぶ際に、株価指標の構成銘柄を参考にすることです。
例えば、TOPIXの中でも特に時価総額(会社の規模を表す指標)が大きく、取引も活発な優良企業30社を選んだ「TOPIX Core30(トピックス コアさんじゅう)」という指数があります。
このCore30の構成銘柄の中から、自分が「応援したいな」「将来性がありそうだな」と思う企業をいくつかピックアップして、それぞれの株をミニ株で買ってみる、といった方法です。
また、私たちの年金の一部を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という組織があります。
GPIFは、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券といった異なる種類の資産に、どのような割合で分散投資しているか(これを基本ポートフォリオと言います)を公表しています。
これを参考に、自分のミニ株ポートフォリオで、どの業種の株をどれくらいの割合で持つか、といった分散のバランスを考えるヒントにすることもできます(ただし、ミニ株は主に国内株式が中心となる点には留意が必要です)。
(4) 分散購入のポイント
分散投資の効果を高めるためには、できるだけ値動きの異なる種類の銘柄を組み合わせることがポイントです。
例えば、同じ業種の会社ばかりに投資するのではなく、IT関連、食品、自動車、金融など、異なる業種(セクター)の銘柄をバランス良く持つ「セクター分散」を意識しましょう。
一般的には、約30銘柄程度を保有すると、分散投資の効果が高まると言われています。
いきなり30銘柄は難しくても、ミニ株で少しずつ銘柄を増やしていき、将来的にそのくらいの数を目指すというのも良い目標になるでしょう。
株価指標を意識したミニ株投資は、個別銘柄選びの難しさを和らげ、より広い視野で市場全体の動きを捉える手助けをしてくれます。



5. ミニ株投資で失敗しないコツと注意点
ミニ株投資を始めるなら、できるだけ失敗はしたくないですよね。ここでは、ミニ株投資で後悔しないための大切なコツや気をつけるべきポイントを解説します。手数料を上手に節約する方法、いつ売買するかのタイミングよりも長い目で見る考え方、そしてどんな情報を集めてどんな株を選べばいいか、一緒に見ていきましょう。
5.1 手数料を抑えるコツ
ミニ株(単元未満株)のデメリットの一つとして、手数料が通常の株取引に比べて相対的に割高になりやすい、という点がありました。
しかし、ちょっとした工夫や知識を持つことで、この手数料を賢く節約する方法がいくつかあります。
せっかくの利益を手数料で減らしてしまわないように、しっかりとポイントを押さえておきましょう。
(1) まずは手数料の仕組みをしっかり理解する
何よりもまず大切なのは、自分が利用しようとしている証券会社のミニ株取引に関する手数料の仕組みを、きちんと理解しておくことです。
- 買付手数料はかかるのか、無料なのか。
- 売却手数料はいくらかかるのか、最低手数料は設定されているのか。
- 手数料は無料でも、スプレッド(買値と売値の差)が実質的なコストとして存在するのか。
これらの点を、SBI証券の「S株」、楽天証券の「かぶミニ」、マネックス証券の「ワン株」、auカブコム証券の「プチ株」など、主要なネット証券のサービス内容を比較しながら確認しましょう。
以下は、先ほども掲載しましたが、手数料を考える上で非常に重要なので再掲します(2024年6月時点の一般的な情報、最新情報は各社HPでご確認ください)。
証券会社 | サービス名 | 買付手数料 | 売却手数料 | スプレッド(リアルタイム取引時) |
SBI証券 | S株 | 無料 | 無料 | なし |
楽天証券 | かぶミニ | 無料 | 無料 | 0.22% |
マネックス証券 | ワン株 | 無料 | 約定代金の0.55% (最低52円税込) | なし |
auカブコム証券 | プチ株 | NISA口座:無料<br>特定/一般:約定代金の0.55% (最低52円税込)<br>プレミアム積立買付:無料 | NISA口座:無料<br>特定/一般:約定代金の0.55% (最低52円税込) | なし |
この表からも分かるように、証券会社によって手数料体系は大きく異なります。
自分の取引スタイル(例えば、頻繁に売買したいのか、一度買ったら長く持ちたいのかなど)に合わせて、最も有利な条件の証券会社を選ぶことが、手数料を抑える第一歩です。
(2) 取引回数をむやみに増やさない(長期保有を心がける)
手数料は、取引をするたびにかかるものです(無料の場合を除く)。
したがって、頻繁に売買を繰り返すと、その分だけ手数料がかさんでしまいます。
特に、売却時に手数料がかかる証券会社を利用している場合は、むやみに売買を繰り返すのではなく、一度買ったらじっくりと長期で保有することを心がけるだけでも、手数料の節約につながります。
(3) 「まとめ買い」や「まとめ売り」を検討する
証券会社によっては、1回の取引ごとに最低手数料が設定されている場合があります。
このような場合、例えば1株ずつチマチマと何度も買うよりも、ある程度まとまった株数(例えば10株単位など)で一度に買う方が、1株あたりの手数料負担を相対的に軽減できることがあります。
また、ミニ株を買い集めていって、最終的に100株になったとします。
この100株を売却する際に、ミニ株としてではなく、通常の単元株として売却手続きをすると、手数料が単元株の体系(一般的にミニ株より割安)で計算される場合があるので、覚えておくと良いでしょう。
(4) NISA口座を最大限に活用する
これは非常に大きなポイントです。
NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)口座、特にミニ株の取引が可能な「成長投資枠」を利用してミニ株を取引すると、多くの証券会社で買付手数料だけでなく売却手数料も無料になります。
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券など、主要なネット証券の多くが対応しています。
NISA口座の最大のメリットは、ミニ株で得た利益(値上がり益や配当金)に税金がかからないことです。
手数料だけでなく税金も節約できるので、ミニ株投資をするなら、まずはNISA口座の活用を検討するのが賢明です。
(5) キャンペーンやポイントプログラムを見逃さない
証券会社によっては、期間限定で手数料がキャッシュバックされるキャンペーンを実施していたり、取引に応じてポイントが貯まったり、貯まったポイントをミニ株の購入に利用できたりするプログラムを用意していることがあります。
例えば、auカブコム証券の「プチ株」ではPontaポイントが使えたり、SBI証券の「S株」ではVポイントやPontaポイントが使えたりします。
こうしたお得な情報をこまめにチェックして、上手に活用するのも手数料を抑えるコツの一つです。
手数料を意識することは、単にお金を節約するというだけでなく、投資における「コスト効率」という大切な考え方を学び、より合理的で賢い投資判断を行うための良い訓練になります。



5.2 タイミングより長期視点を重視
「株はいつ買って、いつ売るのが一番儲かるの?」これは、株式投資を始める人が誰しも抱く疑問であり、そして永遠の課題とも言えるものです。
しかし、この「最高のタイミング」を見極めるのは、何十年も市場を見続けているプロの投資家でさえ非常に難しいことです。
だからこそ、特にミニ株(単元未満株)で投資を始める初心者の方には、売買のタイミングを追いかけるよりも、もっと大切な心構えがあります。
(1) 売買タイミングを当てるのは至難の業
株価が一番安い底値で買って、一番高い天井で売る。
これができれば誰も苦労しませんが、現実はそう甘くありません。
初心者が短期的な株価の動きを正確に予測しようとすることは、多くの場合、失敗の原因になりやすいです。
「もう少し待てばもっと上がるかも…」「今売らないと損するかも…」といった感情に振り回されて、結果的に不利な取引をしてしまうことも少なくありません。
デイトレードのような超短期売買や、数日単位の短期投資を専門に行うのでない限り、日々の細かい株価の上がり下がりに一喜一憂する必要はないのです。
1日で見ると株価が激しく動いているように見えても、1週間、1ヶ月といった少し長い期間で見ると、それほど大きな動きではなかった、というケースもよくあります。
(2) 長期投資がもたらすメリット
では、タイミングを追いかける代わりに何を重視すれば良いのでしょうか。
それは「長期的な視点を持つ」ということです。
- 時間の分散効果
- 株を長く保有することで、一時的な株価の大きな変動(例えば、何かのショックで市場全体が急落するなど)の影響を、時間とともに和らげることができます。
- 企業の成長と共に資産も成長
- 本当に良い会社、将来性のある会社を選んで、その株を長く持っていれば、その会社が成長していく過程で株価も上昇し、あなたの資産も増えていく可能性があります。
- 応援している会社と一緒に自分も成長していくようなイメージです。
- 複利の力を最大限に活かす
- 配当金が出る株の場合、その配当金をさらに同じ株の購入に充てる(再投資する)ことで、元本だけでなく利益も新たな利益を生み出す「複利」の効果が期待できます。
- この複利の力は、期間が長ければ長いほど、まるで雪だるまが坂道を転がり落ちるように、加速度的に大きくなっていきます。
実は、ミニ株の取引には、リアルタイム取引ができなかったり、注文方法に制限があったりするといったデメリットがありましたが、これは見方を変えれば、結果的に短期的な売買を難しくし、自然と長期保有を促す側面もあると言えるかもしれません。
(3) ドルコスト平均法でタイミングの悩みを解消
「それでも、いつ買い始めたらいいか分からない…」という方には、やはり「ドルコスト平均法」による定期的な積立投資がおすすめです。
毎月決まった日に、決まった金額だけ機械的に買い付けていくことで、購入タイミングの悩みから解放されます。
株価が高い時も安い時も買い続けることで、平均購入単価をならし、感情に左右されない冷静な投資を続けることができます。
(4) 「何のために投資するのか」を明確に
そして、最も大切なことの一つが、「自分は何のために投資をするのか」「いつまでに、いくらくらいのお金を貯めたいのか」といった、投資の目的や目標額をはっきりとさせておくことです。
目的が定まっていれば、短期的な市場のニュースや株価の動きに、むやみに心を揺さぶられることが少なくなります。
例えば、「20年後の子どもの大学進学資金のため」「30年後の自分の老後の生活資金のため」といった長期的な目標があるならば、目先の株価が多少下がったとしても、「これは長期投資だから大丈夫」と、どっしりと構えて持ち続けることができるでしょう。
投資はマラソンのようなものです。
途中の小さなアップダウンに気を取られず、ゴールを見据えて自分のペースで走り続けることが、成功への近道となるのです。



5.3 情報収集と銘柄選定のポイント
「よし、ミニ株(単元未満株)を始めてみよう!」と思っても、次に悩むのが「一体どの会社の株を買えばいいんだろう?」ということですよね。
世の中にはたくさんの会社があり、その中から自分に合った銘柄を見つけ出すのは、なかなか大変な作業です。
ここでは、情報収集の仕方や、銘柄を選ぶ上でのヒントをいくつかご紹介します。
(1) どんな情報を集めればいいの?
株式投資で成功するためには、情報収集が欠かせません。
では、具体的にどんな情報に目を向ければ良いのでしょうか。
- 経済ニュース全般
- 新聞やテレビ、インターネットのニュースサイトなどで、日本経済や世界経済全体の動き、金融政策の変更、為替の動向などをチェックしましょう。
- 大きな経済の流れは、個々の会社の株価にも影響を与えます。
- 企業の業績情報
- 興味のある会社が見つかったら、その会社の業績(売上や利益がどれくらいか、伸びているのかどうかなど)を調べてみましょう。
- 証券会社のウェブサイトや、会社自身が公開している「決算短信(けっさんたんしん)」や「有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)」といった資料で確認できます。
- 少し難しいかもしれませんが、最初は「売上高」や「営業利益」といった基本的な項目だけでも見てみると良いでしょう。
- 業界の動向
- その会社が属している業界全体の状況も大切です。
- 例えば、IT業界なら新しい技術のトレンド、自動車業界なら電気自動車へのシフトなど、業界全体が伸びているのか、何か大きな変化が起きているのか、といった点に注目しましょう。
- 株価チャート
- 株価の過去の動きをグラフにしたものです。
- これを見ることで、その株が今までどんな値動きをしてきたのか、今の株価は高い水準なのか安い水準なのか、といったことをある程度把握できます。
- チャートの読み方には色々なテクニックがありますが、まずは「上がり傾向なのか、下がり傾向なのか」といった大きな流れを見ることから始めましょう。
- 証券会社が提供する情報
- 口座を開設した証券会社のウェブサイトや取引ツールには、アナリストによるレポートや銘柄分析情報、投資セミナーの動画など、役立つ情報がたくさん提供されていることが多いです。積極的に活用しましょう。
(2) 初心者向けの銘柄選びのヒント
情報収集と並行して、いよいよ銘柄を選んでいきます。
初心者の方がミニ株で銘柄を選ぶ際に、参考になりそうなポイントをいくつか挙げます。
- 身近な会社・好きな会社から選ぶ
- 自分が普段から製品やサービスを利用している会社、商品や考え方に共感できる会社、応援したいと思える会社など、身近なところから探してみるのが一番分かりやすく、長続きしやすい方法です。
- 例えば、よく飲むジュースのメーカー、好きなゲームソフトの会社、よく利用するお店を運営している会社などです。
- 業績が安定している(成長している)会社を選ぶ
- いくら好きな会社でも、業績が悪化し続けているようでは、株価も下がり続けてしまうかもしれません。
- できるだけ、売上や利益が安定して伸びている会社、将来性のある事業に取り組んでいる会社を選びましょう。
- 配当金や株主優待に注目する
- 「4.1 高配当・優待銘柄を少量ずつ買う」でも触れましたが、配当金を安定的にもらえそうな会社や、自分にとって魅力的な株主優待を提供している会社を選ぶのも、投資の楽しみを増やす良い方法です。
- 「値がさ株」に挑戦してみる
- 「1.5 高額銘柄へアクセスしやすい」で説明したように、普段なら高すぎて手が出せないような有名企業や優良企業の株(値がさ株)も、ミニ株なら1株から買えます。
- こうした質の高い企業の株主になることを目指すのも良いでしょう。
- 無理のない範囲で分散投資を心がける
- 一つの銘柄に集中するのではなく、異なる業種や特徴を持つ銘柄をいくつか組み合わせて持つことで、リスクを分散させることを忘れずに。
- 最初は2~3銘柄からでも良いので、少しずつ分散を意識していきましょう。
(3) やってはいけない銘柄選び
逆に、こんな銘柄の選び方は失敗しやすいので注意しましょう。
- よく知らないのに流行りや噂だけで買う
- SNSやインターネットで「この株が儲かるらしい!」といった情報を見かけても、自分でその会社のことをよく調べずに飛びつくのは危険です。
- 根拠のない情報に惑わされないようにしましょう。
- 自分の許容範囲を超えるリスクの高い銘柄に手を出す
- 株価の変動が非常に激しい銘柄や、業績が不安定な銘柄は、大きな利益が期待できる反面、大きな損失を被る可能性もあります。
- 初心者のうちは、まずは安定性を重視した銘柄選びを心がけましょう。
銘柄選びに「絶対の正解」はありません。
大切なのは、自分で情報を集め、自分で考え、自分で納得して投資する銘柄を決めることです。
そして、投資した後は、その会社の動向を継続して見守っていくことが、投資家としての成長につながります。
「購入価格より10%下がったら一度売却を考える」といった自分なりのルール(損切りルール)をあらかじめ決めておくのも、大きな失敗を防ぐための一つの方法です。



6. まとめ:ミニ株のメリット・デメリットを理解して賢く活用しよう
さて、ここまでミニ株(単元未満株)について、そのメリットやデメリット、そして具体的な活用方法や注意点などを詳しく見てきました。
最後に、これまでの内容を簡単におさらいして、ミニ株と上手に付き合っていくためのポイントをまとめてみましょう。
ミニ株の最大の魅力は、なんといっても「少額から株式投資を始められる」という手軽さです。
通常なら数十万円、数百万円といったまとまった資金が必要になる株式投資も、ミニ株なら数千円、場合によっては数百円からでもスタートできます。
これにより、投資初心者の方や、まだ資金が少ない若い方でも、気軽に株式投資の世界に足を踏み入れることができます。
また、少ない資金でも複数の会社の株に投資できるため、「分散投資がしやすい」というのも大きなメリットです。
一つの会社だけに集中投資するよりもリスクを抑えることができます。
さらに、持っている株数に応じて「配当金がもらえる」可能性がありますし、企業によっては「株主優待」の対象になることもあります。
「積立投資」の仕組みを使えば、毎月コツコツと買い増していくことで、購入タイミングの難しさを和らげ、長期的な資産形成を目指すことも可能です。
そして、普段なら高すぎて手が出せないような「高額銘柄(値がさ株)にもアクセスしやすい」という点も、ミニ株ならではの魅力と言えるでしょう。
一方で、ミニ株にはいくつかのデメリットや注意点もありました。
まず、「手数料やスプレッドが割高になりやすい」こと。
取引金額が小さい分、手数料の割合が大きくなり、「手数料負け」してしまう可能性があるので注意が必要です。
NISA口座を活用したり、手数料の安い証券会社を選んだりする工夫が求められます。
次に、「リアルタイム取引や指値注文に制限がある」こと。
思った通りのタイミングや価格で売買できない場合があるため、短期的な売買にはあまり向いていません。
また、「議決権がなく、株主総会に参加できない」のが原則です。
会社の経営に直接関わりたいという方には不向きかもしれません。
そして、「流動性リスクや約定タイミングのリスク」も考慮に入れる必要があります。
いつでも必ず希望通りに売買できるとは限らないのです。
最後に、「大きなリターンは狙いにくい」という点。
投資額が少ない分、利益の絶対額も小さくなるのは自然なことです。
これらのミニ株のメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、「自分はミニ株に向いているのか」「ミニ株でどんな投資をしたいのか」を考えることが、賢く活用するための第一歩です。
ミニ株は、特に以下のような方におすすめです。
- 株式投資をこれから始めてみたい初心者の方
- 少ないお小遣いや余剰資金で、無理なく投資を体験したい方
- いろいろな会社の株に少しずつ分散して投資したい方
- 長期的な視点で、積立などを活用してコツコツと資産を育てたい方
- 憧れの企業の株を、まずは1株からでも持ってみたい方
逆に、短期間で大きな利益を狙いたい方や、株主として積極的に経営に関与したい方には、ミニ株はあまり適していないかもしれません。
ミニ株投資で失敗しないためには、
- 手数料をできるだけ抑える工夫をする(NISA活用、証券会社選びなど)
- 売買のタイミングに一喜一憂せず、長期的な視点を重視する
- 自分なりに情報収集を行い、納得のいく銘柄を選定する
といった点が重要になります。
ミニ株は、株式投資へのハードルを大きく下げてくれる素晴らしいツールです。
この記事で解説したミニ株のメリットとデメリットをしっかりと胸に刻み、無理のない範囲で、楽しみながら投資経験を積んでいってください。
それが、あなたの将来の資産形成にとって、きっと大きなプラスになるはずです。
さあ、あなたもミニ株で、賢い投資家への扉を開いてみませんか。



本記事の注意事項(免責事項)
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を意図したものではありません。本記事に記載されている情報については、正確性、完全性、有用性を確保するために努力しておりますが、その保証は致しかねます。投資判断はご自身の責任で行ってください。本記事の内容を利用して生じたいかなる損害についても、当サイトおよび著者は一切の責任を負いかねます。詳しくは免責事項ページをご確認ください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
【登場人物】



SBI証券 👍おすすめポイント!
SBI証券の「S株」は、売買手数料無料!
スプレッド(取引コスト)なし!
○手数料無料のSBI証券がおすすめ。
○口座開設は無料!
\ SBI証券で投資を始めよう! /

SBI証券 👍おすすめポイント!
SBI証券の「S株」は、売買手数料が無料!
スプレッド(取引コスト)なし!
○手数料無料のSBI証券がおすすめ。
○口座開設は無料!
\ SBI証券で投資を始めよう! /

【関連記事】